からとうフレンズ

ポッサムマン

第1話 かれーこ


 かばんとサーバルが船出してから何度も朝と夜が来たのです。ですが、何度来たとしてもわれわれの『しまのおさ』としての勤めに変わりはないのです。困ったフレンズがこの『じゃぱりとしょかん』に来たら、われわれの知っていることを教えてやる。これでフレンズたちは大助かりなのです。われわれはかしこいので。

 ただ、少し変わったことといえば……



「白い粉を黄色い粉とよく混ぜるのです」



「こ、こうでいいか?」



「あとは食材や水もちょいちょいと入れて一緒によく煮るのですよ」



 ジャパリまんだけでなく料理も食べるようになったのです。確かにジャパリまんは栄養ばっちりで、お腹も満たされます。ですが、我々はグルメなのでこうして火の使えるフレンズにちょくちょく料理をさせてひっかけるのです。美味しいものを食べてこその人生なので。じゅるり。



「よしできたぞ……これでいいのか?」



「上出来なのですよ、ヒグマ! 流石セルリアンハンターは飲み込みが早くて助かるのです!」


「今日は特別なのです。ささ、お前も一緒に食べるのですよ」


「えっ、いいのか? じゃあ、私ももらおうか」


 こうして出来たのがカレー。かばんが教えてくれた料理で、あれ以来われわれはやみつきなのです。じゅるり。かばんとサーバルが島を離れてからも、こうしてわれわれはカレーをたくさん作らせて食べていたのです。あの辛さがたまらないのです。

 ですが、近頃は――




「流石に同じ味だと飽きが来てしまうのです」



「助手もそう思うですか」



 そうなのです。忙しいわれわれの身体はさらにエネルギーを欲しているのです。もう普段のカレーでは物足りなくなってしまったのです。しかし、今かばんは島にいない……。



「われわれで材料を調べてみるですよ。それで新しいれしぴを考えるのです」



「名案なのです。美味しいものを食べてこその人生なのです」



 そこで私ミミちゃん助手と博士は、味のキモがこの『かれーこ』と瓶に書かれた黄色い粉にあるに違いないとみて調べることにしたのです。



「取り敢えず、このまま舐めてみましょう」



「ふむ……」 



 瓶の中身を手に取って口に運ぶのです。



「か、からいーっ!」



「からいのです! それに強い匂いもするのです! 流石に刺激が強すぎるのです!」


 いつものカレーの何倍も濃い辛みと匂いが襲ってきて思わずむせてしまったのです。味をじかに見て考えるのは失敗のようですが、ひとまずカレーの味の大本はこの粉とみて間違いなさそうなのです。


「さて、問題は材料についてですが……」



「何か心当たりはあるのですか? ラッキービーストの畑で体当たりで調べるのも無理がありそうですが……」



「辛さの源については一つだけ心当たりがあるのです」


 われわれは畑に行き、その赤い実のなる植物を探したのです。



「これです。本によればカプシクム・アンヌムという名前だそうですが」



「これ、食べられるのですか? 毒がありそうな色ですが」



「一つかじってみましょう」



 われわれは実を手に取りかじってみたのですが思わず一口で吐き出してしまったのです。辛すぎて食えたもんじゃないのです。それに、なんだか手もヒリヒリするのです。



「ソレハ唐辛子ダネ」



 物音を聞きつけたのか、いつの間にかラッキービーストも現れたのです。



「中南米原産デ、ヒトノ食生活ヲ大キク変エタ作物ダヨ。辛ミノ成分デアルカプサイシンニハ身体ヲ温メタリ殺菌ノ効果モアルヨ」



「そ、そうなのですか……」



 よくわかりませんが、何やら凄い実であることは間違いなさそうなのです。なぜ本で読んだことがあるのに知らなかったのかというと、かしこいわれわれにも苦手な文字はあるのです。


「そういえば、あのカレーのれしぴも図書館の本に書いてあったものをかばんが見つけたのです。調べてみれば、別のれしぴも見つかるかもなのです」



「なるほど……これは調べてみる甲斐がありそうなのです」



 かくして、われわれの探求が始まったのです。

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