勇者が敗れた終末異世界を日本に戻りつつ探索する ~サバイバルダークファンタジー~

虹色ステーキ

第1話 継承





ある冬の夜、俺は夢を見た。


真っ暗な空間に見たところ20代位の美女がいる。

どこか昔の知り合いの面影がある女性だ。

光城 穂乃実。こうじょう ほのみ 俺が物心ついた頃からの幼馴染。

懐かしい。という感情と共に悲しみの感情が湧いてくる。


光城 穂乃実は中学3年の時に突然、行方不明になっていた。

当時はテレビや新聞で報道される位に騒ぎになったがそれも昔の話だ。


―――あれから長い月日が流れた。

気が付けば俺はフリーター独身40代の中年だ。


あぁ、また胸が寂寥感で締め付けられる。

穂乃実のいた頃が俺の人生で唯一楽しかった思い出だった。

だから何十年とたった今でもこうして縋るように夢を見てしまうのだろう。


目の前に立つ、すっかり大人びて美女となった穂乃実を見つめる。

しかし、なんだろう。なぜか彼女は中世ファンタジーのような恰好をしていた。


「穂乃実。お前、今どこにいるんだよ?・・・・・・生きているのか?」


「誠!?誠っ!そこにいるのっ!?」


穂乃実が俺の声に反応する。

俺は目の前にいるというのに、穂乃実には俺の姿が見えていなかったようだ。


「お願いっ少しでもいいから顔を見せて!」


穂乃実が必死に俺の方へ手を伸ばす。


「俺はここだ!ここにいるぞ!」


俺も駆け寄り、穂乃実の手を握ろうとするが足が動かない。

かろうじて動く方腕を目一杯、穂乃実の方へ向けて伸ばす。


「家に帰りたい かえりたいよ・・・・・・」


「穂乃実もう少しで届く!頑張れっ」


泣きそうな顔で腕を伸ばす穂乃実にギリギリ指の先が触れた。


「うぐッ!?」


微かに触れ合った指先から光が溢れ出す。

あまりの眩しさに目が焼かれ何も見えなくなる。


『――一部の―――加護―――継承されました。』



「がッ!あっあああぁッッ!」


突然の激しい痛みに強制的にベットから飛び起きる。

機械的な女性の声が聞こえると同時に酷い頭痛に襲われたのだ。


視界が明滅し、頭の中に洪水のように何かが流れ込んでくる。


「ぐうぅうぅ!ぁあっがぁあぁあああ・・・・・!」


痛みと苦しみで脂汗が流れ、動けない状態が続く。


「はぁっはぁ・・・・・・っ」


数十分が経過しただろうか。

痛みが大分収まってきた・・・・・・。


「う・・・・・・み、水・・・・・・」


喉が酷く乾いている。

全身が汗で濡れて不快感が凄い。


ベットから立ち上がる。

身体がふらついた。

台所で蛇口から水道水をがぶ飲みする。


「はぁはぁ・・・・・・っ」


頭が割れそうな、今までに体験したことのない酷い頭痛だった。

大分収まってきたが、まだこめかみにに鈍痛が残っている。


「まいったなぁ。医者にいった方がいいんだろうけど・・・・・・」


健康診断なんて高校の卒業以降いっていない。

もう今年で43歳だ。

身体にガタが来ていてもおかしくはない年である。


「ん・・・・・・?」


渇きを癒し、一息付いたことで頭痛とは別の違和感に気付く。


「なんだ・・・・・・この感覚・・・・・・?」


俺の中で奇妙な感覚が一つ生れていた。

例えるなら、まるで神経がもう一つ増えたかのような異物感。

・・・・・・どうやら本格的に身体の調子がおかしいみたいだ。


一旦ソレを意識するとまるで蠢くように、体の中で血管のように脈打ち始めた。


「うぐ・・・・・・ぉ・・・・・・今度は何だよっ」


身体からごっそりと何かが失われていく感覚に襲われる。

数秒で症状は収まったが軽い倦怠感が残った。


そして突然、俺の目の前にピンポン弾程の大きさの黒い球体が現れた。 



「なんだこれは?」


黒い球体からは重低音でノイズの様な音が流れてくる。


惚けたまま、しばし謎の現象を観察する。

黒い球体の輪郭には微かな揺らぎが見え、周囲の風景が湾曲して見えた。

渦・・・・・・のようになってるのか?


更に視界の端に変なモノが映っている事に気づく。



千錠 誠

階位1


生命力3

魔力9000/18000

筋力5

技量7

精神3

持久力4

速さ3


[スキル]

鑑定1


[固有スキル]

異次元操作

再発生


ホログラムのように表示された形式は、まるでゲームのステータスウインドウのようだ。

触れようと腕を伸ばした拍子にバランスを崩す。


「うぉっ!?」


中空に突然出現していた黒渦に身体が引き寄せられる。

一定の範囲に対し謎の吸引力を発していたようだ。


黒渦から離れようとするものの、引き寄せる力は強力で姿勢が崩れる。


「なんだよくそっ・・・・・・!」


そのまま踏ん張ることもできず、バランスを崩したまま、俺の身体は黒渦に接触してしまった。



一瞬で視界が暗転する。

奇妙な浮遊感―――。


光の明滅。

一瞬だったのか長い時が過ぎたのか。



「―――はッ?」


再び意識が覚醒すると、なぜか俺の目の前には荒野が広がっていた。

裸足の裏から赤茶けた砂の熱が伝わってくる。


どうなっている。

俺のいた1kの部屋が消え失せたんだが?


空は暗緑の大気に覆われ、禍々しい紫雲の隙間から見たことのない惑星がいくつも浮かんでいた。


「ここは・・・・・・地球じゃないのか・・・・・・?」


訳が分からない。

俺はまだ夢を見ているのか?

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