第323話お、お兄さん?


 確かナスビィーじゃない通常状態の時は冷たかったよなこいつら。でも今はそんな事言ってる場合じゃ無いか。俺はチラリと見返した。


「おっと勘違いしないでくれよ、アンタが領主サマだからすり寄ったとか思うんじゃねーぜ?」

「あたいら権力には屈しないタチなのさ」


 恥ずかしがり屋さんか? 思い切り手のひら返して迎合してるくせになっ!


「だが助かるよ。アンタ達を信用して副官に任命しよう。その代わり俺を裏切ったら大親友のビスマスさんが超制裁を加えるからな」

「へっ分かってるよ!」


 そういう訳で100名以上集まった応募者の中から適切な人選を任せてみたが、案外スムーズに進めてくれて頼りになる連中だった。見た目で疑ってゴメンよ。とりあえず兵百名は集まったぜ!



 ーそしてすぐにドルフィンナーゼ遠征の前日になったので御座います。


 大広間、遠征壮行会

 兵がそろったとは言えアルデの奴には会いたく無いのだが、仕方無しに参加する事になった。


「美味しそうな料理が沢山あってワクワクじゃ」

「師匠はいつも無邪気で安心しますよ!」

「私は不安しかありません。本当に居るのでしょうか?」


 ヒイラギちゃんがとても不安な顔をしている。だが目の前にすぐに答えが現れた。


「やあユリナス殿、ようやく来たのだね? 部屋こもりが趣味になって来ないかと思ったよ」

「いやご心配無く。一族郎党いちぞくろうとう引き連れて来ました」

「殿下ご機嫌よろしゅうなのじゃ~」

「ふふリリー・サマー殿、今日も麗しくお会い出来て光栄です」


 もちろん壁際に居るメイドさんのヒイラギにはアイサツなど無い。でも目標は居た。


「そちらのお方は?」

「おお忘れていた、ユリナス殿の同僚となるカール殿だ。事故で記憶を無くされてな、リハビリがてら仕事に復帰している」


 目が合うとカールことアジサイ君は頭を下げた。ヒイラギの兄で洗脳されている少年だ。


「お初にお目に掛かりますユリナス殿。ご紹介の通り記憶が戻らず皆様にご迷惑をお掛けしております。どうぞご指導をお願いしますよ」



 本当に俺の事を覚えて無いんだな。壁際で見ていた彼女が手はず通りやって来る。

 コツコツ


「ユリナス様お飲み物です。こちらの方にも」


 ヒイラギは兄、アジサイに飲み物を渡す。


「ありがとう可愛いメイドさん」


 アジサイ君は何事も無く飲み物をもらい受けた。師匠はトボけたふりをしてじっと見ているが、彼女には今は解呪魔法ディスペルを掛けない様に頼んでいる。この場では騒ぎになるし、それに実は俺はドルフィンナーゼとやらに行きたくなったからだ。


「では御用があればお呼びを……」


 戻る彼女、ヒイラギちゃんゴメン。

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