第17話 因縁

 待ちわびていたような気がするし、来てほしくなかったとも思う。

 どちらにせよ、今日はとても大事な日だ。


 今後のヒーローの在り方が変わる。

 大ちゃんとすみれちゃんの未来を守れる。


 そして、私とあの子の因縁が終わる。


「今日は、あんた一人なんだな」


 あの子の声が、後ろからする。


「そのまま殺せばよかったのに」

「それじゃあ、つまんないだろ」

「まあね」


 振り返ると、彼女はやっぱりいた。

 

 今はもう、何て呼べばいいのかわからない。黒フードちゃんなのか、かえでちゃんなのか……判断がつかない。あの時の黒フードちゃんは、間違いなくかえでちゃんだった。


 能力を使っても、人の記憶や人格を完全に消すことはできないのだろうか?

 この答えを知る日は、やってくるのだろうか?


 世の中はわからないことで溢れている。どれだけ考えて推測しても、それはあくまで推測の域を超えることはなく、答えに辿り着くことはない。それをもどかしいと思うかどうかはその人次第だ。


 ちなみに私は、もどかしいとは思わない。考えてもわからないことは、考えても仕方がない。そういうものとして受け止めるようにしている。そう、物事を理解することは不可能なのだ。それならば、ありのままの現実を受け止めるしかないではないか。


「今日は、やけに隙だらけだな」

「殺してくれないかなーと思って、少し考え事をしてた」

「悪いけど、私はそういうのが好きくない」

「好きくないかー」

「真剣勝負がしたい」


 サポーターが処刑代行をする。


 前代未聞のことをこれから行うというのに、緊張感はまるでない。というか、失敗してほしい。まあ、成功する未来しかないんだろうけどね。


「最初から本気でやる? それとも遊ぶ?」

「後者でお願いします」

「意外だなぁ」

「どうせ、本気の方を選んだら必殺技やられて終わりだろ」

「御名答」

「どっちにしろ必殺技をやられて死ぬ。だったら、少しぐらい遊んでから死んだっていいだろ」

「負けるつもりでいるんだ?」


 彼女は回答を迷っている感じだった。しかし、納得のいく答えが見つかったのか、自信をもって言葉を放った。


「死を受け入れている、と言ってくれ」


 涙を流すつもりなんて微塵もない。

 でも、なんだか悲しい気持ちになってしまった。


「これ、やる意味あるのかな」


 意味は元からあるものではない。自ら作り出すものだ。

 自分の中ではもう答えの出ている質問を、彼女に投げかける。


「仕事だろ。余計なことを考えるな」


 彼女なりの答えを期待していたが、聞くことは叶わなかった。


「そうだね……始めよっか」


 私が言葉を放った瞬間に、彼女は攻撃を仕掛けてきた。

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