第1話(後編)—「後宮人事と追跡の行き先」
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🟦『エルデン公爵家の末子』(第十一章第1話)の【登場人物】です。
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🟦『エルデン公爵家の末子』(第十一章第1話)【作品概要】です。
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🟦『エルデン公爵家の末子』エクリプス大陸の北部の紹介
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前書き
アレクは後宮の役割分担を正式に発表し、取り締まり・外交・教育・情報の4機能を明確化して指揮系統を一本化する。夫人たちはそれぞれの強みを活かす位置につき、組織は次の行動に移れる形になる。同時にカシムの所在に関する新情報が出て、行き先はエクリプスの外、アウロラニア方面へと絞られていく。
本文
4人はこうなったら、アレクとヤオ・ジンの行為を徹底的に邪魔してやろうと決心し、アレクを色仕掛けで誘惑してやろうと決めた。
マリア・ファルガス (42歳)が秘密を皆にばらした。
「カシム・ファルガスは、アウロラニア大陸の東にあるクバナ村にいるわ」
第二夫人:ソフィア・ファルガス (35歳)も追随する。
「アウロラニア大陸と言うと、アレク様たちがエクリプス大陸と呼んでいる大陸の東にある大陸よね」
第三夫人:ラミナ・ファルガス (28歳)も重ねて言いつのる。
「そうよ。私も、カシム・ファルガスに連れられてイラヤ連合王国の首都スアパまでは行ったことがあるわ。クバナ村はそのずっとずっと東の方よね」
第四夫人:エリザ・ファルガス (22歳)が不安そうに言う。
「誘惑すると言っても、私には出来そうもないわ」
マリア・ファルガス がヒントを出す。
「カシム・ファルガスの行方を少しずつ教えて、その情報を餌に誘惑するのよ」
更に、マリア・ファルガス はけしかけた。
「クリムゾンレイン列島の南東端にある大きな島の名前は「カリスタ島」と言うのよ。4人の中でラミナ・ファルガス (28歳)が一番美人よ。貴方がアレクを誘惑しなさい。私達がサポートするわ」
ラミナ・ファルガスが聞く。
「誘惑したあとはどうするの?カシム・ファルガスに連絡して殺させるの?」
「アレクとカシム・ファルガスを争わせて強い方に付くのよ」とマリア・ファルガス。
ラミナ・ファルガスは決心した。
「何とかやってみるわ」
1144年3月4日午前11時。セイラ族本拠都市ヴェノマリス:アレク邸
アレクは、女性たちを庁堂「会議室兼大食堂」に呼び、後宮の人事を言い渡した。
「ルカ帝国公爵兼ヴォルテックス島次期国王として、後宮の人事を発表する。まだ未成年の身なので正室や側室は置かない。全員を
第一側女:マリア・ファルガス (42歳)「後宮の取り締まり担当」
第二側女:ヤオ・ジン(38歳)「アレクの格闘技教授担当」
第三側女:ソフィア・ファルガス (35歳)「外交担当」
第四側女:エリザ・ファルガス (22歳)「教育担当」
第五側女:ラミナ・ファルガス (28歳)「諜報担当」
以上である。
アレクが発表した後宮の人事は、ヴェノマリスに集められた夫人たちに激しい波紋を広げた。彼の淡々とした口調とは裏腹に、その内容は各人の心の奥深くに様々な感情を呼び起こすこととなった。
第一側女に指名されたマリア・ファルガスの顔には、最初こそ驚きの表情が浮かんだが、その後すぐに微かな笑みが広がった。
夫のカシム・ファルガスが失踪してから、彼女は家庭内での支配力を維持しつつも、内心では不安と孤独を抱えていた。
しかし、アレクの判断で後宮の取り締まり担当として第一側女の地位を与えられたことは、彼女にとって大きな転機となった。年齢や経験を重視されていると感じ、これが単なる側女の地位を超えたものだと確信した。
「正室…もしかしたら、王妃にさえなれるかもしれない……」彼女の心に一瞬浮かんだこの考えは、内心で彼女を躍らせた。
逃亡中の夫カシムへの忠誠心が揺らぎ始め、少しずつアレクへの信頼と希望に傾きかけている自分に気づいた。
ヤオ・ジンは事前にこの人事について聞いていたため、驚くことはなかった。彼女はアレクとの特別な関係を維持し、格闘技の師としての役割に誇りを持っていた。
彼女にとって、この発表はむしろ予測通りのものであり、他の夫人たちの反応を静かに観察していた。彼女はアレクに対して揺るぎない信頼を寄せており、彼との関係がさらなる信頼の上に築かれていることを確信していた。
第二夫人ソフィアは外交担当として指名されたことに胸を張った。彼女の社交的で華やかな性格は、この役割に完璧にフィットしていた。
他の貴族社会との交渉を任されることは、彼女にとってもやりがいのある挑戦だと感じていた。
彼女の心の中には、自分こそがこの後宮で最も優れた存在だという自信が満ちており、アレクの側女としての地位を最大限に活かし、さらなる影響力を持とうと考えていた。
「他の夫人たちには負けないわ」と心の中で強く誓い、彼女はこれからの立ち回りを考え始めた。
エリザはアレクによって教育担当に任命されたことに、驚きと共にプレッシャーを感じていた。まだ若く、他の夫人たちのような経験も少ない彼女にとって、この新たな責任は大きな挑戦であった。
彼女の心には、不安と共にどこか控えめな喜びも存在していた。彼女はアレクに対して深い尊敬を抱いており、彼が自分に期待していることを理解し、その期待に応えたいと強く願っていた。
「彼を失望させたくない……」エリザは自分を奮い立たせ、教育担当としての役割を真剣に果たす覚悟を固めた。
最も動揺していたのは、ラミナだった。美貌を誇る彼女が、諜報担当という裏の役割に追いやられたことは、彼女にとって屈辱以外の何物でもなかった。
彼女の心には、怒りと悔しさが渦巻いていた。自分こそが最も美しく、アレクの寵愛を一身に受けるべき存在だと信じていたラミナは、諜報という冷徹な役割に納得がいかなかった。
「どうしてこんな役割を……」彼女は内心で不平を募らせながらも、すぐに心を入れ替え、逆にこの役割を利用してアレクの寵愛を勝ち取ってやると決意した。
彼女の心の中には、プライドを傷つけられたことで燃え上がる闘志が沸き起こっていた。美しさと策略を駆使して、アレクを取り込むべく、彼女は新たな計画を練り始めた。
アレクの発表は夫人たちそれぞれの心に大きな波紋を呼び、彼女たちは各々の立場で新たな挑戦や期待、不安を抱くことになった。
それでも全員が共通して感じたのは、アレクという若く美しい指導者が、これからの後宮をどう導いていくのかという関心と、彼の寵愛を勝ち取るための競争意識であった。
後書き
本後編では内政と外征の準備を同時に整え、章の次なる山場「追跡と交渉」に備えた。誰が何を担うかを先に決めたことで、動き出した後の迷いを減らす意図がある。次章からは行程の確定、護衛と補給の手当て、現地での橋頭堡づくりが具体的に描かれる。
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