イアン・マシューズとルイーズ・バークは、美貌のせいで苦労した者同士の母たちが投合し、婚約者となった間柄だ。互いに互いが「面倒よけの口実」に過ぎず、故に恋人のような振る舞いなどしたことがないし、5年も離れることとなってもまるで名残惜しさはなく、気にもならなかったのだが。再会した瞬間、始まってしまう!
ルイーズさんに対するイアンくんの心の距離の遠さが酷い! 彼女を愛してなどいないことが言動すべてからわかってしまうのですから。その悪意のなさがまた酷いのですが、ルイーズさんも概ね同様ですから問題なし? まあ、仕方ないことなのです。なにせ親が決めた婚約者同士で、それもこれも面倒よけのためと擦り込まれてきたふたりですしね。
でも、だからこそ。
そこまで積み上げられてきた「都合」が再会によって「予感」へと姿を変える、そのドラマチック過ぎるどんでん返しが最高に気持ちよく決まるのですよ!
キャラクターがいいのはもちろんのこと、構成が実にすばらしい。さくっと読めるのに満足感激高です!
(「甘いか辛いか片思い」4選/文=髙橋剛)