アンタが?ベテラ?

「本日の受付は終了していますが・・・ベテラさんが望むならクエストの受付をしますが?どうしますか?・・・私としてはこれなんかおすすめで・・・」


「いや、今日はやめておこう。・・・Bランクになる為に時間を使いすぎた。買い溜めしている本がありますので、二、三日は本を読み明かそうかと思っている。」


「そ、そうですか・・・あのーどんな本を?」


 この受付嬢はベテラに気があるのだ。

 年上好き(本当は年下)な上に荒くれ者が多い冒険者の中でベテラは火傷しそうな荒々しいオーラを持ちながら、マナーなど上品さを兼ね備えている点もお嬢様が多い受付嬢達に人気だったのだ。


「魔法運用の効率化による新しい視点、マンマーネの遺作「失われた遺物」、力持ちのパン〜焼きたてパン編〜、貯めている中だとこの三作がオススメ。」


 論文、文学、絵本などジャンル問わずに興味が出た物は手当たり次第、読むのがベテラ流だった。


「・・・・・・」


「それならこの論文も面白いと思いますよ。」


「サティさん。・・・お久しぶりです。・・・魔力の性質による魔法効率差実験ですか・・・この印があるという事は極秘資料ではないですか?」


「問題ないです。ベテラ君もBランクなので、このランクの資料なら読めます。読み方は・・・説明しなくて大丈夫ですね。」


 本の闇鍋みたいなジャンルミックスに思考停止してしまった受付嬢の代わりに奥から現れた女性が黄色の印が付いた資料を渡してきた。


 ギルド資料にはBランク以上しか読めない極秘資料があった。

 勿論、極秘資料の中にはBランクでも読めない物も存在しているが、今回の物は問題なかった。


 極秘資料を保管場所外で読んでいいのか?と思うだろうが、当然、盗難、盗み見などの防犯対策していた。

 その為、ベテラの様に家に持ち帰る事も出来るのだ。


「サティ副ギルド長・・・」


「ダメですよ。・・・ベテラ君が質問に答えてくれたのに何も返答しないなんて失礼ですよ。」


「申し訳ございません。ベテラさん。」


 サティに指摘されてすぐに思考を取り戻してベテラに謝罪したのは教育が行き届いている事が見てとれた。


「構いませんよ。自分も貴方向けの本をオススメすべきでした。・・・・・」


「な、なんでしょうか?」


 ジッと目を見られて頬を赤くして恥ずかしがる受付嬢を無視して、ベテラは心を見透かす様に見ていた。


「・・・歌姫とゴブリンの恋。うん、これがオススメですね。溜めている本ではないですが、恋愛小説の中でも悲恋感が強いものです。・・・明日にでも渡します。」


「え?」


 受付嬢の好みは恋愛小説の中でも人間と異種族の悲恋がドストライクの物だった。


「なんで私の好みを・・・」


「目を見れば分かります。俺・・・人を見る目はあるので。」


 自分の好みを目を見られただけでピンポイントで当てられた事に恐怖すると共にその能力の高さに興奮していた。


 ベテラはそう言うとサティから渡された資料を持ってギルドを後にしようとしていたが・・・


「待ちなさい。」


「邪魔。・・・何?」


 面白そうな資料も貰って、ようやく溜め込んだ本も読めるとあって、表情に出てないが、テンションが上がっていた。

 そこに如何にもな時間を取らされる女の子四人がギルドの扉に立ち塞がってるとあって一気に不機嫌になっていた。


「ふーん、アンタがベテラ・・・ね。無愛想なオッサンって感じね。」


「ナタカ・・・可哀想・・・・・・」


「ステラお婆ちゃんはなんで?こんな奴を?」


「何を言っているか?分からんが、話がないなら退け。俺は急いでいるんだ。お前らのようなガキとは違う。」


「「「「は?」」」」


 低身長を気にしている女子達は無神経なベテラの発言にブチギレていた。


「私達はアンタより先輩よ。なら、先輩に対してそんな態度で良いと思っているのかな?」


「先輩・・・ね。」


「チビだからって舐めているなら、殺すぞ。」


 2メートル越えの身長を持つベテラがまた、低身長を理由に見下していると思い、殺気を漏れ出す程にキレ始めていた。


「小さいからじゃない。純粋にお前たちみたいな初対面の雑魚を敬う気持ちになれないと言っているんだ。」


「はぁ?舐めるのも大概に!」


「はい!そこまで。ベテラ君も本音は隠しておくのも冒険者としての基本よ。」


 これ以上放置していたら殺傷沙汰になりそうだと判断したサティが無理矢理間に入って止めた。


「そうですか・・・それはすみません。ただ、こんな子らと同ランクになってホッとした事を後悔していただけです。」


「あ、アンタね!」


 完全に舐められていると激怒した女の子達はサティに静止を無視して、殴り掛かろうとしたが、さっきまでそこにいたベテラは何処にもいなかった。


「ほら、こんな手品に引っ掛かる。四人もいるんだから。もう少し目の使い方を覚えることだな。」


「テ、テメェ!」


「はい、落ち着きなさい。マドラル。」


「サティさんでも!」


「貴方達もね。アイアンメイデンの皆。」


 副ギルド長に本気で止められて萎縮した四人は渋々命令に従った。


「はぁ・・・それでなんで貴女達はベテラ君に絡んだのよ。・・・貴女達が無駄に挑発したり、喧嘩売るような行為はしない事くらい分かっているから。」


「・・・・・・実は・・・」


 アイアンメイデンのリーダーがベテラに絡んだ理由を話し出した。

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