第324話魔法封じの首輪


「ちょっとお待ちを」

「え?」


 突然アジサイくんがヒイラギを呼び止めて、俺ら一味はドキッとする。もう記憶がよみがえっちゃった?


「グラスをお返ししよう」

「は、はい」


 飲むの早いな! グラスを返された彼女は壁際に戻って行った。

 キラッ

 しかしその時アジサイくんの首元に光る首輪を見つけてしまう。


「アジサイ殿その首輪は一体?」

「ああこれは……」

「いや私から解説しよう。これは行方不明後発見された時から付けていた物だが、おそらく心理魔法封じの首輪だ」


「心理魔法封じの首輪?」

「あぁこの首輪があると、解呪ディスペル魅了チャーム睡眠スリープ麻痺スタンなどの外部からの心理魔法を受け付けない。それに無理に外そうとすると破裂して本人が死んでしまう上に、暗証番号も分からないから外す事も出来ない。それで記憶を回復する為に魔法治療が出来ないんだよ」


 何だって!? 嘘だっ今思い返しても最初に部屋に忍び込んだ時には、そんな首輪なんて付いていなかったぞっ。ハッまてよ……俺が忍び込んで余計な事をしたから首輪をはめられたのか!? くそっ俺のせいで何て事を。あの時師匠も連れて行って最初から解呪してもらっていたらこんな事には!!


「おや一時停止してどうしたかね?」


 ヒイラギちゃんに何て言えば。それにしてもコイツ、本当にあの真面目なアルフレッドの兄さんか?



「い、いえ一瞬考え事をしてまして。兵を百人集めるのは大変でしたので」


 ポンッ

 すると突然アルデリーゼが両手をたたいた。今度は何だよ?


「あっはっはっそれは大変だったね。おおそう言えば大切な事を忘れていたよ。謁見えっけんの直後に我が父上から新部屋移動へのお祝い金と兵百名を集める為の支度金したくきんとして、合わせて500万エピを受け取っていたのだが、何かの手違いで君に届いて無かった様だ。後で届けさせよう」


 シィ~ン

 マジか? 王様から支度金&お祝い金に500万エピももらってたの!? それあったら色んな事がもっとスムーズに進んでいた訳じゃん! こいつワザと俺に教えて無かったんだろ……今日こそマジで殺意が湧いた。


「くっ」

「くっ? どうしたのかね険しい顔をして。君も曲がりなりにも地方とは言えカピパララインの領主。あわてて金を用立てしなくとも、元々そこそこの貯えはあったのだろう? 城内に冒険者ギルドもあるし魔法オンラインで引き出す事は出来たはずだが」


 銀竜村は貧乏な上に借金抱えてるし、マリにはむやみな【銀化】止められてるし元々あんまり金もって無いんだよ!


「ユリナスよ、とりあえず帰って来たら家具やら何やら必要な物を買いそろえるじゃ!」

「は、はい師匠」


 そうか、アジサイ君を解呪してトンズラするつもりだったけど、首輪のお陰でそういう訳にも行かない。今はここの生活に慣れるしか無いのか。首輪の外し方も師匠に聞いて考えるしか。


「ではワシはまだまだ食べまくるのじゃ!」

「は、はい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る