第76話 邪結晶です!


「待て、最初からきちんと説明しなさい」


 頭が痛いと、こめかみに手を当てて篠崎さんが言うので、インベントリから頭痛薬を取り出して渡してみたけど、要らないと言われてしまった。


「最初からと言われてもなぁ?武術訓練合格したからダンジョンに入れるだろ?だから学校のチュートリアルダンジョンの隠し部屋見に行こうと思って行ったんだよ」


「隠し部屋……は、アレだな。本が有ったなそういえば」


「うん。でね?一階は見学があったからかもしれないけどモンスターと出会わずにスルッと行けちゃって、あっさり隠し部屋に着いちゃったんだよ」


 マジで居なかったんだよね、不思議なことに。リポップが遅いのか他に原因があるかは知らないけど結構うろうろしたのに遭遇しなかった。


「まぁ、隠し部屋には普通に発見おめでとう看板しかなかったんだけど、なんか嫌な気配感じるな?と思って部屋の中を探ってみると看板の裏にコレが貼り付けてあったんだ」


「成る程、見つけた経緯は理解した。で?」


「うーん、感覚的な話なんだけど持ってると普段ならやらないことを『これくらいいいや』って思っちゃうというか、車がいないから赤信号渡っても良いよね?って気分になるというか……そんな感じ?持ってなくても近くにあるだけで影響はあると思うけど」


「………あのぉ、それ、俺めっちゃ感じてます。あと無性にイライラするというか、ちょっと自分でも意味不明な感じです」


 で、弟子!?そういえば居たな!


「私は全くだが?」


「えぇ?個人差あるの?コレェ?」


 いや、そういやそうだな?ストーリーでもコレで問題起こした人は居たけど、その人だけがそのダンジョンに入ってた訳じゃないし、それはつまり影響される人とそうじゃない人居るってことだもんな?



  …………あ!精神力か!そういや邪神の影響を防ぐのは精神力だった!篠崎さんはレベル高いから精神力も高くなってる筈だし。


 あれ?でも俺と同じレベルの弟子の方が影響受けてるのは………


「あ、そっか!弟子はカード類を使わずにレベル二十まで上げたから魔力や精神力が育ってなくて影響を受けやすいのか!」


「え?」


「いや、弟子が事件起こしちゃったの絶対コレのせいでしょ?話してみると自信は無さげだけど真面目だし、ちゃんと疑問に思ったら訊くし」


 性格はかなりまともなんだよ本当に何でやったのこの人って感じ。

 悪意を増幅させるとか『これくらいなら』をやれちゃう状況ならどうかなってくらいに鬱屈した想いはあっただろうけど。


「まぁ、そんな感じだから、人の理性を緩くしちゃうんじゃないかな?と予想してみた。たぶん俺が発見した時点で連絡しなかったのも『これくらいいいや』ってなったからかも。精神力がどの程度あれば影響受けないかはちょっと調べなきゃかもね」


「……とりあえず、それはインベントリにしまってくれるか?インベントリに入れてれば影響は無いんだよな?」


 はい、危ないからしまっときます。

 俺は篠崎さんに頷きながらインベントリに邪結晶を戻した。


「話をまとめると、その結晶は人の精神に作用するアイテムであり、その影響は精神力の値によって差がある。そしてその結晶を学校のチュートリアルダンジョンに設置した人間が存在し、彼はこの結晶の影響を受けた可能性が高いと、そういうことだな?」


「そうだね……………あれ?もしかして、学校関係者にこれを設置した人が居るってこと?」


 しかも!ゲームでは最初の事件以降チュートリアルダンジョンで騒ぎが起こったことは無いから、もしかしてコレはまだ試作品で後々回収される予定だったのかもしれない!


 ヤバい!持って帰って来ちゃった!うわぁどうしよう?


「失くなってることに気付かれたらヤバいかな?」


「……………君は何時、それを回収したんだ?」


「え?えーと、四日前くらい?」


「つまり、彼が事件を起こしてから一週間程は放置されてたわけだろう?なら設置した犯人はそれを回収する気が無いか、一定期間置いておく気だったか、もしくは回収出来る状態じゃなかったかのどれかだな」


 成る程、篠崎さんは本当に話を整理するのが上手いな。


「犯人が誰かは今は調べようが無いから一先ずその結晶を調べることにしたいが、レベルを上げてないやつに渡すのも怖いし、アイテム鑑定で解らなければ君が神にお伺いしてくれ」


「はーい」


 邪結晶についてはそれでオッケー!


「あのぉ?俺は居て良かったんです?」


「あぁ、こういう類いのアイテムは一つとは限らない前提で動く。チュートリアルダンジョンに仕掛けられたことを考えると低レベルダンジョンも危険だ、つまり君が活動するレベル帯のダンジョンで発見される可能性が高いので、発見したら回収して管理局へ連絡してくれ」


「あ、そっか!管理局関係の人達はレベル高いから低レベルダンジョンに居ると目立つもんね」


 ほら、動きが違うというか低レベルダンジョンのモンスターを瞬殺していくとか目立つ。それに低レベル帯で活動してるセイバーの邪魔になるから。

 その点弟子はちょうど良いレベル。つまり管理局に足りない部分の人員!



「……まさか、巻き込むために最後まで聞かせたとか?」


「そうだな」


「……ヤベェやつしかいねぇ」


 弟子って、きっと巻き込まれ属性持ってるよねぇ。




 結局、弟子は管理局に協力することになり、俺も注意するように言われて、その日は解散となった。


 この頃から邪神教団が動いてたとか、ゲームの裏設定みてるみたいで面白いなぁと思いつつ、やっぱり最低限被害は少なくなるようにしとかないといけないと、気合いを入れた。

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