第3話 清美と 3
あたし、なんともねぇ顔で苦笑いした。「まじで言ってくれるな、明彦。『手近で済ます』なんてよ。まぁ、近親相姦なんてのが一番手近で済ますっちゃ話だっちゃけどな」と言うと、明彦が「でもさ、清美、なんでぼくなんかにこんな秘密の話をするんだ?」って聞く。あれ、なしてだろ?
「あれ、なしてだろ?なんかしら、明彦には話したくなっちゃったっちゃ」
「ぼくらは付き合いがあるってわけじゃないだろ?」
「付き合ってたら、こんな話できねぇべや。別れられちゃうっちゃ。明彦だって、叔父と近親相姦しちゃった女と付き合えねぇべ?」
「いまさらだけど、黙っていればよかったのに。そうじゃないか?」
「これ、胸にしまっとくの無理だべ?明彦とあんまり付き合いねぇから話せるっちゃ」
「それは話したからにはぼくと付き合う意志はないってことの表明?」
「いや、付き合って欲しいって気持ちはあるけど、無理だべ?あたしとじゃあ?」
「ぼくにはよくわかんないよ」
「まぁいいべ。付き合うとかは置いといて、なぁなぁ、お願いあっけど」と腹くくって言ってみた。酔っ払ったせいにすりゃいいや。「清美、なん?」って明彦が言うから、耳っこに口近づけて言ってみた。「な、叔父と近親相姦なんかしちゃった女だけど、あたしを抱いてくんね?」
「はぁ?」ってガン見された。
「だっちゃさ、あたし、叔父とのこと数えなきゃ、男の経験ねぇんだ。『手近で済ます』なんだけっさ、な、抱いてくれ、あたしを」
「お付き合いしていない女の子を?」
「そんでいいんじゃね。叔父とはカウントしねぇんだから、あたし、処女も同然。あたしの処女もらってよ」
ほんとはな、明彦、狙ってたんだ。近親相姦なんて黙ってて、アプローチしてみっぺって思ってた。けどさ、こんな話、黙ってられねぇよ。明彦と同期の真理子先輩の話だと、京都さ帰っちゃった小森雅子先輩と付き合ってたみてぇだけど、今は相手いねぇみてぇ。
真理子先輩もこの前まで狙ってたみてぇだし、じゃあ、抱かれるぐらいはいいんじゃね?わだかまりもねぇみてぇだし、あたしのこと、汚ねぇ女って思われなさそう。あたしもウジウジする性格じゃねぇけどな。でも、明彦に抱かれたら、なんかしら自分が浄化されるみてぇな気がすんだっちゃ。
「う~ん」って腕組みして唸ってる。
「深く考えなくていいっちゃ。抱かれたからって、付き合ってくれなんて脅さねぇから。単に便利なセックスの相手くらいに思っててよ。な?な?頼むから。据え膳食わねぇは、って言うべ?」
「清美、酔ってるでしょ?酔ってなかったらこんなこと言わないよ」
「ちっとばかし酔ってるから言えるんだっちゃ。酔ってなきゃ言い出せねぇべ?な?いいから、いいから、あたしのマンション行っちゃおう。マンションでどうするか、考えりゃいいんだから。あたしのマンションで飲み直そう」
「う~ん」
迷ってるな。フフフ、でも、あたしだって、ブスじゃねぇ、むしろかわいいほうだっちゃ。ちょい背高いけど。色気だってあるべ。魅力なきゃ、さすがに叔父だって姪っこ襲わねぇべ。あらら、あたし、ひどいこと考えてる。
唸ってる明彦を無理やり立たせた。明彦がお勘定払ってくれた。階段登って駿河台の坂に出た。ちょうどタクシーが通りかかったから、手ぇあげて乗る。あたしが先に乗り込んで、明彦の手ぇ引っ張った。「おいおい」って言うから、「往生際が悪い!早く乗れよ」って言った。覚悟したみてぇで、乗り込んで来た。
タクシーの中で明彦に耳打ちした。
「な、明彦、小森先輩と付き合ってた?」って聞く。
「え?」
「真理子さんから聞いたっちゃ。あの二人、怪しいって。付き合ってたべ?あたしもそう言われて見たら、そう思ったっちゃ」
「まあ、付き合ってたよ」
「でも、小森先輩、京都さ帰っちゃったべや」
「いろいろあってさ」
「ふ~ん、そんで、その後は誰とも?付き合ってねぇ?」
「しばらく、女の子とは距離を置こうと思ってさ」
「じゃあ、あたしでちょうどいいべ。付き合わなくていいんだから。便利な存在っちゃ」
「…」
明彦の腕とって、胸押し付けてやった。黒いフレアのひらひらしたミニスカートだったから、太もももピッタリ押し付ける。モジモジしてやがる。フフフ。
あたしのマンションは市川にあっけど。マンションの前で明彦先に降ろして、料金払った。お釣りいいっすって言う。運転手さんがペコリって頭下げた。あたし、明彦の手ぇ引っ張ってエレベーター乗る。5階だ。
あたしの部屋は2LDK。パパが東京さ出張の時に洋室の八畳使う。あたしは和室の六畳。寝相悪いからベッド嫌いだ。リビングのソファーに座ってもらった。あたし、適当にクラッカーとかチーズのつまみ作って、パパのウィスキー拝借。ソファーテーブルにお盆置いて、明彦にウィスキーのロック渡した。明彦の横に座る。ピタッと。あたし、悪い子だな。
「明彦、その間抜けな手をあたしの肩に回すとかせね?」って明彦の手とって肩に回させた。明彦が「やれやれ」って言う。
「小森先輩相手だともっと大胆だったべ?ギュッと抱きしめてキスしたりして?あたしを小森先輩と思えばいいべ」
「清美、あのさぁ…」
「それとも、あたしじゃダメ?魅力ねぇ?」
「いや、魅力あるよ」
「近親相姦してた女だっちゃ?」
「もう、その話やめよう」
「うん、ノーカウントだっちゃ、処女だべ、あたし」
「やれやれ」
「覚悟した?あたしを抱いてくれる?」
「ああ、抱くよ、清美を」
「うれしい!」
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