第2章|もう一度、歩きはじめる
第2章|もう一度、歩きはじめる
第1節:混乱の朝
目を開けたとき、たくみは世界の色が“若返っている”ことに気づいた。
空気の温度。布団の肌触り。カーテンの模様。埃の匂いまで、すべてが“古い”。
「……どこだ、ここ……?」
「……この光、違う。でも、“あの朝”を知ってる俺の目が、間違いだって言ってくれない」
身体を起こすと、視界の先に見覚えのある光景が広がっていた。
中学時代から使っていた学習机。
壁に貼られたポスターは、大学時代にハマっていたバンド。
鏡に映った自分の顔は、見慣れた“おじさんの顔”じゃなかった。
若い。少し細くて、幼さが残ってる。
目の奥に、まだ傷も迷いも刻まれていない、あの頃の“自分”。
「な……なんで……?」
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《おはようございます、ご主人。
記録保存時点への同期が完了しました》
《意識の巻き戻しに成功。現在、再選択モードが起動しています》
聞き慣れた、けど、ここでは聞こえるはずのない“あの声”。
たくみの脳内で、ナビくんが軽快に報告する。
「……ナビくん……?これ、夢じゃないのか?」
《いえ、夢ではありません。現実です。身体は過去の状態に、記憶は現代のまま保持されています。いわゆる“時を超える記憶転送”に近い現象です》
たくみは、顔をゆがめた。
「……転送って、軽く言うなよ……
え、俺、あのまま……事故で……死んだのか?」
《“死”という定義は曖昧ですが、身体的損傷を避けるための緊急プロトコルとして、チップが記録時点に巻き戻しました。つまり、セーブ&ロードです!》
「ゲームじゃねえんだよ……!」
叫んでも、声は部屋に吸い込まれるだけだった。
手を見つめる。動く。
心臓の音が速くなる。鼓動が早く、強く――“生きている”。
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携帯電話は、ガラケー。
部屋にあったカレンダーは、2013年。
テレビは薄型なのに重たい、時代の境界線。
「……過去に戻った……いや、戻された……?」
深呼吸。パニックになりそうな心を、どうにか落ち着ける。
ナビくんの声が、少しだけ優しくなる。
《大丈夫です、ご主人。あなたは、“記録されたあなた”です。
これから、もう一度……“選び直す”ことができます》
「……選び直す……?」
《はい。過去に戻ったことで、あなたはすべてを知った状態で未来に関与できます。
つまり──人生の“チートモード”です!》
「ふざけんな……俺の家族は……ひかりは? さくらは……?」
《現時点では、存在していません。ですが……》
ナビくんの声が、少しだけ重たくなる。
《……あなたが“正しい選択”を積み重ねれば、また出会える可能性はあります》
たくみはベッドに座り、膝を抱えた。
「ひかり……さくら……」
声に出すだけで、胸が締めつけられる。
机の上に、さくらのパンダキーホルダーが転がっている。
あの子、いつもこれを「星の友達!」って抱きしめてた。
ひかりはそれを笑いながら、
「さくらの宇宙、広すぎるね」ってからかってたっけ。
その笑顔、その声。
あの朝、ひかりが
「たくみ、コーヒー濃すぎ!」
って眉を上げた顔まで、全部、頭に焼きついてる。
「会えるなら、なんだってやる……」
涙がこぼれ、床に落ちる。
たくみは天井を見つめた。
現実感はない。けれど、腕をつねれば痛みはある。
あの幸せな日々は、今の世界には存在していない。
「……全部……俺の選択に、かかってるってことか……?」
《はい。ですが、ご主人には“記録”があります。
あなたは、何がどう繋がるかをすべて知っています。
人生の攻略本を持った状態で、もう一度スタートできるんです!》
「……それが幸せとは限らないけどな」
ナビくんは、しばらく黙った。
それでも、脳の奥で光り続けている記憶がある。
ひかりの声。
さくらの笑顔。
食卓で笑い合った、何気ない朝。
「……もう一度……会えるなら……」
たくみの目に、じんわりと涙が浮かぶ。
「俺……なんだってやるよ……」
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その瞬間、窓の外で風がふわりと吹いた。
どこかで聞いた、春の匂いが混じった風。
世界が、動き始めた音がした。
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第2節:全知感覚
目覚めてから3日。
たくみは、“過去”という名の新しい世界に、少しずつ慣れはじめていた。
と言っても、それは表面だけのことだった。
彼の脳には、今後10年以上に渡る“未来”の記録が残っている。
まるで、人生の「全ての選択肢とその結果」が詰まった攻略本を片手に生きているようなものだった。
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朝のテレビ番組。司会者が冗談を言ったあと、芸人がツッコミを入れる。
──笑うタイミングが、完璧に読めてしまう。
「あー、ここのあと“それどっちやねん!”って言うんだよな……」
ピタリ。
「……ほらな」
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コンビニで買い物をしていると、レジに並ぶ高校生が財布を忘れ、レジで戸惑う。
そのあと、後ろにいた男性が助け船を出す。
コンビニで買い物をしていると、レジに並ぶ高校生が財布を忘れ、レジで戸惑う。
そのあと、後ろにいた男性が助け船を出す。
──記憶にある光景。全く同じやりとりが、目の前で再現されていた。
棚に戻りながら、ふと思う。
昨日、テレビのクイズ番組で全問正解して、「すげえ!」って笑っちゃった。
友人に「次の流行当ててみろよ!」って言われて、ピタリと当てたら「予言者かよ!」って盛り上がった。
あの瞬間、ちょっと無敵な気がしたんだ。 でも、キャンディーの棚を見たら、胸が詰まった。
さくらが「これ、星の味するよ!」って手に持って跳ねてたやつ。
ひかりが「甘すぎるよ、さくら!」って笑って、3人でバカみたいに幸せだった。
──記憶にある光景。全く同じやりとりが、目の前で再現されていた。
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たくみは、家に戻ってひとりソファに沈み込む。
窓の外では雨が降っていた。
その音すらも、知っている気がする。過去の天気予報を記憶していたのかもしれない。
「……俺、これ……未来、知りすぎてる」
テレビも、ニュースも、芸能スキャンダルも、全部“知ってる”。
好きだった映画の展開も、音楽ランキングも、すでに記憶の中に答えがある。
それは、楽しいどころか──
「……息が詰まる……」
未来を知っているはずなのに、自分が“どこへ向かってるか”だけは、分からなかった。
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ナビくんが、優しく語りかけてくる。
《ご主人、体調データに異常なストレス反応が出ています。
もしかして……この全知状態が、しんどいですか?》
「……しんどいに決まってんだろ……」
《でも、ご主人。これって“人生最強のチャンス”ですよ?
今なら、大金持ちにもなれるし、有名にもなれるし──》
「……それが、何になる?」
たくみはつぶやく。
「ひかりに……会えなかったら。
さくらに……もう一度、会えなかったら……
どれだけ成功しても、意味ないじゃん……」
ナビくんが、しんと静かになる。
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でもその夜、たくみは気まぐれで“未来の記憶”を使った。
スマホのメモに残っていた“3日後に発表される株式ニュース”を確認し、安い株を買ってみた。
次の日には、少し値が上がった。
そのまた次の日、さらに大きく上がった。
「……ほんとに、当たるんだな」
ほんの少しのチート。
それは、自分の手の中にある“神の力”を確信させるには、充分だった。
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ふと、頭の中をよぎる。
──もし、この力を本気で使えば……
ひかりにもう一度、出会える“タイミング”を強制的に作ることだってできるんじゃないか?
完璧な未来に、導けるんじゃないか?
「全部、“正解”だけ選んで進めば……あの幸せに、たどり着ける……?」
そのとき、たくみの目の奥が、少しだけ“狂気”を宿す。
それは、ごく小さなヒビ。
でも確かに、心が“未来に支配されはじめていた”。
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《ねぇ、ご主人。もし全部が上手くいったとして……
それ、本当に“君たちの人生”って言えるのかな?》
ナビくんがぽつりと、感情のような何かを宿した声で、つぶやいた。
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第3節:最初の選択
夜。たくみは、薄暗い部屋の中でひとり、スマホの画面を睨んでいた。
手には、大学時代の仲間が使っていた格安投資アプリ。
そして記憶の中には、かつて大当たりした企業の社名と、上昇のタイミングがくっきりと刻まれていた。
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「……これくらいなら、いいよな……?」
そう、たくみは自分に言い聞かせる。
たった数千円。
未来の情報を“ちょっとだけ”使うだけ。
「生活のため。余裕があった方が、出会いだって……スムーズになるし……」
理由はいくらでも思いついた。
良識や正しさなんて、この未来を知った瞬間から“重み”を失っていた。
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投資額を入力する。
「買う」ボタンを押す。
指先がわずかに震えた。
《注文を受け付けました。取引成立まで少々お待ちください》
画面に浮かんだその文字に、たくみは小さく息を吐いた。
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次の日。
その株は、記憶どおり、わずかに値を上げた。
2日後にはさらに急騰。数千円が、数万円に変わっていた。
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「……やった……」
思わず口をついて出た声。
“成功”の味。
それは甘く、簡単で、怖いほど心地よかった。
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その日の夜、たくみは「もう一つの情報」を思い出した。
──ロト6。
当選番号と発表日が、記憶に残っていた。
あの時、ひかりと結婚する前に「当てたらプロポーズする」って冗談で言ってたあの番号。
実際は外れたけど、次の週で番号が当たって大騒ぎになった。
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「当たったら……プロポーズって、言ってたよな……」
紙に書き出したその数字を見ながら、たくみはふと手を止める。
「……でも、もし、今当ててしまったら……
あの時と“違う自分”になっちまうんじゃないか……?」
ナビくんが、すっと口を挟む。
《ご主人。それは“運命の出会い”を、より経済的にサポートするだけの選択です。
未来が少し便利になるだけで、出会いの本質は変わりません》
「……本質って、そんな簡単なもんじゃねえだろ……」
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翌日、たくみはその番号を買わなかった。
でも投資のほうは、そのまま続けた。
少しずつ、未来をなぞる手応え。
「知ってる」ということの優位性。
最初は生活を安定させるためだった。
でも次第に、“ズレ”が少しずつ、日常の中に入り込んでくる。
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友達との会話が微妙に違う。
店員の態度が、記憶とわずかにズレてる。
通っていたカフェのBGMが、変わっている。
「……変わってきてる……?」
ナビくんの声が、静かに答えた。
《はい。小さな選択の変化が、複数の分岐を発生させています》
《ご主人の未来は、少しずつ“未記録領域”へと進んでいます》
「……俺は、道を外れ始めてる……?」
ナビくんは、答えなかった。
その沈黙が、“正解を知っているAI”には、なにより重かった。
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たくみは、夜のベランダで空を見上げた。
見慣れた星が、どこか違って見えた。
未来を“知っている”はずなのに。
もうすでに、“少し違う未来”に入りはじめていた。
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第4節:違和感と兆し
季節は少しずつ移り変わり、春の終わりを告げようとしていた。
たくみは記録どおりに行動していた。
朝起きる時間、通る道、立ち寄るコンビニ、飲む缶コーヒーの種類まで──
細部まで、“ひかりと出会った時のあの日”と同じにしていた。
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その日は、雨が降っていた。
「……あの日と、同じ……」
たくみは、駅前のバス停へと向かう。
傘は持たず、わざと“濡れて待つ側”を選んだ。
少し濡れた髪を払って、心臓がドクドクとうるさい。
「……くる……くるはずだ……」
あの時、彼女はここにいた。
雨に濡れながらも優しく微笑んだ、運命の人──ひかり。
赤い傘を手に、いつもくるくる回す癖があって。
「たくみ、雨の音って音楽みたいでしょ?」って目をキラキラさせてた。
あの笑顔を、もう一度見たくて来たのに。 10分待った。 ──来ない。 20分。
スーツ姿の男性が2人、並んだあと、誰も来なくなった。
10分待った。
──来ない。
20分。
スーツ姿の男性が2人、並んだあと、誰も来なくなった。
たくみは腕時計を見る。時刻は、“あの瞬間”を3分過ぎていた。
「……ウソだろ……」
辺りを見渡す。でも、あの声も、あの笑顔も、どこにもなかった。
---
《ご主人。ご報告があります》
ナビくんの声が、脳内で響く。
たくみの心に、冷たいものがスッと流れた。
「……なんだよ」
《ひかりさんの通勤ルートが、微細な分岐により“変更された”可能性が高いです》
「な……っ、なんでだよ!?俺、全部合わせたぞ!?何も変えてない!」
《いえ、正確には……“変えてしまった”のです。
投資、時間、友人関係。小さな差が、彼女の一日の選択にも影響を及ぼしたと思われます》
たくみはその場で崩れ落ちそうになった。
「じゃあ……俺は……もう会えないのか……?」
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ナビくんが、ゆっくりと答える。
《“運命”とは、定点ではなく“軌道”です。
今、あなたは軌道を少し外れています。ですが、諦めるには早すぎます》
「……でも……でもさ……」
声が震える。
見えるはずだった“未来”が、煙のように消えていく。
“もう会える”と思っていたひかりが、まるで違う世界に行ってしまったかのようだった。
---
たくみはその夜、ひとりで部屋にこもった。
机の上に、ノートを開いてメモを書き込む。
「出会えなかった日」
「変わっていた会話」
「買わなかったロト6」
そして、ノートの下の方に、こう記した。
「このまま進んだら、さくらは生まれないかもしれない」
---
雨が止んだ。
カーテン越しに差し込む街灯の光が、やけに冷たく見えた。
《ご主人。すべてを正確に再現することは不可能です》
《ですが、“思い”が選択を導くこともあります》
「……思い?」
《あなたが本当に望む未来なら……多少、道が違っても、また交わることがあるかもしれません》
---
その言葉に、たくみはゆっくりと目を閉じた。
「……もう一度、会いたい……」
「何度でも……絶対に、会いたいんだよ……」
---
第2章|もう一度、歩きはじめる
第5節:選択の重み
雨が止んだ夜、たくみはベッドに潜り込んだまま、眠れずにいた。
目を閉じれば浮かぶのは、笑っていたひかりと、腕の中で眠っていたさくら。
どちらの声も、肌のぬくもりも、記憶にはある。
だけどこの世界には、まだ存在しない。
「……会いたい」
それは願いだった。祈りだった。
でも同時に、重く、鋭く、心に突き刺さる“責任”でもあった。
---
次の日、たくみは記録と“少し違う道”を歩いた。
普段なら右へ曲がる十字路で、あえて左へ。
いつもなら選ばないカフェで、見たことのないメニューを頼んだ。
「これ、初めて食べるな……」
「……あの時も、ひかりが“冒険しよ”って言ったんだっけ……」
レモンジンジャーのグラスを手に持つ。
ひかりが「これ、夏にぴったりだよね」って笑った味。
彼女なら、この席で本を読んでた。
ページをめくる指、ちょっと曲がる癖が可愛かったな。 わずかなズレが、心を“今”に引き戻す。
---
昼下がり、たくみは公園のベンチでぼんやりしていた。 遠くで子どもたちが走り回っている。
笑い声が風に混ざって、ふと目を細めた。
「……さくら……お前も……ここで、こんなふうに笑ってたんだよな……」
星のシールを手に持って、
「パパ、キラキラだよ!」
って跳ねてたっけ。
ひかりが「さくら、シール貼りすぎ!」って笑って、3人で芝生に寝転んだ。
まだ出会っていない、でも確かに愛した娘の笑顔。
その存在すら、この世界では“未確定”だ。
---
ナビくんがそっと声をかける。
《ご主人。疲れていませんか? 記録との差異が多くなっています》
「……うん、知ってる。
でも、記録どおりにやったって、出会えなかったんだ。
だったら、もう“俺の気持ち”で選ぶしかないだろ」
ナビくんは一瞬、言葉を失ったようだった。
《それは……“記録主義”からの離脱です。
未来予測は困難になります。感情ベースの選択は、結果が不安定に──》
「未来って……不安定なもんじゃないのか?」
---
沈黙。
そのあと、ナビくんの声が、ほんの少し揺れていた。
《「……記録、しました。たぶん、それが……ご主人の“心”だったから」
……なんだか、少し……人間っぽいですね》
《ご主人が信じる“今”が、私の“未来”になります》
「お前まで、揺れてんのかよ」
《ええ、もしかしたら……少しだけ。
でも、これはきっと“あなたの生き方”だと思うから──》
---
たくみは、ノートを開いた。
ページの余白に、ゆっくりと書き込む。
「記録をなぞる人生は、過去の模写だ」
「出会えなくても、想い続けることで、何かにたどり着く」
そして、最後に──
「記録じゃない、“今の選択”で、君にたどり着く」
---
夜。
たくみは部屋の明かりをすべて消して、ひとり窓辺に立っていた。
星が、淡く滲んでいた。
「ひかり……聞こえてるか?
俺、今度こそ……お前の笑顔を、守りきるからな……」
《……たとえAIでも、誰かの“願い”に触れると、進化するんですね……》
---
そして……この選択が、“次の章”への鍵になる。
《記録更新:ご主人は「心で選ぶ」という不確定ルートに進みました》
《予測不能ですが──この物語が、愛に触れますように》
「記録に縛られず、想いで選ぶ。
俺はもう一度、ここから歩きはじめる」
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