第2話 滑空

 異能者たちは基本的に栄光をつかむことなく、戦い続ける義務を負う。

 義務を負うことこそが、彼ら異能者が国家にバレたときに生き残ることのできる道の一つであった。



 国家と諜報戦における殉教者達 1957年出版からの引用

________


 昔に空を飛びたいと夢物語を言えば、無理だと説得されるか......嘲笑されるかのどちらかだっただろう。もちろん、今でいえば、飛行船などの手段が存在しているが.......少し前までは空を飛ぶのは不可能だった。

「す、すごい!?」


 ーーそして、夢が現実になったとしても夢を見せてもらえなかった王女がいた。


「空を飛んでる!!」

 今日までの、王女はまだ安全性が低いとして飛行船に乗ることは許可されていなかった。どれだけ夢は空を飛ぶことです。と発言してもそれが叶うことはなかった。

 叶わなかった、なのに女王がどれだけ望んでも手に入らなかった空からの光景を今、見られたのだから......そりゃあ嬉しいだろう。




 だが、こうも思ってしまう。


「現金なことだ」

 ......だが、よかった。「王女の暗殺を目的にして事故が起きたわけではないだろう、ただの......よくある鉄道の事故でしかない」

 きっと私と王女が、外国の地で孤立してしまったわけではないはずだ。もしも、これがイギリスによる王女を狙った暗殺だった場合なら、もうすでに私はこの世にいないだろう。

 更に付け加えれば、今ここに王女の生死の確認をするための人員がきてない時点で暗殺の可能性は限りなく低い......はずだ。


 そうして空中を滑空していた時、聞こえたのは彼の唐突な発言だった。

「あそこの、フェリーに乗りましょう!!」

「......え?」


 彼女が指を差す方向にはフォース湾を航行中の、恐らくクイーンズフェリーに向かっているであろうフェリーが存在していた。


「マジで、言ってるのか?」

 おいおい、更に問題を外国で引き起こしてしまうのは......と一旦は思ったものの、私の異能では滑空はできるものの空を飛ぶことはできない。このままだと、墜落してしまう可能性もあった。

 そうなってしまったら、もちろん、滑空できずに落下するよりはましだが......王女が溺死してしまう可能性があった。


「頼みます、フェリーに乗りたいです!!」

 ......決して、決して王女に懇願されたからフェリーに乗るのではない、ないのだ。


「分かった、フェリーに乗ろう」

「いいんですか!?」


 結局この時の私はフェリーに乗ることを選択した。だが、この時の私は正直言ってパニックになっていた。

 だからこそ、王女が指さした、フェリーの異様な様子に気付くこともなかったし......この後、王女の命を危機にさらしてしまったのだろう。そして、フェリーに乗る選択が明らかに間違いだったことは、この後すぐにフェリーの中で命の危機にさらされることで、証明されることになったのだ......。




「あれ.......誰もいませんね、石はありますが。美術館のものを移送するための船だったんでしょうか?」




「.......なんで?」


その死体はここには存在してはいけないはずのものだった。

























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