💌第6章 第34話:恋と選挙の境界線

──感情と戦略の交差点で恋が浮上する構成の物語


選挙が終わって一週間。


静ヶ丘学園は、ようやく普段の空気を取り戻しつつあった。


でも──颯太には、まだ“やり残していたこと”があった。


「メティス。あのさ……“恋”って、どう扱えばいい?」


突然の質問に、端末がしばらく沈黙する。


『……失礼ですが、“戦略的質問”でしょうか? それとも“感情的な確認”でしょうか?』


「……どっちも、ちょっとあるかも」


相手は、光理だった。

陣営の参謀としてずっと支えてくれてきた彼女。

冷静で、的確で、時に鋭すぎる言葉で、自分を引き上げてくれた。


選挙期間中、ふとした瞬間に目が合ったり、

言葉がかぶって笑ったり──

それだけのことに、理由もなく胸が高鳴っていた。


『“恋愛感情”は、選挙活動において最も“非効率な感情要素”です。

しかし、“人間性を帯びた存在”としての信頼には寄与する場合もあります』


「つまり、“選挙では使えるかもしれない”けど、“今はもう関係ない”ってことだな」


『はい。今は──“選挙”ではなく、“あなたの人生”の時間です』


その放課後、颯太は屋上へ向かった。

そこには、夕陽を背に、光理が立っていた。


「来ると思ったよ。…“メティスのロジック”からして」


「……バレてるのかよ」


しばらく風だけが吹いていた。


そして、光理が口を開いた。


「ねえ、選挙のとき──

私、何回くらい君のこと、“いいな”って思ったと思う?」


「え……何回?」


「27回。数えてた。全部、メティスに記録させた」


「ええぇ!?」


「……うそうそ。でも、それくらいは、思ってたよ」


静かに、頬が熱くなる。


「お前、……そういうのも、戦略だった?」


「最初は、ちょっとだけ。でも途中からは、ちょっとずつ違ってた。

君が、“勝とう”じゃなくて、“届かせよう”って言い始めたとき。

……そのとき、本当に“好き”になった」


颯太は、風の音に紛れて、ようやく声を出した。


「じゃあ……もし次の選挙で、

“誰かと一緒に立ってください”って言われたら──

そのとき、隣にいてくれるか?」


光理は、ほんの少しだけ目を見開いて、微笑んだ。


「……それは、“恋の公約”ってやつ?」


「いや、“未来の作戦”だよ」


夕日が差し込むなか、二人は肩を並べた。


それは、“戦略”でも、“票”でもなく──

ただ一人の人間が、一人の人間に向けて、心を預けた瞬間だった。


メティスが静かに記録を残した。


『記録:選挙活動外における人間感情の交差。

 分類:恋愛型共鳴現象──“戦略外の言葉”により関係性が深化』


『結論:感情は、選挙を超える』


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