天使と仲間は、破滅の眠り姫を乗り越える
第34話 亜美の居場所
時刻は午後六時半。
「駄目だ。
「お母様もですね。いつも
三浦と、綾小路が電話を片手に深刻な面持ちで、言葉を交わす。
場所は職員室。教員の三分の二は既に帰宅しているが、残った教員らは三浦から
教職員の半分は学校周辺の見回りに。残る半分は、手掛かりを探して構内の確認に。そして、技術職員らは薮に指摘されたゾンビプログラムの駆逐に。
今回のAIによる拉致疑惑は、情報の広がり方によっては、もし何の問題もなかったとしても、女子生徒の醜聞として面白おかしく伝えられてしまう危惧がある。下手に騒ぎ立てることも出来ないが、初動の遅れで防げるものを手遅れとしてしまってもまずい。
そんな細心の注意を必要とする状況だった。
「
薮が焦った様子で問うが、生徒一人一人の動向など学校側が逐一詳細に把握などしているはずもない。
ヴヴゥー ヴ・ヴゥー
「あ! クラスLIINEですよ!! そうです、
もしかしたら既に気を利かせた誰かからの連絡かも、などと期待を膨らませつつスマホを取り出す。
「どうだ?」
三浦の問いに、
「例の、Switehのバトルゲームの出会い厨さんでした」
「はぁ!?」
亜美への心配がどこかに吹き飛んだ勢いで、薮が殊更大きな動きで全身を
「それ、どいつ!?
スマホに向けて手を突き出してくる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。ずっと距離感変わらないですし。わたしがAIを満喫できる学園に転校するって言ってから、えらく声を掛けられるようにはなりましたけど。オフ会とかリアルに会うことは、リクして来てきませんから。
今も、クエストの時間になってもわたしが現れないからメッセを送って来ただけです」
言いながら、両手で持ったタブレットの画面に、親指で何事かをトトトと入力してゆく。
「問題児AIさん対策のリアルクエスト参加中だから、ゲームはあとでって送っときました」
問題なし、と力強く言いたげな
教師らは、主にゲームを介して、知らない誰かと個人的な遣り取りをどこまで行っているのか。情報リテラシーに関して。
薮は、出会い厨と思われる者と、普通にかかわり続けることに関して。嫉妬だ。
「それでもってクラスLIINEにしっつもーん!」
再び親指で軽やかに入力する。「とうっ」と
【いかりさんを見た人いますか?】
【かえったあとで】
見る見る既読の数字が増え、ぽつぽつと返信が流れ出す。
けれどほとんどが「おつ」「しらん」「家もしらんし」「見てない」など素っ気ない一言だ。
そんな中。
【気になってアミの家の前を通ってみたんだけど】
【誰も居ないみたいだったよ】
【行きそうなとこも見たけど居なかった】
一色 恵利花からだ。
すれ違いや衝突があったにしても、小学生時代からの付き合いのある彼女は、様子のおかしくなった旧知の仲の亜美を見捨てることは出来なかったのだ。
対して、彼ピこと
「まだ、校舎内に居る可能性も出てきましたね。AIさんからの挑戦。本気の学園かくれんぼを、受けて立ちましょう!!」
スマホを片手に握り締め、
勇気と思い切りの良さが乗った力強い一歩を踏み出そうとしたところで――。
すかさず上がった「ちょっと待って!」の薮の声が、彼女を引き留めた。
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