彼女、家に招く
夏鈴さんと昼食を食べ、午後の講義も終わった。
そして帰ろうとしていた時、昼の時と同じように夏鈴さんが教室にやってきた。
「燐華ちゃん。お願いがあるんだけど......」
「どうしたの......?」
「私に燐華ちゃんのお世話をさせてほしいんだ」
夏鈴さんが突然そんなことを言ったので、俺と燐華さんは驚いてしまった。
「私って昔のことあんまり覚えてないんだけど、燐華ちゃんが色々教えてくれたでしょ? だから、そのお礼」
正直、燐華さんは招き入れてしまうと思う。
だが、それで燐華さんの調子が悪化してしまうことを俺は恐れていた。
「うん。じゃあお願いしようかな」
俺の予想通り、燐華さんは夏鈴さんのお願いを了承した。
「ホント!? じゃあ、燐華ちゃんの家へ行こうか!」
夏鈴さんは大喜びだ。
そんな夏鈴さんを見て、燐華さんは複雑そうな表情をしていた。
俺たちは一緒に電車に乗り、燐華さんの住むマンションまで歩いた。
その途中、夏鈴さんは私が夕食を作るといい、近所のスーパーへ向かうと言い出した。
燐華さんがマンションの住所と部屋番号をスマホで送ると、夏鈴さんは一人で材料を買いに行ってしまった。
そして、二人で燐華さんの家に向かっている間に俺は話しかけた。
「良かったんですか? 家に呼んじゃって」
「良くは......ないけど。でも......」
「あんなにグイグイきたら断れないですよねぇ......」
「うん......」
このままでは燐華さんの気が休まらないことを危惧していた。
しかし、もうどうしようもない。
俺には何も起こらないことをただ祈ることしかできなかった。
燐華さんのマンションに着いてから三十分後、ドアがノックされた。
ドアを開けると、ビニール袋を持った夏鈴さんが立っていた。
「お待たせー。いやー重かった重かった」
夏鈴さんは玄関の床に荷物が入ったビニール袋を置く。
中を覗くと、キャベツやニンジン、もやしなどが入っていた。
「何を作るんですか?」
「野菜炒めだよー」
夏鈴さんは体を伸ばし、それから靴を脱ぎ、ビニール袋を持ち上げる。
「燐華ちゃーんお待たせー。キッチン借りるねー」
燐華さんにそう言うと、夏鈴さんキッチンにビニール袋を置き、準備を始めた。
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