第122話第二王子
「行っちゃったよ、追い掛けるのも無粋かハハ」
シュイィーーン
ナスビィーは夜の空からエレベーターの様に一直線に降り降った。
シュタリッ
ふぅと一息ついたのも束の間、俺の周囲にはどとうの様に大勢の兵達が……凄く嬉しく無い!
「おおおぉおナスビィー殿お見事ですぞ!」
「あのビスマスに一泡吹かせてスカッとしましたぞっ」
「今後も是非とも我らとご一緒に戦いをっ!」
「その前にねぎらいの宴だっバカ者め」
ハハハハハ
どっと笑いが起きるって……やっぱりこのノリ苦手だっ!
俺の心の中は、告白に対する
「ほらほらこっちですぞ! さぁさ、宴へどうぞ」
ひぃいむさい男達にひっぱられる~~うはっ。
ーゼブランド国境より少し侵入された、アルパカインゼット前線陣地
この陣地には4000人程の軍勢が進出しており、最初ゼブランド王国に軽々と侵入しつつも現在は少数で抵抗する部隊にぶつかり一進一退の小競り合いを繰り返していた。
「ええいっどうして砦一つが簡単に落とせないのだ!? そもそも父王がもっと多くの兵を預けて下されば良い物を、栄光のアルパカインゼット第二王子のこの私が、4000ぽっちの少ない兵で戦うなど無様だっ!」
どバシッ!
アルデリーゼは地図が広げられた木製盾を並べた机を叩いた。
彼は金色の軽くカールした長髪を持つ美形の、典型的な王族を鼻に掛けた嫌味な貴公子であった。そしてユリナスの友人となったアルフレッドの兄でもある。
「フェッフェッフェッ、王は既にご高齢とても弱気になっておられますぞ。力は強いが粗野で人望が無い長兄殿下は元より、Bランク冒険者止まりで無能な弟君と比べるまでも無く、貴族も平民達ももっぱら貴方様を次期王に推しておられます。もう少しお待ち頂ければ王国は全てそっくり貴方様の物ですぞ」
鎧に身を包んだ白ヒゲの男が耳元でささやいた。
「やめろジイ、野蛮な兄や無能な弟はともかく、父王への批判は死罪だぞ、お前とて許さん」
「フェッフェ、口が過ぎました。本意はともかくそこまでご慎重な貴方様にお仕え出来て本望で御座います」
ジイと呼ばれた男は主人の第二王子の本心を見透かした様にほくそ笑んだ。ちなみにこのジイはアルフレッドの部屋の横に待機していた執事のジイとは当然別人である。
「しかし……真に頼りとなるのはビスマスよ。彼女が増援を叩いてくれるからこそ、長い遠征でも士気が保てる。今夜も情報にあった増援を攻撃してくれているはずだ」
「しかし、あの御方が本気を出せば砦にこもる敵兵など一瞬で壊滅出来るハズ。手を抜いておられませんかな? 一体どれ程ガメツイ御方なのやら」
「彼女が取り金を吊り上げる為に、手を抜いて戦を長引かせていると言うか? 違うな、砦の敵は我で倒せという事なのだ。彼女は私の実力を試している……そう解釈している」
「物は取りようで」
彼は嫌味ではあるが、何でも正直に言うこのジイを厚く信頼していた。
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