エウレカ!
黒冬如庵
エウレカ!1
男は悩んでいた。懊悩していた。迷っていた。
いいのかオレ、本当にいいのかオレ、間違いはないかオレ、見落としはないかオレ。脳髄を振り絞り、あまり多くない大脳皮質のしわに少なからず影響が出そうになるほど思考に沈む。
眼の前には山吹色な、一つの、だが信じきれない解決手段。
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それは男をどん底に突き落とすある一言からはじまった。
「死にますよ?」
メガネが似合う、細面のナイスガイ。いかにも高偏差値ですがウェーイとは程遠い人生を送ってきましたと、雰囲気で語る男が無表情で告げた。
「……死にますか」
衝撃、圧倒的な衝撃。喉が干上がり、呼吸が荒くなる。大量に分泌された唾液を飲み込み、乾ききった唇をひと舐めする。
「ええ、このままだと長くないです。指が欠け、目を失い、やがて両足さえ失って死に至るでしょう」
ナイスガイに容赦はない。信ずるもののために時に人はかくまで冷酷になれるという見本。
具体的な死に様をはっきりと提示され、男の動悸は早くなる。64ビート。目眩がする。
「助けて……助けてください!なにか手立てはあるのでしょう!?」
すがるしかなかった。なりふり構わず懇願する。犬の糞を踏めと言われれば地球の裏側まで踏み抜き、靴を磨けと言われれば舌で舐め取るであろう壮絶な覚悟。
「……」
ナイスガイが男の覚悟の真贋を見極めるかの如く間を置く。メガネは白い反射光で覆われナイスガイの瞳を隠す。
「無論です。ですが私の指示に従っていただきます。決して楽ではありませんよ?投げ出す方も正直相当いらっしゃいます」
「それでも……それでもやります!やってみせます!」
男はすでに涙目。生き延びるためなら命を失ってもいいと考えるほど追い詰められていた。
思えば怠惰に流される意味のない人生だった。目標を掲げ、やり遂げることのできる人間を横目で見ながら嫉むだけ。そんな男に初めて突きつけられた逃れようのない絶望。
今まさに覚醒の刻!
立てよオレ、オレよ立て!この衝撃を怒りに変えて聖戦を完遂するのだ!
かくして、男の戦いの幕が上がった。
つらい日々。終わりの見えぬ戦い。襲い来る堕落の誘惑。堕落はラテン美女の如く甘く招く。うーん、セニョリータ。
それでも抗った。戦い続けた。硫黄島の日本兵が地下にこもるように。レニングラードを死守するソ連兵のように。
だが、ついに堤防に小さな穴があいた。飽いてしまった。
「オレは……嫌だ」
そう、飽いてしまったのだ。
今必要なのは劇的変化。パラダイム変化ともいえる新たなるスキーム。
男は藁にもすがる思いで賢者に知恵を求めることにした。
そして。
世界を知る叡智の賢者により、一つの解が示された。
それは、男の上っ面知識と萎縮した大脳では思いもつかぬ鬼手だった。まさかこれを……。
悩んだ。
だが、決断。うーん、アニメンタリー。
ついに男を屈服させようと大攻勢を仕掛けてきた"ソレ"に、容赦なく鬼手を投入する。
そして、意を決して実食!
酸っぱさの奔流の中にきらめく甘みの優しさ。しっとりと素材をまとめながらも決して水っぽくはない。まさに奇跡の粉!
「……エウレカ!神よ、私は新たな食の可能性を見つけました!」
生野菜サラダの無味に苦しんだ男はもういなかった。
"すし◯こ”
それはダイエットの救世主。生野菜サラダにふりかけて和えるだけで素敵サラダに大変身。
男は酸っぱさと感動に咽びながら、大嫌いだった生野菜を掻き込んでいった。
END
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タマ◯イ酢株式会社様のすし◯こは万能酸っぱい系調味料です。有◯かなさんの推しに納得です。
カット野菜サラダにすし◯こをたっぷりふりかけ、しばらく待ってから、少しごまドレッシングを足して和えると酢の物系素敵サラダになります。
ネットに紹介してくださった偉大な先達に感謝を。
なお、振りかける量はお好みで調節してください。
結構酸っぱいよ?
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