第9話 ごみ屋敷に終止符を

「はぁはぁ。やっと終わった」


「ありがとね。はるくん」


 朝からお昼までぶっ通しで掃除をして今さっきついに終わった。

 これで部屋での平穏が戻る。


「んじゃお昼ご飯にしますか」


「やったぁ~」


 今日も冷夏先輩と俺の分の昼ご飯を作る。

 メニューは炒飯にした。

 お手軽だしそれなりにおいしいから。


「やっぱはるくんの作るご飯めっちゃおいしいね! すぐに結婚できそう」


「俺が結婚するのはなぎちゃんなんでごめんなさい」


「告白してもないのに振ってくるのやめてくんない???」


「いや、口説かれてるのかと思って。先出しで振っておこうかなって」


「なにそれ酷い」


 だってしょうがない。

 先輩が口説いてくるのだからしょうがない。


「まあまあ。早く食べてくださいよ」


「なんだか流されてる気がするな~」


 もちろん流しています。

 だってめんどくさいから。

 綺麗な先輩と話せるのならいいかと思う人間もいるだろうけど俺に限ってはそんなことは無かった。

 なぎちゃんと話したい。


「それよか早く食べて帰ってください。先輩。部屋が綺麗になったんですから」


「そんなに露骨に追い出そうとしなくてもいいじゃんか。そんなにうちの事嫌い?」


「嫌いじゃないです。でも、俺は家ではゆっくりしたいんで」


 嘘ではないけど真実でもない。

 本当はなぎちゃんのことを探しに行きたいだけだ。

 夢で見たせいでさらになぎちゃんに会いたくなった。

 どんなふうに成長してるんだろう。

 可愛くなったかな?

 綺麗になったかな?

 会うのがとてもたのしみになってきた。


「うそでしょ。はるくん幼馴染ちゃんを探そうとしてんでしょ?」


「そうですよ。俺の最優先事項なんで。こっちまで戻ってきたのはあの子に会いたかったからなんでね。一秒でも早く会いたいんですよ。夢をみてより一層そう思いました」


「酷いよね~目の前にこんなに可愛い先輩がいるというのに他の女しか見て無いんだからね~」


「しょうがないですよ。俺にとってはそれだけ大切な思い出で初恋でかけがえのない人なんですから。この初恋をどんな結末であれ終わらせるまでは他の人を見るつもりはありません。いえ、正確には見れません」


 どんな結末であっても。

 俺はずっとあの約束を覚えていた。

 でも、なぎちゃんもそうとは限らない。

 忘れているかもしれない。

 他に好きな人が居たり彼氏がいるのかもしれない。

 それでも、どんな形であってももう一回あって話がしたい。

 今まで何を経験してどんなものを見てきたのか。

 そんな会話をしたい。


「そっか。はるくんって一途なんだね」


「そうでもないですよ。俺は普通です」


「ま、頑張ってね。応援してるからね」


「ありがとうございます」


「またくじけそうになったらおねーさんが慰めてあげるからどんどん頼ってよね」


「その時はお願いします」


 まあ、もうくじけることは無いと思う。

 見つけるまで止まるつもりはない。


「任せといてよ。それじゃあご馳走様! すごくおいしかったよ」


「お粗末様でした。先輩は不摂生とかあんまりしちゃだめですよ。体壊すから」


「わかった~」


 冷夏先輩は軽くそういって出て行った。


「ふぅ、やっと静かになったな。なぎちゃんの手がかりは全くつかめてないしむやみに歩き回っても意味がない。今は学校が始まるのを待つしかないか」


 俺が入学する学校はここらへんでそれなりに偏差値が高い公立高校だ。

 もしかしたらって思って俺はこの学校を受験したけど引っ越しをしているなら望み薄だな。


「それでもそれしか方法がない以上は入学を待つしかないな。もしかしたら誰かがなぎちゃんのことを知ってるかもしれないし。あと数日をつぶすとしますか」


 特にやることは無いけど待つしかない。

 もどかしいな。

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