清掃活動

 異臭がしていたのに気づきませんでした。

 これといって特徴がなく、普通すぎるのが逆に特徴の住宅地に住んでいます。私は生まれた時からここにいるのですが、町の外れに地域で有名なゴミ屋敷があります。

 全国、たぶんどの自治体にも似たような家があると思います。1人の住民が集積場や河川敷や公園から拾ってきたゴミをコツコツ集め続けて山を作る――そんな家です。住民は、歳は分からないですが私が初めて見た時からお爺さんでした。昔一度だけ家の前を通ったら大声で怒鳴られました。

 そもそも家の周りが臭すぎて誰も近寄りたくないのです。生ゴミ系とは違う、本能的に嗅いだらダメだな、と感じるような悪臭です。隣家や自治体、最後は役所からも再三撤去の通告が出されていたのですがゴミが片付けられません。人づてに聞いた話ですが、本人には「何がどこにあるか全部把握している。これは俺にとって宝だ」と言い張るようです。勝手に捨てようとするとゴミ山から鍬や鋤を引っこ抜いて暴れ出し、道路の角を曲がってもまだ追ってくると聞きました。手の出しようがありません。


 そんなだから根負けした隣家たちは引越してしまい、ポツンとゴミ屋敷だけが残りました。新聞も取らず郵便も来ない家とその前の道は毎日お爺さんが出入りするだけとなりました。

 町の厄介者だったお爺さんは私から見るととても寂しそうでした。孤独を紛らわすためにゴミを集めているんじゃないかと、そう思ったりもしました。

 ただ関心のない人々はゴミを拾うお爺さんの姿を見かけなくなっても2、3ヶ月気づかなかったのです。


 お爺さんは家の中でゴミの中で大きなクマのぬいぐるみを抱いて死んでいました。まるで幼い子供のように安らかな表情でした。死後3ヶ月以上経っていました。

 誰が通報したか分かりませんが、警察と救急隊がやってきて騒然としたのは町のみんなが知っています。遺体は当然腐敗していましたがゴミの臭いに混ざっていて気づいた人はいなかったのです。

 主を失ったゴミ屋敷はようやく行政により強制撤去されました。町が綺麗になりみんな喜んでいます。




 上手くいって良かったです。

 まぁ発見が遅れると初めから予想していたのでやりやすかったですね。

 孤独なまま死ぬのは可哀想だったので、たまたま家の中で見つけたクマを抱かせてあげました。

 彼は幸せそうでしたよ。



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