#04ー3 全員、キャラが濃すぎる
その先にあったのは、まるで舞台装置のように整えられた空間だった。
真紅の絨毯、金縁の家具。
中央の壁に設置された巨大なスクリーンが、静かにノイズを払いながら映像を映し出す。
そこに映っているのは、ひとりの女性。
——ウェンルー。
柔らかな物腰、長い髪を後ろで流し、穏やかな微笑みを浮かべているその顔は、
先程の"ねぇちゃん"と同じ顔。
だがその手元には、まるで玉座のような椅子と、銀色のティーカップ。
スクリーン前に並ぶのは、
どれも同じ顔。無表情で、スラリとした体型。
それぞれ背丈は違うが、均整の取れた動きで画面の中でも同時に一歩、前に出る。
「……っげぇ、全員同じ顔だ……!」
ジョシュが思わず声を漏らす。
額に嫌な汗がにじむ。
「よくまぁそこまで整えましたね……。たいした執着です。」
山田は低く呟く。
ノースは鼻を鳴らし、にやっと笑う。
「ふん。ニセモンなんかにゃ騙されねぇよ。顔が同じでも、匂いが違ぇんだよ」
マチェーテを片手に、軽く足を踏み鳴らす。
スクリーンの中のウェンルーは笑みを崩さずに言った。
「ようこそ。 “双翼”さん。そして…… “私の顔を見て逃げ出さなかった坊やも」
視線が、まるでカメラ越しにジョシュを見据えていた。
「え、俺……え、俺のこと……!??」
ジョシュがびくっとする。
「……あの屋台の時から見てたよ。面白いのがいるなって」
ジョシュがぐるっと山田とノースを見るが、どちらも一歩も引かない。
山田が端末を掲げて冷静に言った。
「施設の記録と証拠は、すでに転送済みです。
あとは、貴女の“心臓”を止めるだけ」
「ふふ……それは簡単にはいかないと思うよ」
その言葉と共に、スクリーンの向こうで“姉妹たち”が、すっと武器を抜く。
そして現実世界——彼らの目の前でも、同じ三人のアサシンが音もなく現れた。
整形された、同じ顔。
三人三様の体格、しかし完璧に揃った動き。
無表情。
だが、ただの整形人形ではない。そこに漂うのは、訓練された殺意だ。
それぞれの武器が光を受け、鈍く光る。
——一人は、長く伸びた鎖鎌を手に、腕をしならせながらゆらりと揺らす。
——一人は、重厚な青龍刀を片手に、静かに呼吸を整えている。
——もう一人は、かつてノースと渡り合った“あの女”と同じ、二本の柳葉刀を構えていた。
「……なるほど、顔は同じでも、個性は違うと」
山田が冷静に観察する。
「っげぇ……しかも全員、なんか“強キャラの所作”してんじゃん……」
ジョシュは額に汗を滲ませながら、じりじりと後退した。
三人は完全にフォーメーションを組み、目の前の“敵”たちを値踏みするように見据えていた。
——カラン。
鎖が床を擦り、鋭い金属音がロビーに響いた。
「……いいね。ちゃんと“始まる”感じしてきたじゃん」
ノースがマチェーテを肩に担ぎ、もう片方の手でジョシュからショットガンを雑に取り上げる。
「なぁ山田? どれやる?」
山田は一拍置き、鋭く返す。
「……そんな余裕、与えてくれますかね?」
「俺はどれでもいいけど、あの柳葉刀のねーちゃん……やっぱ動き似てんのかな〜。ちょっと楽しみだなぁ〜」
「……遊びすぎないように」
アサシンたちは、会話を遮ることなく、じわりと間合いを詰めてくる。
無言のまま。
一切の感情も見せず、まるでプログラムされたように完璧な足運びで。
恐らくジョシュを見逃してくれるような慈悲は、ないだろう。
山田は軽く振り向いたまま、FX-05をためらいなくジョシュに差し出した。
「……銃は、撃てますね。これも、お願いします」
「えっ、いやいやいや!?無理無理!自信ねぇーです—」
「狙わなくていい。ただ俺たちに当てなければ十分です。」
「それが1番難しいじゃん……」
ジョシュが絶望しながらライフルを抱きしめている間に、山田はおもむろに
自分のジャケットの前をつかんで無駄のない動作でボタンを外し、腕を抜いていく。
シャツ越しに浮かぶ筋肉の陰影が露わになっていく。
脱いだジャケットは、床に音もなく落ちた。
代わりに露出したのは——
白シャツの上から、ぴたりと身体に密着するショルダーホルスター。
胸のラインを横に通るベルトが、
彼の鍛え抜かれた胸板としなやかな肩をくっきりと強調している。
シャツのボタンは、上から二つほど外れていて、
そこから覗く鎖骨と胸筋が、汗でほんのりと艶を帯びていた。
「ちょ……なんで脱ぐんすか?!」
ジョシュが口元を押さえて後退りする。
「動きずらいかと。」
「だーかーら〜……誘ってるって思われても仕方ねぇから!!」
ノースが呆れ気味に言いながらも、ちゃんと目で追ってる。
山田はそんな二人の反応に目もくれず、
ホルスターの脇に固定されていたナイフのグリップに指をかけ、静かに引き抜いた。
金属音を立てて抜き放たれたアーミーナイフ。
逆手に構えたその刃先が、ライティングに反射して淡く光る。
山田の身体が、戦うためだけの“兵器”に変わる——その瞬間だった。
彼はゆっくりと腰を落とし、完全に殺気を纏った姿勢で構える。
ホルスターが胸の下でぴたりと張り、
そのラインに添って、胸筋が自然と盛り上がる。
その一挙手一投足から滲み出る色気と殺意に、
アサシン三人がほんの一瞬、わずかに間合いを測り直したようにさえ見えた。
——戦いの、真の幕が落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます