第2話 The Cat Has Seven Lives
「ママが泣いちゃって、ちょっとびっくりしちゃった」
ミユは昼食の白桃入り冷製パスタを食べているフォークでミカを詰るように指して揺らせた。
「あなたの留学許可に踏み切ったのはモモちゃんのおかげだからね」
ミカが応じる。
「うん、まだハッキリ言って信じられないけどさ」
プレートに乗っている白桃をフォークで掬いながら俯いてミユは答える。
「ボンジョルノ、シニョーラ、シニョリーナ」
ちょっと軽薄そうなスマイルを浮かべながら リストランテ・アージョのマスター、タケノが白い厨房服で口に手を当てて投げキッスする。
「オヤ、シニョリーナ・ミユはアメリカ帰りでまた一段と大人っぽくなりましたねえ」
「もう、イタリア男ぶっちゃってさ、ま、似合ってるけど、ちょっとキモ!」
ミユがギュッと顔を顰めて笑いを堪える。
都内の大通り、一面の遮光カーテンを通して強い日差しが差し込んでくる。
3人で爆笑が起った後、陽気に腰を振りながらタケノは厨房へ帰ってゆく。
「The cat has seven lives. 猫に七生あり、って向こうの学校で習ったけど、その7回を100倍も繰り返してたなんてね、どんな人生、ってかネコ生だったんだろ?」
「じゃあさ、知ってることこれから話すけどさ。これ、また信じられないだろうけどさ、作り話じゃないからね」
パスタが下げられた後、桃のジェラートをスプーンで掬いながらミカは顔を突き出してミユに詰め寄った。
「分かったよ、焦らさず言えよ、でもさ、また泣いちゃったらやだよ」
ミカが話し終えると、一瞬沈黙が訪れた。厨房の中で陽気なマスターとシェフたちの会話が聞こえる。
「た、武田信玄、武田信玄に飼われて、信玄さんを看取ったって・・・・・・」ミユが呟いた。
「お館様のご逝去を何としても隠し通すのじゃっ、って息子の勝頼さんに。信長に天下を取らせてはならぬ、って」
ミカが応じる。
「室町幕府と朝廷の再興はお館様の悲願じゃ、ってね」
「ネコが進言したなんてね」
ミユは首を振って信じられない風に声を顰めた。
七百猫(しちももねこ)、1万年以上を転生し、700回生きた猫の最後の生が閉じられて一年が過ぎた。
つづく
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