第4話 永星家
「ただいまー」日が沈んだころ、僕は箱を持って自分の家に帰ってきた。
「おかえりなさい、月下さん。もう晩御飯出来てるわよ」と母さんが出迎えた。
「ごめんね、母さん、遅くなっちゃって」と言って箱を見せた。「これを部屋に持って行ってからご飯を食べるよ」
「あーっ、お兄ちゃんまた腕章つけて外に出てる!」と、妹の
あ、すっかり忘れてた……。思わず左腕の腕章を見る。「恥ずかしいと言うのは酷いなぁ」
母の夕子は僕の継母だ。そのためか母さんは僕の事を今でも「さん」付けしている。実母の
茜は現在、中学三年生。僕と同じ樫木高校への入学を目指して勉強中だ。
「やっと帰って来たのか、月下。もう七時だぞ、別に門限があるわけではないが、晩御飯に間に合わんようなら連絡を入れなさい」と、父さん。
「どうせまたサバゲー部連中と遊んでたんだろう? その箱の中身は新しいエアガンかなんかじゃないのか?」
「そうじゃないよ、父さん。今日は不登校の生徒に会ってきたんだ。まずは親睦のためにゲームをやってきただけだよ」まぁ、そのゲームが曲者だったけど……。
「そうよ、あなた。月下さんは風紀委員の仕事をやってきたのよ。ちゃんと腕章していたし」と母さんが擁護してくれる。
「まぁ、今日はそうかもしれんが、もう品のない連中と絡むのはやめて勉学に励みなさい」
それに対して「風紀委員長を務めているだけでなく、高一模試でも12位を取った僕に何か問題があるというの?」と返した。
「その模試の成績は、お前の得意な記憶術のおかげだろう? だがそれだけではいけない。もしその記憶術が使えなくなったらどうする? その時に大切なのは、努力する習慣を身につけているかどうかなんだ」
「えーっ? わたしはお兄ちゃんの記憶術、すごいと思うけど」と、茜が割って入った。
「わかったよ。いろいろ努力するから」と適当に答えて、二階の自分の部屋へと上がった。
ふと部屋の本棚に飾ってある写真をみる。遥母さんと幼い僕とが写った写真だ。
その写真の背景の看板には『樫高祭』と書いてある。遥母さんが樫木高校のOGだったので、その文化祭である樫高祭に連れていってもらったのだ。
もうすぐ今年の樫高祭が近い。とりあえず来週の日曜日は大丈夫だけど、それ以降になると打ち合せ等で忙しくなるだろう。なにせ風紀委員長なんだから。
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