彼女、教えを乞う

 高校生は燐華の隣に座ると、ギャルについての解説を始めた。


「まず、ギャルはテンションが高い。だから、まずはテンションを上げるのが大切」


「テンションかぁ。難しそうだなぁ」


「え、あんな性格で......?」


 高校生は驚いた。

 酒で堕落し、明るい燐華しか知らないのだから当然だ。


「まぁテンションを表に出す必要は無いんじゃないか? とにかく、楽しむ気持ちが大切だと思うよ」


「楽しむ気持ちかぁ」


 燐華は水を飲みながら高校生に返事をする。


「よく、余計なこと言ったらどうしようとか、変な行動しちゃったらどうしようとか思ってあがり症みたいになっちゃう人っているけど、そんなのは気にしなくていいと思うぞ。直接罵倒したりとかはしないように気を付けないといけないけど......」


「なるほどねぇ......」


「あとは、相手に流されてればいいんじゃないか? 楽しみつつ、相手に身をゆだねる。罵倒はしない。これだけでいいと思う」


「ふむふむ......」


「......って感じでどうだ? 正直、こんなのでいいのかって思うけど」


「うん! 大丈夫かはわからないけど、頑張ってみるよ! ありがとね!」


 燐華は高校生の手を握り、お礼を言う。

 少年の顔は少し赤くなり、目をそらす。


「......困ったら、俺にまた相談してくれよな」


「うん! ......って、あれ?」


 携帯の着信音が鳴り響く。

 燐華はポケットから携帯を取り出し、電話に出る。


「もしもしー? ......うん、うん。わかった。すぐ行く!」


 燐華は電話を切る。


「ごめん、彼氏が呼んでるからもう行くね! 相談ありがと! またねー!」


 燐華は立ち上がると、走り去っていった。

 取り残された高校生は固まっていた。


「え......。彼氏いんの......?」


 燐華に彼氏がいたことを知り、ショックで数十分動くことができなかった。

 一人の高校生の初恋が今終わった。

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