42日目
翌朝。私は目を開けて、(不思議とふわふわしてて、柔らかい)草のベットの中で、大きく欠伸をしつつ、日光がカーテンによって遮られている事に、内心安堵した。
ええと…あの後、スロゥの家に招かれて……黒色の魔女服とローブを貰ったんだっけ。ちょびっと胸元キツイけど、これもまた…ご愛嬌という奴だ。
「すぅすぅ…」
「……。」
私は隣で寝ているスロゥを起こさないように、そっとベットから出て、ちゃぶ台に置いておいた適当に家にあった紐で結んだバッジ(制作時間2.89秒)を手に取って、小さく呟く。
「やっと…精霊国に来れたんだなぁ。」
そして軽く背伸びをしていると、台所で魔法で火を起こし、石鍋や竈門で何かを作っているツインテールの少女…ウイがいて。
「「…あっ。」」
それを首に下げてから、(何を作っているのかが気になって)近づいた私と目があった。
「ふぅん…まだ寝てると思ってたけど、アンタ、随分と早起きなのね。」
さも平静を装い、(ベロチュー)をなかった事にしようと必死になっているのが、見ていて面白くってつい私はルーレットの女神よろしく、からかってしまう。
「…昨日はお楽しみでしたね?」
ウイは胸元にあるバッジをチラリと見た。
「きっ……昨日は早とちりして、悪かったわね。まさかアンタが『精霊王』様の貴賓だったなんて…知らなかったもの。」
「うん…こっちも、キスしちゃってごめんね?同性だし、ノーカンだよノーカン。」
「あんなやり方で魔法を封じれるって事を初めて知れたし寧ろ感謝してるわ、ありがとう!」
あ。竈門の火の勢いがより強くなってる。早口になったり、ツインテールがぴょこぴょこしちゃって…可愛いなぁ。よし、もっとやっちゃ…
【驕った人類を脅かす、あの『原初の魔物』ともあろう者が、朝から若い精霊を言葉で弄り、安っすい悦に浸る…精が出てますね。ノエル?】
「ぶっ!?」
「ちょ!?アンタ、何してんのよ!?!?」
唐突にルーレットの女神(本職)の痛恨の一撃を喰らって、動揺して足がつんのめり、熱々の赤い汁物系の料理が入った石鍋に頭を突っ込んだ。
……
さて、これからの事を考えよう。まずはバットニュースからだ。
「パン…焦げてる。」
「ごめん…私の分あげるわ。代わりにアンタが責任取って、この黒炭を食べなさいよ。」
【詰んでしまっているのですから。】…か。振り返ってみれば、あの悪辣な女神め、随分と回りくどい事を言う。
「え!?いや…私もいらないかな〜。ダイエットしてますし?」
「はぁ?だい…えっと?」
私は『精霊の森』から(物理的&概念的)に出られない。そして、ここで暮らす精霊族の肉体にはAB型の血液どころか、血が存在していない。
「…美味しい。ウイ…今日も、飛行魔法で行こう?」
「ダメ!今日は徒歩でいくわよ。『精霊王』様の貴賓に、これ以上、無礼を働く訳にはいかないもの。」
「ダメったら、ダメ!!!今日だけ我慢して…ね?約束よ。」
「うん…なら、約束。」
要するに、私の餓死コースが確定したって事だ。今日を含めて、もって5日くらいかな。
「ああもう、口の周りを真っ赤にして…ほら、顔をちゃんと見せなさい!」
「えー。」
グットニュースは、衣食住…活動拠点の確保。
「えーじゃないわ!クラスの皆にまた笑われるわよ!?い、いじめられたりだって…」
「平気。わたしには…ウイがいるから。」
「…っ!?お、と、な、し、く…しなさいっ!!!」
「むぎゅう…」
後、さっき痛恨の一撃で受けた火傷はすぐに再生した。食べ物が口に入って即死しなかっただけ、マシだろう……何よりも。
【『原初の魔物』達を離れ離れにするように母様に言った諸悪の根源『大賢者』を、殺せる…でしょう?】
そりゃあそうなんだけど、私に言わせてよ。
あれからよく考えて、髪色とか容姿とか諸々違うけど、見知ったあの瞳の色といい、名前といい…彼女だと、私は結論付けた。
まっ…こんな鈍臭い奴が、白い精霊だって信じたくないのが本音だけどね。
【ふふふ。】
…まだ5日もあるし、精霊国をじっくりと観光しながら、誰にも悟られずに、ぶち殺せる方法でも探すとしますか。
「…?何、ボケっとしてんのよ。行くわよ!」
「あ、え?何処に?」
「決まってるじゃない…学校よ。」
いつの間にか2人は魔女帽子を被り、玄関前にいた。閉じたカーテンから漏れ出ている光から察するに外は晴れている。このまま出れば……
「えっ…一緒に行くの…ウイ?」
「考えてもみなさい…いつまでも、私達の秘密ってする訳にもいかないでしょ?一応は『精霊王』様の貴賓らしいから、ギルウィ先生に会わせた方がいいわ。」
それを聞いたスロゥは、(忌々しいあの白い精霊と酷似した)紅蓮色に輝く瞳をさらに輝かせていて、私が学校に来る事に期待を隠しきれず、何度も頷いていた。
「よ、よし…!行こ…ノエル?」
「……」
うわ…断りにくーい。だけど私はいずれ、君を殺す『原初の魔物』で悪い奴なのだ。まあ、それはそうと…
「私、吸血…人間の中でも、生まれつき日光に弱い体質だから…傘を下さい。」
「わたし…傘、持ってない。」
「はぁ……本当、しょうがないわね。」
ウイは朝焼け色の瞳を僅かに細め、私を訝しげに見つめた後…虚空に魔法陣を出現させて、そこに手を突っ込むと、『となりのトト…ッ』で登場してくるような葉っぱ傘が出てきた。
「これでいい?」
「ありがとう!助かるよ。」
玄関を出て、スロゥとウイと私は3人並んで、学校に行く。
「ねえ、ほぼ初対面よね…いつの間に、仲良くなったのよ?」
「……目の色が赤くて、きれい…だから?」
「はぁ…そんな事だと思った。アンタ、赤色が好きだものね。」
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