第45話 風の残り香
窓から差し込む優しい風陽の光に私は目を覚ましゆっくりと起き上がった。軽く伸びをして廊下へと出れば少し冷たい朝の空気が私の肺を満たした。にゃおとまだ眠そうな声で鳴いた雪音を軽く撫でたあと私はそっと空を見上げた。
「……早く帰って来るといいのだけれど」
そう呟いた時一際強い風が吹いた。私は咄嗟に目を瞑れば神域に2つの気配が増えた事に気が付き、風が止めばゆっくりと目を開ければ私は勢いよく駆け出しそのまま抱きしめた。
「……黎那!」
「お姉様……!」
あぁ、やっと帰ってきた……たった1晩。たった1晩離れていただけなのに今ようやく安心できた気がする。
「おかえりなさい黎那」
「ただいま帰りましたお姉様……遅くなってごめんなさい」
「いいの……いいのよ……星凪様の神域は楽しかった……?」
「……はい。それにとても優しくして頂きました」
その言葉を聞いて私は小さく息を吐き隣に居た星凪様に軽く頭を下げた。
「黎那……妹がお世話になりました。姉として感謝申し上げます星凪様。」
「いや……本当ならその日のうちに帰す予定だったのだが……黎那殿と過ごす時間が心地よくてこの日になってしまった。申し訳ない」
「……いえ。確かに心配ではありましたが……妹も楽しかったと言っておりますので」
「そうか……花嫁殿が言うなら良かった。出来ればまた黎那殿を我が神域へと招待したいのだがいいだろうか」
その言葉を聞いて私は少し悩んだあと小さく頷いた。この神様ならきっと大丈夫。そう思えた。
「おかえり妹君。」
「ただいま帰りました土地神様。」
「全く……星凪。人と私たち神の時間感覚は違う。遅くなるなら文を寄越せ」
「……すまない蓮華。忘れていた。」
「……まぁ今回は妹君も楽しめたようだ。紫苑も安心したようだし今回は何も言わない。」
私はその言葉に小さく笑みを浮かべながら頷いた。黎那が楽しめたならそれでいい。星凪様と少し言葉を交わす黎那を見つめれば穏やかな空気が神域を包んだ。
「……そろそろ帰らないと従者に怒られそうだ。ではまた。」
それだけを残して姿を消した星凪様。私は小さく息を吐き黎那をそっと見つめれば少しだけ大人びたような表情を浮かべていた。星凪様の神域で過ごした日が黎那に少しだけ変化をもたらしたのかもしれない。それが私には寂しく感じたけれど嬉しくも思えた。
「そろそろ朝食の時間ですね。皆で揃って食べましょうか」
「はいお姉様」
「白耀も準備してくれているだろう。さぁ行こうか」
私たちは笑みを浮かべながら歩き出した。穏やかな日々がまた始まる。朝の光はそんな事を思わせるように輝いていた。
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