第41話 二年後では?
暑さに負けず!寒さに負けず!来ない依頼を待ち続け、スコンと忘れて早二年!
「頼くん、問題になりそうなところが全て解決したので作成に入ってほしいそうだ」
三年生になった夏、今年もキャンプ楽しかったなぁと思いながら夏休みが終了して管理課にやって来た俺に、篠崎さんが伝えてきた。
俺は首を傾げて「なんの話?」と篠崎さんに訊いた。
「わ、忘れてるだと!?」
「仕方ないですよ、まぁったく音沙汰なかったんですから」
「えー?何か作らないといけないやつあったかなぁ?」
「ワープポイント!」
思い出そうとしてたのに篠崎さんが答えを言ってしまった。
「あぁ!ワープポイント…………ワープポイント!?ハッ!そうだった!話が全く進まないから忘れてた!」
実は設置系の諸々は法整備が必要だったり、その他企業や地主に交渉が必要だったりで進まなかったのだ。
時間がかかると思われた論文系は、AIさんの活躍により、実用化が進んで電気エネルギーと併用して使われるようになってきている………らしい。
俺が子供なのでどうなってるか誰も報告してくれないのだ。ニュースになってることしか知らない。
因みに父が実用化した分の理論については父の発明として登録されているが、父は相変わらずシステム課で働いている。
「え?ようやく?作って良いの?」
「あぁ、材料も全て揃えている」
「親機は何処に置くことになったの?」
ワープポイントには親機と子機があって親機でしか料金設定が出来ないので、親機の管理問題もあったのだ。
「管理局AIのアイさんが管理する。アイさんならネットから情報を手に入れて、情勢に合わせた値段設定が組めるからな」
なるほど。
めんどくさい部分をアイさんに投げたなぁ?
因みに、二年前の初挨拶で名前が無いことを気にしていたので父に名前が無いのは可哀想と言ったら安易にアイさんと名付けられた。
今は増設されだいぶ大きくなって、改良型ドローンのサポートAIの仕事もやってるらしいよ?
「じゃあ大丈夫だね!材料は何処かなー?」
「倉庫だ、案内する」
「丸々一つこのサブクエのためだけに空けてる倉庫だから、倉庫で作っちゃって良いよ」
だったら今のうちに加護カードをセットし直しておこう。
管理局の外に出て、台車カーで移動して倉庫の並ぶ場所へとやって来た。
「ここは管理局に集まったアイテム等を保管している倉庫エリアだな」
ここら辺一帯が管理局の土地らしい。
その倉庫エリアの一つに入ると、段ボールが複数箇所に別けて集められていた。
「えーと、たしかあっちですね」
高橋さんが指差した段ボールの山には『ワ』と書いてあった。
わかりやすくはある。あるけどもっと、こう、ちゃんとしないか?
「熊田さん達だな」
「まぁ素材が素材ですし」
ならしかたないな!熊田さん達ならむしろ似合って(?)る!
「とりあえず、作るけど段ボールから出さなくてもやれるかな?」
環境のコレクションブックを見ながら段ボールの山の前に立つ。
んー……出来そうではあるけど、出来た物がそのまま他の素材をグシャァっとやりそうな気がする。
「うん、やっぱり素材は出さなきゃ」
というわけで、段ボールから必要な素材を取り出して床に置いていく。
高橋さんはともかく、篠崎さんの働きが凄い!三人くらいで持たなきゃいけないような材料を片手でひょいっと持ち上げてるのだ!
「じゃあやります!最初は親機が出てくるからね!」
何時ものようにポンと作られたのは、空中に浮かぶ家庭用冷蔵庫くらいの六角柱の青いクリスタルと、そのクリスタルから出てる紐……というかたぶんパソコンに繋ぐためのケーブルである。
「おぉ!不思議クリスタルですね!」
「親機だけこんな不思議クリスタルなのは意味がわからん」
「子機作るからジャンジャン材料置いてって!」
親機はとりあえずインベントリにしまって、子機を作っていく。
だって作る数がヤバいんだもの!百や二百じゃ足りないんだもの!
俺しか作れる人が居ないので、時間はかかるけど、作る分にはポンなのだ。むしろ材料を並べる方に時間がかかる。
「作った子機は倉庫に置いて置けば良いそうだ」
「しかし、何で親機はクリスタルなのに子機は鳥居と賽銭箱なんでしょうね?」
知らぬ。
「神様の考えは人間には高尚過ぎてわからんのです」
横一メートル、縦二メートル程の石の鳥居に、賽銭箱と書いてあるだけの鳥の巣箱みたいな木製の箱がくっついている。
この賽銭箱に触れると、半透明なウインドウが現れて、ワープポイント使用料の支払いが始まる。
因みに、現金でもカードでも払えるが、カードだと一括即時引き落としという不思議パワーが働いている。
「これ、運ぶの大変じゃない?」
「その前に他の人でも設置が出来るか確認しないとだぞ」
そうでした。
サブクエに設定された場所の確保は済んでるらしいけど、俺以外でも設置が出来るかはわからないんだった。
なんせ今作りましたからね!
「あれぇ?ということはだよ?」
「自衛隊協力のもと、ヘリを使っての移動で全国各地ワープポイント設置の旅が始まるな」
「残念だけど観光する時間は無いだろうね」
「ぬがっ!?」
俺がわかりやす過ぎるんだろうか?
全国回って観光出来ると言おうとしたら先に「無いです」された。
「少し泣いた」
「とりあえず一つ、近い所に設置出来るか試してもらうか」
「やっときましょう、まだまだ作らないとですし」
うん、段ボールの山はまだまだ減っていないのだ、検証は誰かに頼んでしてきてもらおう。
というわけで、実働部隊の隊員さんを召喚!ワープポイントを一つインベントリに入れてもらって管理局前に設置してきてもらう。
「ん?あぁ、連絡が来たな。喜べ頼くん設置出来たそうだ」
俺の方でもサブクエ画面でワープポイントの設置済みカウンターが一になったのを確認した。
「やったね!じゃあどんどん設置していってもらおう!」
「ですね、管理課にも連絡して暇な人は手伝ってもらいましょう」
「そうだな、ワープポイントは盗んでもちゃんと所定の位置に設置しないと使えないし他の所に協力要請出せないか訊いてくれ」
というわけで、高橋さんが作り終えたワープポイントをインベントリに入れて、倉庫の外に運び出し、篠崎さんと材料を複数並べていき、一気に沢山ポンと作るのを繰り返した。
「僕は工場、ベルトコンベアー」
「機械より理不尽な早さで作ってるけどな」
近場は良いけど遠くはどうするんだろうね?
これがゲームでいうワープポイントまだ置けてないからマップ開放出来ないよ!って状態だったら笑うけど。
「篠崎さぁん!自衛隊が協力してくれるそうです!」
「わかった!自衛隊なら素材集めに協力してもらったから入って大丈夫だ!」
え、ヤバ。
あれ?これって自衛隊が普通に出てくる案件なの?ヘリ借りれるのスゲェ!って思ったけど、設置まで協力してくれるやつなの?
「自衛隊が動くのって大変なんじゃなかったの?」
「は?頼くんがどう思ってるかは知らないが、これは国の一大事だぞ?自衛隊も出てくるだろ」
……そんなに?
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