第6話「天才との邂逅」
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U-18合宿から戻った数週間後。
蓮はJFAエリートトレーニングキャンプに招集された。
全国から選ばれた“10代最強の才能”たち。
その中に、一人だけ、空気の違う選手がいた。
「お前が“考えるやつ”か」
その少年の名は──鬼塚 隼(おにづか・はやと)
圧倒的な個の突破力と、誰にも懐かない狂犬気質で知られる“悪童”。
初日の紅白戦。蓮が守備に入ると、鬼塚が挑発的に言った。
「止められるもんなら、止めてみ?」
次の瞬間、鬼塚はスピードとフィジカルで強引に突破。
蓮は読みで一歩先に入ったが、わずかにバランスを崩され、吹き飛ばされた。
「これが“本物”のサッカーだよ、お坊ちゃん」
ただ、蓮の目は笑っていた。
(なるほど。君が“対”になる男か)
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※鬼塚 隼 視点
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なんだか、今日の空気はつまらない。
いつもと同じように、ドリブルで抜く。
フェイントも、キックも、感覚で全部わかる。
誰が相手でも止まらない。だから、つまらない。
――だったはずなんだけど。
紅白戦の途中、俺の前に立ったやつ。
髪が濡れてて、表情も薄くて。何考えてんのか、まるで読めねぇ。
名前、なんだったっけな。
「止められるもんなら、止めてみ?」
そう言ったのは、俺だった。
でも――何か、あいつの目が笑ってたんだよ。
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ボールを持って仕掛けた瞬間、
あいつは一歩だけ、俺の動きより先に動いた。
ありえない。初見で、しかもフィジカルも大したことねぇ奴が、
“読み”だけでその位置取れるか?
とっさに肩で押し込んで、吹き飛ばした。
身体でねじ伏せた。決まった。
……のに、なんだ、このモヤモヤ。
(あれ、今、ギリギリで外されてたかも)
俺はあいつの名前を思い出す。
──蓮。なんだよそれ。草かよ。
なのに、ピッチ上では“全部見えてる奴”だった。
何を考えてるのかも、何を見てるのかも、わからない。
でも、そういうやつ、嫌いじゃない。
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試合が終わっても、あいつのことが頭から離れなかった。
他のやつらは、「あれ誰?」「細いのに結構うまいな」って軽く流してた。
でも、俺だけはわかってた。
(あいつは“今”じゃなくて、“先”を見てる)
ムカつく。けど、次も絶対会いたい。
次は、あの目を、こっちが揺らす番だ。
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