絵本①

【The name of the flower...】

それは昔々の物語

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 むかしむかし

 あるところに


 とってもきれいなお花が

 咲いていました



 その花は

 たくさんの花から


 キレイだね

 良い香りだねと


 たくさんほめられて咲いていました



 そんな花は

 とってもいい気分になりました


 そうでしょ?

 わたしはとってもきれい

 とってもいい香りなの



 そうしているうちに

 自分の仲間が枯れてしまいそうでした



 花たちは

 そのお花にお願いをします


 ねえ

 どうかあなたの花の蜜を

 分けてあげてくれないかしら



 その花は首を横に振ります


 蜜をあげてしまうと

 花が少しずつ枯れてしまうからです



 だってわたしはキレイでいたいもの



 花は仲間がどんどん枯れていっても

 決して蜜はあげません



 そんな花に

 神さまが怒りました


 神さまはその花をずっと咲かせ続けたのです



 ひとりぼっちになっても

 花はずっと狂ったように咲き続けます


 そこで花は気づきました



 ああ

 わたしが蜜をあげていれば


 みんなはもっときれいに花を

 咲かせていたのねと



 やっと気づいた花は神さまに

 枯らせてもらいました



 ありがとう

 神さま


 これでやっと

 みんなのところへ

 いけますね



 そうして花は

 黒くなり

 汚くなり

 小さくなり

 最後は冷たくなって


 笑顔で枯れていったのでした




 めでたし

 めでたし



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 むかしむかし

 あるところに


 とってもきれいなお花が

 咲いていました


 その花には

 仲間がいませんでした


 でも

 心はとってもきれいだったので


 たったひとり

 おともだちができました



 でも

 そのおともだちは

 もうすぐ枯れてしまうそうなのです



 わたしの蜜をあげるよ?



 でも

 そのおともだちは

 決して蜜をうけとりません



 どうしてと聞くと

 そのおともだちは



 あなたがだいすきだから



 そう言ったのを最後に

 枯れ果ててしまいました



 花は泣きました


 泣いて泣いて

 泣き続けて


 花びらの色が

 涙色になりました



 それからどれくらいたったでしょう


 まだ花は

 色を変えたまま咲き続けます



 ああ

 あのおともだちに会いたいよお



 そうしていると

 かぜさんが教えてくれます



 花びらになりなよ

 そうしたらぼくが運んであげるよと



 そういって花の花びらを一枚

 運んでいきました



 そうかその手があったと

 花は大喜び


 どんどん花びらになって

 かぜさんに連れて行ってもらいました



 花はなくなってしまったけれど

 かぜさんのおかげで

 おともだちに会うことができました




 めでたし

 めでたし



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 むかしむかし

 あるところに


 とってもきれいなお花が

 咲いていました



 その花には

 仲間がいませんでした


 でも

 心はとってもきれいだったので


 あるお花のおともだちたちができました



 その花は

 寂しかった時は

 涙の色に


 嬉しかった時は

 あたたかい色に咲く


 めずらしい

 とてもきれいな花でした



 ある日

 おともだちが

 いろんなところへ連れて行ってくれました


 そんなおともだちのおかげで

 花はいつも

 あたたかい色でした



 ですが

 ある日

 悪戯な

 かぜさんのせいで


 花は

 おともだちたちと

 離ればなれになってしまったのです



 花は泣きました


 泣いて泣いて

 泣き続けて


 また

 涙色になってしまいました



 そんなかわいそうな花を見た神さまが

 自分とおなじ花を

 たくさん咲かせてくれました



 どうだい?

 これでもう

 寂しくはないだろう?



 花はうなずきました


 たくさん咲いているから

 みんなもこの花を見て

 自分を思い出してくれると思ったのです



 そうして花は

 おともだちたちと離ればなれになっても

 とっても幸せでした




 めでたし

 めでたし



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 本を閉じ、両手を顔の前で組んで祈る。




「どうか。……ッ、どうか」




 幼子に、救いの手を――――と。





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