#01. Side 楓
世界樹に異変が起きたのは、アキラがガウスに来る約2年前のことじゃ。
世界樹から漏れ出す魔素の量が急激に増加したのじゃ。その異変は、ミコト様も感じ取られておった。
「楓よ。世界樹の異変を感知した。そちらはどうなっておる?」
威厳のある態度の須佐之男命様が顕現なされた。
「ミコト様、世界樹から漏れ出す魔素の量が急激に増加しておる。妾が吸収できるのも保って2年じゃろう。それを過ぎれば妾はまた暴走し、またミコト様に迷惑をかけることになってしまう。」
「分かっておる。我もまた貴様と戦うのは避けたい。多少準備が必要だが、我が対策を取ろう。」
妾は、世界樹から漏れ出す魔素を喰らい魔素濃度を制御しておる。魔素濃度を制御することで、神の頂の内側に発生する魔物を弱く保っておる。ここは、この世界の中心に位置しており、凶悪な魔物が生まれれば、如何に神の頂という山脈に囲まれていようとも、魔物は難なくその外側へ出てしまう。そうなっては、世界の混乱は避けられぬ。そのため、ミコト様は、妾に世界樹に留まり魔素を制御するという役割をくださったのじゃ。
世界樹から食う魔素の量は妾が消費するよりも多い。長年食うことで少しづつ妾の体に溜まっていく。
それでも、急にどうにかなってしまうほどではない。エルフたちの成人の儀式で、妾の魔素分け与え、ハイエルフに進化させる。そうすると妾の魔素も減る。そうやって処理してきたのじゃ。
最近は、村の過疎化が進み、成人の儀式ができないのも相まって、魔素の蓄積が早まってきていたのは感じていたのじゃが、そこにきて世界樹の魔素の量が急増が重なってしもうた。
魔素を食うのをやめれば、妾の暴走は避けられるが、世界樹から溢れる魔素で強力な魔物が跋扈する世界となってしまうのじゃ。妾はミコト様を信じ、暴走ギリギリまで魔素を食うことにしたのじゃ。
ミコト様の顕現から1年
今までとは異なり少年のような姿のミコト様が顕現された。
「やぁ楓、体の方は大丈夫かい?」
「み、ミコト様。なんだか雰囲気が大きく変わったようじゃが」
「ガウスに送る勇者をようやく見つけたんだよ。以前の容姿だと威圧感がすごすぎて、彼が萎縮してしまいそうだからね。彼が協力してくれるように色々と工夫しているところさ。」
何やら、その勇者に選ばれたものは、写真というものに興味を持っているという。そして、その写真とやらをスキル化する才能が妾の現状を救うらしい。よくわからぬが、神であるミコト様がいうのであれば間違いなかろう。
「神様というのも大変なものじゃな。」
「何を言ってるのさ、君にも協力してもらうよ。彼が君の魔素を吸収しても耐えられるように修行してもらわないといけないからね。修行に使う道具はこれとこれ。あとは、彼は女性に免疫がないからね。君の色仕掛けで彼のやる気を出させるんだ。僕は彼をこちらの世界に呼ぶ準備をするからよろしくね。」
そう言って、ミコト様は一方的に亀の甲羅と短剣を押し付けて消えた。
しかし、色仕掛けとはどういうことじゃろうか。妾は狐であり人ではない故によくわからぬの。
村のフクを呼び教えを乞うたが、乳を見せるだの、寝所へ誘うだのと言われてもさっぱりじゃった。
人について学び、人の姿の分体を作れるようになって1年が経とうとしておる。
妾の世界樹の魔素を吸収するのも限界近い。
色々と準備をしてきたが、勇者が来なければ全部無駄になってしまう。
「ギリギリになってすまない。ようやく、彼の準備が整ったよ。くれぐれもいきなり魔素を吸わせないようにね。エルフの成人の儀式を施して、渡した短剣を1000回は振り回せるくらいの魔素制御能力をつけさせないと、彼は死んでしまうから。僕の加護は強めにつけておいたから、修行で死ぬことはないと思うけど」
妾の魔素吸収の限界もあと10日もつかどうかというところで、やっと望んでおった者がこの世界にきた。
この短い期間で魔素の制御を身につけられるだろうか?
ガウスにアキラがやってきた。
会ってみても普通の人間の子供じゃった。こやつが妾を救えるとは思えぬ。
じゃがミコト様が選んだ勇者だ。鍛えてみるとしよう。
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アキラは、ミコト様よりガウスの文化を向上させるように頼まれていた。
なので、ヴィリジアンヴィレッジの過疎化を止める依頼をする。さらに、妾の魔素を吸収すべく修行を始める。
ミコト様に言われた通り、乳を強調した巫女服で修行のご褒美を紛らわしく伝える。
案外、うまくいったのじゃ。
アキラは妾の乳に興味があるようじゃ。この体はあくまで分体なのじゃがの。
面白そうなので、からかってみることにした。
これが、本当に面白かったのじゃ。今までの長い生の中でこれほど楽しいことはなかった。
ムキになって修行に打ち込む姿も可愛らしい。
村の過疎化についても次々と案を出してくる。
勇者というのは馬鹿にできぬものじゃ。
撮影というスキルも面白かった。星空の撮影とやらを見ておったが、撮影に集中しておる様子は見ていて飽きなかった。思わず声をかけたら、鼻血を噴いて気絶したのは驚いたがの。
アキラが村のために料理を作る材料を取りに行く際にアキラがグレーグリズリーと出会ったのは暁光であった。
グレーグリズリーとの死闘でアキラの魔力制御力が大幅に向上したのじゃ。
それで修行を全てクリアしたのは意外であったが、これで魔力の経路を広げることができた。
さらに、短い時間とはいえ、猶予ができた。
今晩は褒美じゃ、神獣たる妾をモフモフする権利をくれてやろう。
ふふ、楽しみがまだ続くということじゃ、まだまだこやつを鍛えねばならぬ。
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