第20話

 でも、何か得策でもあるというのだろうか? あまり考えたことがないし、アイディアを出せと言われても何一つ出やしないけれど、これぐらいは致し方ないと思って良いのだろうか……。


「わ、わたしは何も知らない!」


 漸く少女が口を開いた。

 翼は仮面のように笑みを崩さないまま、話を続ける。


「別にね、きみが情報を知っているか知っていないかなんて、如何だって良いんだよ」

「……えっ?」


 少女はいきなりそう言われて、目を丸くしてしまった。

 そりゃあそうだろう、と言いたいところではあるが、普通に考えた疑問として、何故自分を捕まえておいて情報の有無を考慮しないのか——という話だろう。


「情報の有無を気にしない、なんて……。どういうこと? あなた、自分で何を言っているのか、分かっているの?」


 挑発する。

 然れど翼は動じない。


「……挑発するのは良いけれど、相手が間違ったね。きみ、ぼくが七つ星であることを理解した上で、そう言っているのかな?」

「無論。……何を言い出すかと思いきや、わたしの雇い主はあんたと同じ七つ星よ? 威張り散らすか威光を使ってなんとか情報を聞き出そうとでもしたんでしょうけれど、そんなこと出来るはずが——」

「きみ、致命的な情報を流出させたことに気付いているかな?」


 深い溜息を吐いて、翼は言った。

 えっ? と少女は聞き返す。そんな素振りをしているということは、本当に自分が何をしてしまったのか分かっていないのだろう。


「……我々は確定的な情報を何一つ持ち合わせていない。持っているのは断定的な情報だけだ。情報源も不確かなものばかりで、我々の敵が誰であるかさえも分かっていなかった。——今までは、ね」

「?」

「あなた、言ったでしょう?」


 未だ気が付かない様子の少女に、ついに致命的な一撃を加える。


「自分で言ってしまったんだよ? 自らの雇い主は七つ星である、と。七つ星が部下を携え、一般人を殺害しようとした。これはとんでもない重罪だね。……まあ、恐らくは『機構』も知っているとは思うけれどね、この事実に関しては」

「知っている? 都市管理機構が、か? そんなこと有り得るのかよ……」

「光の石は戦争利用に使わせない、と。開発者はそんなことを言っていたっけ? 機構はそれを忠実に守っているはずだ。表向きは、ね」

「表向き、って……」

「一般的に、戦争を法律で禁止している国が、この世界にどれぐらい存在していると思う? そして、法律で禁止されていないことは何を意味するかさえも、理解出来ているかな?」

「戦争が出来ない国なんて、そんなの限られている。大抵は、周囲の大国にいつ蹂躙されてもおかしくない国だらけだっていうのに……」

「光の石の技術は全世界に共有した。だから、設備さえ整えればどんな国でもどんな組織でも開発出来る。だけれど……、それをどう使っても良いという話であるのは間違いない。人間の行動力やひらめきを、コントロールすることなど出来ないのだから」

「本当ならば、『機構』だって使いたいだろうね。この石がどれだけのエネルギーを生み出すかなんて分からないって言われているのだし。光の石そのものが暴走しないように何重ものロックをかけているとも言われているぐらいだしね」

「光の石は無限にエネルギーを生み出せる、って?」


 翼は俺の問いに首を傾げる。


「アカデミアのカリキュラムに入っているはずだけれど、光の石のメカニズムとその働き方。可変抵抗システムによって反発係数を自由にコントロール出来るから、エネルギーを無限に生み出すことが出来るって話。そして、そのエネルギーを自由自在に取り出すことが出来たこと、それが画期的だったんだよ」

「……そうだったっけ?」


 カリキュラムは面倒くさいことばっかりで、覚えていることも少ないんだよなあ。

 もう少し教科書も分かりやすくしてほしいのに。例えばゲームのエッセンスを組み込むだけでも全然違うような気がする。経験値とかレベルとか、はたまたログインボーナスを導入してみてはどうだろうか? 若干、カリキュラムを受けるモチベーションが上がるんじゃないか?


「別にモチベを保ちたいがためにゲーミフィケーションを導入すれば良い——ってもんでもないからねえ。ま、カリキュラムがつまらないことに関しては否定しないし、きっとあれはわざとつまらなく作っているのだと思うけれど?面白いゲームを作ってユーザーが実生活度外視でのめり込んで行ったら、全く意味をなさないんだもの」

「……そりゃあ、そうか」


 脱線し続けている議論も、そろそろ終止符を打たなければならない。

 そう思いながら、おれはさらに訊ねた。


「七つ星が雇い主として……何故七つ星は彼女を狙った? 彼女は魔法を全く使えない。魔法士ですらないし、最重要機密を抱えているようにも全く見えない。雇い主は、何か見間違えた——或いは勘違いしたんじゃあないか?」

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