ティーアの考察
旅館から出た俺達は一度自分達の家に戻ることにする。突然宿泊を決めたので着替えがないし、皆にも伝えていない。
そういった理由で家に戻ると、ティーアがリビングで紅茶を飲んでいた。
「あら?お帰りなさい。」
「あぁ。ただいま。」
「た、ただいまぁ…。」
「あら?魔力が混ざってない。」
その発言にアイリスの肩が跳ねる。
「凄いな。流石は妖精女王。」
俺の言葉をスルーして、ティーアはアイリスの手を握ってリビングから出ていってしまう。
俺は首をかしげながらそれを見て、自分の部屋へと戻るのだった。
「どう言うことですか!?」
部屋に連れ込まれた私はベッドの上に思わず正座してしまう。
「えっと…まだ無理そうです。私じゃなく、りゅーとさんが…。」
私の言葉に察してくれたのか、彼女は一つため息をついて隣に座った。
「流石にお母様と比べれば貴女は子供体型と言えますしね。母性も足りないからそう言った魅力も不足してます。」
「酷い!成長止まっちゃったのに!」
不老のスキルは全盛期の状態で体の成長が止まってしまう。私も背丈の成長は止まり、体重も変わらなくなったので察してしまった。
「ふむ。勘違いがあるようですね。不老のスキルは肉体年齢を止めるだけですよ。鍛えれば筋力は上がりますし、多少の体型の変化はあります。まぁそれはいいとして、確かに貴女はお母様に比べれば色々小さいですが、一般的に見ればスタイルは良い方です。比べる相手を間違えてるかと。」
「でも裸になったら絶対比較される…。仕方ないとはいえちょっと複雑…。」
「まぁそれもまだまだ先でしょうし、お父様がそこまで慎重なのも理由があるのでしょう。」
そういえばと話された内容を頭の中でまとめて彼女に話した。
「ふむ…。体の中に大量の魔力…ですか。」
話を聞いて彼女は顎に手を当てて考え始める。
「ティーアは魔力検知が得意だよね?側にいてなにか気づかなかったの?」
「お父様の場合は魔力が体を包んでるように見えるんです。だから体内の魔力を検知できません。並大抵の魔法では彼に届くこと無く霧散する。あの壊れた性能のコートが無くても、お父様は魔法では傷を負いません。」
「つまり?」
「汗に含まれた濃厚な魔力が空気に溶けて彼をシールドのように包んでるんでしょう。そのシールドとあのコート。お父様の無敵の一端が見えて、私としては少し安心しました。お父様の魔力は聖と闇。この二つは本来相反するものです。その二つが混ざった前例がないのでなんとも言えませんが、確かに何かしらの副作用があってもおかしくないかもしれませんね。それを体内に注がれれば本来の魔力が変質します。お母様は確かに変わった魔力を持っていました。本来聖属性にしか回復は出来ませんが、傷を癒す水魔法、魔族にも有効な氷魔法、本来闇魔法に出来ないはずの空間転移魔法。これらは魔力の変質から起こったものと考えられます。私はてっきり魔族と人間の子供だから特殊な魔力を持っているかと思っていたので追求しなかったんですよね。」
なる程と私も納得する。りゅーとさんはきっとこれも危惧してるんだろう。
「魔力って体内から生成されますよね?」
「ええ。」
私の問いかけに彼女は頷く。
「中毒症状ってもしかして…。」
「気づきました?一度変異した魔力は体に馴染んでしまう。でも同じ魔力は生成出来ないんですよね。お母様本人は水の魔力しか生成出来ないのに、魔法を使うと聖と闇の魔力を強制的に使わされちゃう。つまり中毒症状ではなく欠乏症状なんですよ。足りないから欲しい。もっと欲しくて耐えられなくなる。中毒症状とも言えますが、似て非なるものですね。直接体内に入れないと結局足りないので避妊も出来ない。勿論本来はこうはならないんです。誰かの魔力が体内に入ったくらいで魔力の変質は起こらない。」
「じゃあ何で起こっちゃうの?」
疑問を聞いてティーアはしばらく考えるように目を閉じる。小一時間辛抱強く待つとティーアが口を開いた。
「あくまで予測ですよ?確証はありません。魔力量には個人差があります。増えることは本来ありません。どんなに魔法を使おうと、上限値は変わらない。多少魔法の熟練度が上がれば消費魔力は押さえれますが、幼少期に自らの魔力の限界を知るのが基本です。貴女もそうでしょう?」
その質問に私は頬をかく。彼女はその仕草に呆れた顔をした。
「言い訳させて?」
「いいでしょう。」
「私が子供の時によくある魔法を倒れるまで使うっていうのはやったんだけど、いくらやっても魔力尽きなかったの。だから限界を知らないんだよね。」
私の言葉に目を見開き、彼女は沈黙する。
「だとしたら…。私の推測ですが貴女はお母様のようにはならないかもしれません。」
「どういうこと??」
「あくまで予想ですよ?たぶん本来の魔力量以上の魔力を体に取り込むと魔力量の上限が変わってしまうんですよ。お母様も個人とは思えない魔力量でした。魔法部隊1個中隊を1人で賄うレベルです。あの以上な魔力量がお父様から借り受けたものと考えれば納得できます。でもそんな魔力は個人では生成できない。さっき欠乏症状の話をしましたが、魔力量に関しても欠乏していたんでしょう。ですが貴女には無尽蔵の魔力があるようです。だから上限は変わらないかもしれない。貴女の魔力は複数属性の複合。元々混ざっている分、馴染むのは早いかもしれません。お母様よりは症状も小さく済む可能性があると考えます。まぁあくまで予測なので、お父様には私から話しましょう。そろそろ時間もありませんし。」
ティーアがそういうとノックの音がする。
「ほら、デートに行ってらっしゃいな。私は少し分体と感覚を共有して、前ティターニアと話をしてきます。」
「うん。わかった!行ってきます!」
どうせ考えても私には分からないことだ。後はティーアに任せようと私は部屋を出るのだった。
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