第20話:罪の証明

翌日正午、王都の法廷には、再び静寂と緊張が張り詰めていた。ミリアが鎖を引かれて再び法廷へと現れると、傍聴席の空気が冷たく変わる。昨日とは違い、彼女を見つめる視線には明確な“否定”があった。


証拠と証言の提出が始まった。


「まずは、この記録映像を」


王の命により、魔王領の秘術によって保管されていた一部の“神託の記録”が再生される。ミリアが民衆を前にして語った神託は、内容が時に矛盾し、都合のいい解釈で変更されていたことが明らかになる。


「……この内容は、以前の神託と食い違っている。説明を願おう」


王が問うと、ミリアは唇を震わせて言った。


「神の御心は……時とともに変化するのです」


だが、その答えに納得した者は誰一人いなかった。


次に証言台に立ったのは、レティシア。


「彼女は“本物の聖女”だった時期も、確かにありました。でも、自分を神そのものだと信じ始めたとき、道を踏み外したんです。救いの名のもとに、信者たちを扇動し、王国を内側から壊そうとしました」


「嘘よ! あなたは……あなたは、偽の記憶で人々を惑わせているだけ!」


ミリアは叫ぶ。しかし、その言葉にもはや力はなかった。


続いてセドリックが証言台に立つ。


「私が彼女に仕えていた頃、神託の裏で“信仰を操る方法”について密かに語っていたことを、私は忘れない。彼女は信者の不安や恐れを利用し、自分に都合のいい解釈を押しつけていたんです」


セドリックの声は、かつての忠誠が裏切られた者の静かな怒りに満ちていた。


さらに、数人の元信者が証言台に立った。


「私の弟は、ミリア様の神託を信じて、戦に駆り出され命を落としました」


「“異教徒は排除すべし”という言葉で、村の人々が互いに憎しみ合いました。今でも後悔しています。信じた私たちが愚かだったと……」


涙ながらに語られる元信者たちの証言に、傍聴席は静まり返った。


(どうして……こんなはずじゃ……)


ミリアの心の中では、ひたすらに否定と混乱が渦巻いていた。


(私は、正しかったはず。私こそが、皆を導く者だったのに……)


けれど、その“正しさ”は、今この場にいる誰一人として、信じていなかった。


最後に、クルーゼが立ち上がった。


「我が魔王領は、すでに数度、ミリアの神託による混乱を経験している。神の名を騙る者が、どれほど世界を歪めるか。我々は、それを最もよく知っている存在だ」


低く、静かに――しかし、絶対の力をもって放たれたその言葉に、場の誰もが息を呑んだ。


「……これ以上、彼女の言葉に耳を貸す者はいないだろう」


王は重々しくうなずき、言葉を発した。


「これにて証拠と証言の提出は完了とする。判決は、日没の刻に下す」


法廷が静かに閉じられ、再びミリアは引き戻される。


その背中は、昨日よりもさらに小さく、そして重たく見えた。

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