一章 叡智と神秘 Sacred Tech and Cursed Blood
1
お詫びに何でもする。
突然美少女から告げられたその言葉に、普通の男子高校生ならば色々妄想が膨らんでしまうことだろう。
だが、残念ながら僕にそんな豊かな感性は残っていない。
分かっているのだ。
期待なんて、結局は裏切られる。
願いなんて、結局は叶わない。
そんなことをしたって、どうせ何も得られやしない。
最後はいつも、空っぽの両手を見て虚しくなるだけに決まっている。
だって、この世界は残酷なのだから。
「どうでもいい」
五限目の授業を受けながら、僕は小さくそう呟いた。
これまでの人生で学んだことが一つある。
それは、平凡な日常こそ最も幸福であるということだ。
山もなければ谷もない。そんな生涯を過ごせたら、きっとどんなに幸せだろう。
だからこそ看過できないのだ。
お昼休みの出来事は、僕の平穏を台無しにする脅威に他ならない。
ふと彼女の赤い眼差しが蘇る。
あそこまでした彼女にも、きっと余程の事情があるのだろう。
だが。
「関係ないね」
切り捨てる。
面倒事は御免なのだ。
そうだ。放課後になったらさっさと帰ってしまおう。
そう決心して、僕は改めて授業へと意識を集中させる。
ちくりと、胸が痛んだ。
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