異能者たちの戦場は、暗闇の中で

チーズ

第1話 護衛開始

 時計のように世界は回っている。

 自分がいなくても、自分がいても、世界中の時計は回る。


 その針の動きには、関わることがないそう思っていた。






 .......だがすでに、あの時間、あの年には時計の針は既に狂い始めていた。

______





 爆炎が私たちの前に広がっている。

 新しくサウスカロライナ植民地から、英本土に導入された鉄道ユニオン・パシフィック鉄道4000形蒸気機関車はもはや原型など残っていなかった。


「しっかりしてください!!」


 私の目の前では、私が忠誠を向ける対象でもあり、アイスランドの女王である。ヘッケラーの命がつきようとしていた。

「だいじょ......うぶです、早く......ここからにげて」


「ヘッケラー!!」


 まるで、演劇の悲劇のようではあったが......少なくとも自分にとっては受け入れられるはずもない.......ここは、私にとって都合が悪いことに現実であった。

 もし、私がいるのが童話の世界ならば私は騎士なのだろうが、ここは現実である。

 現代の1931年に騎士は存在しておらず。



 私は、彼女のボディーガードの一人でしかなかった。


「あなたがいないと、アイスランドは終わってしまうんですよ!?」



 なにかが破裂したであろう、爆音が後方車両のどこかから聞こえた。もうこの車両

 にとどまることができる時間は残されていない。


「私なんておいてあなただけでもーー」

「ちょっと失礼!!」


 こんな、ことはイギリス......外国ではしたくないのだが、彼女を失う方がリスクだ、この後、危険な橋を渡る必要が出てくるだろうが、彼女を救えるかもしれない。


「え....?」

 彼女を持ち上げる。

「まって、なにをするつもりでーーーー」

 本当の......国民にとって大事な女王を、私がお姫様抱っこすることになるとは数日前には、想像もしてなかった。


「しっかりつかまってて下さいね」

「ーー!?」



 私は彼女をお姫様抱っこしたまま、列車の客車から飛び降りた。


 ここがスコットランドに存在しているフォース橋であることを考えれば、当然のことだが、下にはフォース湾が存在している。


 だが、完全には落下の衝撃を和らげてはくれないだろう。そのまま溺れて死ぬ未来が簡単に想像できる。......実際私が、ただの人であれば想像の通りになっていたはずだ。


「よし......しっかり起動してるな」

「な、あなにがしっかり!?起動して?」




__

 腕時計には針がしこまれていて......この針を皮膚に刺すことで、君の体内にあるシンドロームを一時的に異常なほど繁殖させることができる。

 そうすれば、一時的に体の変化がおこるはずだ.......君の場合ーーーーー


__


 残念なことだが、私には女王に説明する余裕は存在していなかった。


 私の脊柱が、女王を包み込むように変形していく。

「ぅえっ......?」


 この光景を見る人がいれば、いきなり羽が生えて鳥になったように見えたのかもしれないし、天使が降臨したようにも見えるかもしれない。

 私の場合は北欧の神話に出てくるフギンとムニンのような......と表現するだろう。




 だが、残念なことに彼女......いや、女王はそんな表現はしなかった。


「ーーーーー化け物......?」







 酷い言い草だ。



____

 ーー背骨の部分だけが、進化することになる。

 分かってると思うが、イギリスにいるであろう。ロンドンの特殊事件調査係にはバレるな、彼らからすれば。組織の理念から考えてとても認められるはずがないシンドロームの使用法だ。まあ、完全な化け物にならないように一部だけ化け物になるなんて、.......我々から考えても大分狂気的だ。

 こうも狂気的だと、バレてしまったとき非難されても仕方ないだろう?


 .......もう一度だけ話させてもらう、ロンドンの特殊事件調査係にはバレるな。

 君の異能の露呈は、イギリス国民の敵意をアイスランドに向ける原因になるかもしれない。





 1931年、5月11日 護衛任務にあたっての通達。
































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