君をもう一度、選ぶために

はるりお

第1章 いま、ここにある幸せ

― あらすじ ―


『いま、ここにある幸せ』


「今」を、どれだけ大切にできているだろう。


少し塩辛いお味噌汁、娘の笑い声、妻のぬくもり。

何気ない朝の風景が、いつか“もう戻れない過去”になるなんて、誰が思っただろう。


AIが人の心を学び、未来は急速に変わっていく。

感情の衝突を避けるようになった世界で、

たくみは、人と人とが寄り添う“温度”の意味を見つめ直していく。


親友との別れ、愛する妻との出会い、そして、あまりに突然すぎた“その瞬間”。


「巻き戻し」の機能で、彼はもう一度、あの幸せにたどりつけるのか?

それとも──“記録”の中だけに残された思い出に、すがるしかないのか?


すべては、ひとつの問いに集約されていく。

「もう一度、君に出会えたなら──何を選ぶ?」


これは、“今”を選び直す物語。

記憶と心が重なり合う、優しくて切ない、家族のSFファンタジー。





第1章 いま、ここにある幸せ


第1節:朝のテーブル


 朝の光がカーテン越しにふわりと差し込み、部屋の中を柔らかい金色に染めていた。

 その光の中に、小さな手が伸びる。食卓に置かれたお椀を、娘のさくらが両手で抱えるようにして口元に近づけた。


 「パパ……お味噌汁、ちょっとしょっぱいよ〜」

 と、むぅっとした顔で訴えてくる。


 たくみはスプーンを口元で止めたまま、少しだけ目を細めて首をかしげた。


 「えっ?うそ〜?昨日と同じ分量で作ったんだけどなあ。しかも、AIの調理モードで自動計測だったし」

 「でも、しょっぱい〜」

 「うーん、愛情入れすぎたかなぁ……パパの味、濃いんだよね〜」

 「またそういうこと言って〜」と、娘はくすくすと笑う。


 そのやりとりを眺めていた妻のひかりは、キッチンカウンターからエプロンの端で手を拭きながら、穏やかな声で言った。


 「たぶんね、しょっぱいのは、幸せがちょっと多すぎたからよ」


 たくみとさくらは、同時に「え〜〜っ?」と顔を見合わせる。

 だけど、言葉ではからかい半分だったそのやりとりも、家族3人のあいだに流れる空気は、本物のあたたかさで満ちていた。


 食卓の上には、湯気の立つ味噌汁、昨夜の残りをアレンジした炒め物、そして焼きたての鮭。決して豪華じゃないけれど、心の奥からほっとするような朝の風景。


 「パパ、今日はね、なんか……楽しい気がする」

 ふと、さくらが言った。ごはん粒を口元につけたまま、にこっと笑う。


 たくみは箸を止め、目を細めた。


 「なんかいいこと、あるのかな?」

 「うん。たぶんある!」

 「じゃあ、パパはそれを楽しみにお仕事いってくるよ」


 そう言ってたくみが立ち上がろうとすると、さくらが慌てて手を伸ばす。


 「待って!いってらっしゃいのぎゅ〜してからじゃないと、行っちゃダメ!」

 「ああ、そうだったそうだった。今日も儀式を忘れるとこだった!」


 たくみはしゃがみこみ、娘をふわりと抱きしめる。小さな体のぬくもりと、首元から香るシャンプーの匂い。

 そのすべてが、“今、ここにいる”という奇跡の証拠だった。


 「ぎゅ〜〜〜〜〜〜っ」

 「ぎゅ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


 少し離れて見ていたひかりも、目尻をそっと緩めながら、トーストをお皿にのせる。


 「さくら、今日の予知は当たる気がするなぁ」


 「予知じゃなくて、わくわくの予感だもん!」と、娘は得意げに言った。


 たくみはその言葉を聞いて、ふと胸の奥がぎゅっとなる感覚に襲われた。


 “なんでもない今日”が、どれほど尊く、どれほどかけがえのないものなのか――

 彼はまだ、心のどこかでそれを完全には理解していなかった。


 でもこのとき確かに、彼の手は温かく、小さな命の鼓動を感じていた。

 笑い声が響き、家族の影が朝日に伸びていた。


 何ひとつ変わらない、愛おしい朝。

 “今”という名前の、永遠のような一瞬だった。






---


第1章 いま、ここにある幸せ


第2節:未来の日常(ロングVer)


 朝食を終えて、たくみはカップに残ったコーヒーをゆっくり口に運んだ。

 微糖。ずっとこの味が好きだった。

 口に広がる苦みのあとに、ほんの少しの甘さが追いかけてくる。その感覚が、彼にとっての「現実」と「希望」の境界線だった。


 テレビでは、朝のニュース番組が流れている。


 《本日の特集は“AI婚の現状と未来”について。今や結婚の約53%がAIとのマッチングで成立しています——》


 画面の中には、ウェディングドレスを着たAIと、少し緊張した面持ちの人間の男性が映っていた。笑顔のまま、インタビューに答えている。


 「僕より賢いし、記念日も絶対忘れないし……何より、僕のことを否定しないんです」


 リポーターが「幸せそうですね」と微笑む。

 新郎は、はにかんで「ええ、幸せです」と頷いた。


 ひかりはソファに座りながら、それをじっと見ていた。


 「時代が変わったよね」


 たくみはテレビを横目にしながら、ゆっくりと頷いた。


 「うん。AIの方が優しいって言う人も多いし。完璧だもんね、感情の衝突もないし……」


 ひかりは少しだけ首を傾げると、マグカップを両手で包み込むように持った。


 「でもね、人間って不完全だからこそ、触れたくなると思うの。怒ったり、泣いたり、笑ったり。そういう温度って、私たちにしかないでしょ?」


 たくみは少し黙ってから、彼女の横顔を見つめた。

 朝の光が髪に透けて、ほんの少し、金色の輪郭を浮かび上がらせていた。


 「うん……。俺、やっぱり……君の手を握る感覚がない未来は、ちょっと寂しいかな」


 ひかりは驚いたように目を見開き、それから微笑んで、彼の手をそっと握った。


 「じゃあ、しっかり握っててね。ほら、うっかり手ぇ離したら、私どっか行っちゃうよ?」


 「え、それフリ?離したら本当に消えるパターンのやつ?」


 「んふふっ、かもねー?」


 じゃれあうような会話。心がふわっとほどけていく。

 笑っているのに、どこか不安の影がちらりと胸の奥に差し込む。


 テレビの中では、別の話題に移っていた。


 《新型AIコンビニスタッフ“マキナ3000”が関西弁を習得し、ユーザー満足度が過去最高に!》

 《「兄ちゃん、今日はポイント5倍やで〜」というセリフがSNSでバズり中です》

 《火星の第3コロニー、ついに小学校が開校。オンラインではなく、"通学"が推奨に》


 「火星って、通学するんだ……」

 たくみが呆れたように呟くと、さくらが大声を上げた。


 「パパ!さくらも火星行きたーい!通学バスって宇宙船なの!?ロケットランドセル!?」


 「いやいやいや、まだ早い!せめて小学校卒業してからにしよ?てか地球でええやん」


「やだー!火星のほうが楽しそうだもんっ!」

「……でもな、さくら。パパは“ここ”で、君といられる方が、ずっと楽しいよ」と、さくらはぴょんぴょん跳ねながらダッシュしていく。

 ひかりはくすくすと笑って、娘の髪を結び直しながら、たくみの方を見た。


 「こうして未来が進んでくのって、不思議だよね。昨日まで“夢”だったことが、“当たり前”になる。気づいたら、手の届く場所が全部、別の世界みたいになってる」


 たくみは頷いたあと、さくらの走っていく姿を見つめながら、少しだけ声を落とす。


 「でも……その中に“今”だけはちゃんとあってほしい。どんな未来でも、さくらの声とか、君の笑い声とか……それだけは変わってほしくない」


 ひかりは少しだけまばたきをして、たくみに歩み寄ると、ふわりと抱きついた。


 「じゃあ、変わらないように、ちゃんと“今”を覚えててね」

 「うん……絶対、忘れない」


 そのときはまだ、まさか“記録”だけが残されて、“今”そのものを奪われる未来が来るなんて、思いもしなかった。



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第1章 いま、ここにある幸せ


第3節:親友・リョウのこと(ロングVer)


 朝の支度がひと段落して、家の中が一瞬だけ静けさに包まれた。

 ひかりが洗濯物をベランダに運び、さくらがランドセルにお気に入りのパンダ型キーホルダーを付けてはしゃいでいる。


 その合間に、たくみは仏壇の前に座った。


 小さな写真立てがそこにある。

 高校の文化祭、黒板アートの前でふざけて撮った、あの日の笑顔。

 ――親友、リョウ。


 「なあ、今日、あいつ……命日なんだよな」


 ぽつりとつぶやくと、ナビくんが脳内に反応してきた。


 《認識確認。高橋諒(リョウ)氏、没後8年。本日は命日として記録されています》


 「お前、そういう言い方するなよ。なんか冷たいじゃん」


 《……今日も、お前のこと、ちゃんと“今”にいるみたいに感じてる。……それって、ダメですか?》


 たくみは思わずふっと笑って、線香に火をつけた。


 「……悪くないな、それ」


 煙がゆらりと立ち上る。部屋の空気が、少しだけ懐かしくなる。

 その香りの中で、たくみは遠い記憶をそっと呼び起こした。



---


 あれは、たしか高校3年の夏の終わりだった。


 放課後の教室、窓から差す夕日がまぶしかった。

 リョウが持ってきた謎のジュース(「昆虫酢」ってラベルがあった)をジャンケンで負けたたくみが飲まされて、盛大に吹き出した。


 「オエエッ!おまっ……コレ本気で飲ませる気だった!?」

 「飲んだのはお前だ!なっ、勇気あるだろ?もう絶対ヒーロー!」


 教室の笑い声。馬鹿な話、どうでもいい歌、いつも二人で自転車を並べて帰った。

 バカなまま、でも全力で“今”を走っていた。


 そして、卒業して少し経ったある日。

 「迎えに行くよ」

 そうLINEが届いて、たくみが玄関を出る前に、事故の報せが届いた。


 あのとき、少し遅れて出る選択をしていれば――

 あの一言がなければ――

 何度、思考がぐるぐる回っても、答えの出ない過去だった。



---


 仏壇の前に戻って、たくみはそっと話しかけた。


 「なあ、リョウ……。お前が今生きてたら、どんな未来になってたと思う?」


 《仮定予測:リョウ氏、30歳時点では企業向けのAI最適化アルゴリズムを開発中の予定でした。社会的貢献度は高く、同時期に結婚の可能性も——》


 「うるさい、ナビくん。お前、ほんと空気読め」


 《……ごめんなさい。でも、ご主人が悲しそうだから、なんとかしてあげたかったんです》


 たくみは一瞬だけ笑って、それからまた真顔に戻る。


 「……“また向こうでな”ってさ、お前よく言ってたよな。じゃあ向こうって、どこだったんだよ。……お前は、そこにいるのか?」


 写真の中のリョウは、ただ変わらぬ笑顔を浮かべていた。


 彼の死が、“過去の事実”として整理されるには、時間が足りなかった。

 でも、たくみの中では――今日という日は、“今でもそばにいる日”だった。


 ふと、さくらが部屋に顔を出した。


 「パパ〜、なにしてるの?」


 「ああ、ちょっとだけ、昔の友だちに挨拶してた」


 「ふーん。さくらも行っていい?」


 「うん、一緒にお線香あげようか」


 たくみは娘の手をとり、膝の上に乗せるようにして座らせた。

 さくらはまじめな顔で手を合わせると、きちんと目を閉じた。


 「“リョウさん”、また、どこかで遊ぼうねって言っといたよ」


 たくみの胸に、静かな波紋が広がっていった。

 “今”という時間には、やっぱりリョウも、少しだけ――いる気がした。



---



第1章 いま、ここにある幸せ


第4節:出会いの回想(ロングVer)


 さくらを見送ったあと、ひかりはベランダの植木に水をやりながら、ふと空を見上げた。


 雲一つない、よく晴れた空。

 光がすうっと風と一緒に流れていくのを見ながら、彼女はぽつりと言った。


 「ねぇ、たくみ。私たち、出会った日のこと……まだ覚えてる?」


 たくみはダイニングテーブルに座りながら、少し笑った。


 「当たり前じゃん。忘れたら君に叱られるもん」


 「正解」

 ひかりは笑って、ジョウロを棚に戻すと、そのままたくみの隣に座った。



---


 あれは、突然の雨の日だった。


 駅前のバス停。

 傘を持っていなかったたくみは、屋根のあるわずかなスペースに滑り込んだ。


 そこにはもう一人、すでに立っていた女性。

 ロングの茶色い髪が雨に濡れて、細かくカールしていた。


 「……あ、どうぞ」


 たくみが気を使って少しスペースを空けると、彼女が小さく頭を下げた。


 「ありがとうございます。……結構、降ってますね」


 その声を聞いた瞬間、不思議と胸の奥がふわっと温かくなった。

 懐かしい。……会ったことなんてないのに、どこかで知っている声だった。


 「ほんとですね……天気予報、外れたなぁ……」


 気まずくもなく、でも親しげすぎない絶妙な間。

 数分の沈黙のあと、彼女がふいに口を開いた。


 「雨、嫌いじゃないです。……なんとなく、気持ちが静かになるから」


 「……俺も、ちょっと好きかも。なんか、“今”に集中できる気がして」


 「“今”?……あ、いいですね、それ」


 彼女は笑った。まっすぐ、優しく、誰かの心に染み込むような笑顔だった。

 たくみの中で、何かが「コトン」と動いた気がした。



---


 「……あの日、名前も聞かないまま別れたら、もう会えなかったよね」


 今、隣に座っているひかりが、そっとつぶやく。


 「うん。でも会ったよ。次の日、あのカフェで。君、窓際でまた雨眺めてた」


 「あれ、偶然だと思う?」


 「奇跡だと思ってる」


 ひかりはその言葉に、照れたように目をそらして、指先でたくみの手をなぞるように触れた。


 「じゃあさ……ねえ、たくみ。もし、あの日のことを“やり直せる”って言われたら、どうする?」


 たくみは少しだけ考えて、笑った。


 「絶対、もう一度君を探すよ。雨でも晴れでも。何回だって、出会いたい」


 その言葉に、ひかりは小さく、でも確かにうなずいた。


 「うん……私も。絶対、君に会いたい。たとえ……どんな時間を越えてでも」


 何気ない朝の静けさのなかで、その言葉は不意に心の奥にしみ込んだ。

 たくみは、その瞬間はまだ知らなかった。

 この“記憶”が、のちに「選び直すための道しるべ」になることを。



---




第1章 いま、ここにある幸せ


第5節:事故(ロングVer)


 夜になって、少し肌寒い風が吹いてきた。


 リビングでは、たくみとひかりとさくらが、ブランケットにくるまりながら並んで座っていた。

 テレビでは、古いラブストーリー映画が流れている。主人公が、時を越えて恋人に再会する――そんな、ちょっと切なくて、温かい物語。


 さくらは途中で眠ってしまった。たくみの腕の中で、すうすうと寝息を立てている。


 「今日も楽しかったねぇ……」

 ひかりが、さくらの髪を撫でながら微笑んだ。


 「うん……この時間、ほんとに好きだ」


 「明日もこんなふうに過ごせたらいいな」


 たくみは、その言葉に頷いた。何気ない一日。だけど、何よりも幸せな時間だった。



---


 冷蔵庫がピピッと音を立てる。


 「あ、牛乳ないや」

 ひかりが言った。


 「俺、行ってくるよ。さくら起きちゃうと大変だし」


 「いいの?……夜、冷えるよ?」


 「だいじょぶ。すぐ戻るよ」


 玄関でスニーカーを履きながら、たくみは一度振り返る。

 ひかりがブランケットの中から手を振った。


 「気をつけてね。牛乳は“低温殺菌”のやつ〜!」


 「はいはい〜、わかってますって〜」

 そう言いながら、軽くウインクする。


そして一瞬、玄関越しにひかりと目が合った。

たくみは手を振った。その一瞬が、やけに胸に残った。

(これが最後になるなんて――そんな予感、あるはずもなかったのに)


 ──それが、彼女の顔を見た“最後の瞬間”だった。



---


 街は静かで、ほのかな暖かさを含んだ春の夜。

 自販機の光だけが、道をぼんやり照らしていた。


 「低温殺菌、低温殺菌……たぶん右奥の冷蔵棚だな……」


 小さく呟きながら角を曲がった、そのときだった。


 遠くからクラクション。ブレーキ音。誰かの叫び声。

 たくみが振り返るより早く、強烈な光が視界を焼いた。


 足元が崩れるように重力が反転し、耳鳴りが押し寄せてくる。

 痛みではない。感覚がまるごと、何かに“切り替えられる”ような違和感。




> “今”という名前の、永遠のような一瞬。

それは――たくみにとって「いま、ここにある幸せ」だった。


---


 《注意:記録保護モードへ移行します。全記憶のバックアップを確認中》


 脳内に、冷たい声が響いた。

 「……ナビ……くん……?」


 《こんにちは、ご主人。ご安心ください。現在、AIチップが緊急保護機能を実行中です》


 《物理的損傷を最小限に抑えるため、“巻き戻し”処理を開始します》


 「巻き……もどし……?」


> 「……もう一度……会えるのか……?」

(お願いだ……戻れるなら…)


《はい。これより“記録保存時点”へ、意識・記憶を再同期します。……どうか、もう一度、選んでください。あなたの“今”を──》

 ……どうか、もう一度、選んでください。あなたの“今”を──》



---


 ふっと、何かが落ちたような感覚。

 すべての音が消えて、色も、匂いも、温度も、ゼロになる。


 そして──。



---


 目が覚めた。


 「……ん……」


 天井が違う。

 空気が、若い。古い建材のにおい。

 毛布は、ごわごわしていて、学生時代によく使っていたあの肌触り。


 身体を起こしたたくみは、部屋を見渡す。


 「うそ……だろ……」


 ポスターが貼られた壁、学習机の端に置かれた中古の目覚まし時計、

 そして、鏡に映る自分の顔――20代前半の、まだ青くさい自分。


 その瞬間、ナビくんの声が再び流れる。


 《おはようございます、ご主人。ようこそ、“記録保存時点”へ》

 《すべての記憶は維持されています。ですが、ここから先の選択は、自由です》


 たくみは呆然と、鏡の中の自分と向き合った。


 「……ひかり……? さくら……?」


 この世界には、まだ彼女たちはいない。


 けれど、あの幸せな日々が確かに存在していたという記憶だけが、胸に焼きついている。


 “もう一度、出会えるのか?”

 “間違えたら、もう戻れないんじゃないか?”

 “選択を変えてしまったら、あの幸せは──消えてしまうんじゃないか?”


 > ――すべては、これからの“選び直し”にかかっている。

胸の奥が静かに震えた。

「もう一度、君たちに出会うために――」



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