第22話 宴会。そして問いかけ

翠嵐様が来られてから数日が経ち私と蓮華様は翠嵐様の神域へと訪れていた。


「ここが翠嵐様の……蓮華様の神域とは雰囲気も全く違いますね」


「神域は神によって作りが全く異なるからね。っと……お出ましだ。」


その言葉を聞いて私はふと其方へと視線を向けた。そこには満面の笑みを向ける翠嵐様が立っていた。


「やぁやぁ蓮華。それに花嫁殿も。ようこそ我が神域へ。この翠嵐心より歓迎しよう」


「あれだけ文を飛ばしてくればな……紫苑も構わないと言っていたから今回だけだぞ翠嵐。」


「そんな冷たいこと言わなくても良いだろう?全く……とりあえず部屋にどうぞ。一応別の部屋も用意しているが……」


「紫苑と同じ部屋で構わない。」


「私も構いません。お部屋、ご用意してくださりありがとうございます翠嵐様」


「構わんさ。さぁこちらへどうぞ。宴会の時間になれば呼びにこさせよう」


そう告げられ部屋へと案内されながら私は辺りをみながら歩いていた。私がいる所とは雰囲気も造りも全く違う。神様によって本当に全く違う事を目の当たりにした。


「ここが2人の部屋だ。宴会の時間までゆっくり過ごすといいさ」


「あ……ありがとうございます翠嵐様。」


そう告げたあと閉められた襖を見つめたあと私はその場に座り小さく息を吐いた。初めて訪れた他の神様の神域にまだ緊張しているのが自分でも分かった。


「そんなに気負わなくてもいいさ。この宴会は確か小規模な宴会だと聞いているからね。それに緊張ばかりしていたら折角もてなしてくれる翠嵐にも悪いからね」


「そ……そうですね。ありがとうございます蓮華様。」


「それに私達は招かれた身。気楽に楽しめばいいさ……それまでここに来るまでに疲れたろう。休んでいなさい」


その言葉に私は頷き目を瞑り時間が経つのを待っていた。暫くすると肩を揺らされ自分がいつの間にか眠っていたことに気が付きすぐに目を開いた。


「おはよう紫苑。そろそろ時間みたいだ。起きられるかい?」


「っ……!申し訳ありません……!私いつの間にか眠っていて……」


「ここに来るまでの転移術に疲れていたんだろう。それに慣れない他の神の神域という事もある。気にしなくていいよ」


「……すみません……もう大丈夫です」


「それじゃあ行こうか。先程、翠嵐の従者が呼びに来ていたからもう準備は整ったんだろう。」


その言葉を聞いて私はゆっくりと立ち上がりついて行くように蓮華様の後ろを歩き宴会が開かれる部屋へと入った。そこにはもう既に他の神様が座っており私は軽く挨拶をして自分の席に座った。


「さて、全員揃ったみたいだ。皆、今日は集まってくれた事心より感謝する。我が領地で採れた海や山の恵み、そして腕を奮ってくれた我が従者に。乾杯」


「「「乾杯」」」


挨拶も終わりあっという間に会場は賑やかになり私はある程度食事を楽しみながらその様子を見ていた。ほんのりと顔を紅色に染めながらも楽しそうに飲む蓮華様やぎゃいぎゃいと騒ぎながら食事に手を伸ばす神様たち。すると1人の神様が声を掛けてきた。


「して……蓮華の花嫁よ。」


「はい……?」


「蓮華とは何処まで進んでいるのだ?」


「……はい!?」


「子はもう宿してもいい頃だろう?なんだまだ子を作っておらんのか?」


余程酔っているのだろう。私はなんて答えればいいのか分からず目を逸らしてなにも言わずにいた。それが気に入らなかったのかその神様は大声で怒鳴ってきた。


「貴様……!人の分際で神の問いに答えぬつもりか……!」


「っ……答えられるものと答えられないものがあります……その問いにはお答えできません……!」


「貴様っ……!」


「そこまでだ。お主は少し酒を抜け。酔いすぎだ花嫁殿は……怪我は無いか?」


「……はい翠嵐様」


「蓮華、花嫁殿を連れて部屋に。落ち着いたらまた従者に呼びに行かせよう」


「あぁ助かる。おいで紫苑」


私は翠嵐様に軽く頭を下げたあと蓮華様について行くように歩き先程までいた部屋へ入り襖を閉めれば私は小さく息を吐き先程の出来事からようやく解放されたのだと分かった。


「紫苑。もう大丈夫だ安心していい」


「……申し訳ありません蓮華様……上手く躱すことが出来なくて……」


「構わない。そもそもあんな下世話な問いをしてきたあの神が悪い。」


その言葉を聞いて私は小さく頷いた。でも先程の神様の言葉がずっと残っている。子を成さないといけないのだろうか……。そんな事を考えていると襖が開けられ従者の方が呼びに来てくれた


「花嫁様、蓮華様、お待たせ致しました。」


「あぁありがとう。紫苑宴会に戻れそうかい?」


「……はい大丈夫です。」


私は頷き従者の方の後ろを歩き宴会へと戻れば先程の神様はおらず小さく息を吐けば翠嵐様が駆け寄ってきた。


「済まなかった花嫁殿。あいつは今部屋に戻ったから安心すればいい。先程のことはどうか我の顔に免じて許してはくれないだろうか」


「いえ私の方こそ楽しい時間を壊してしまい申し訳ありません翠嵐様。皆様も申し訳ありませんでした」


私は軽く頭を下げれば翠嵐様は首を横に振り「謝らないでくれ」と告げてきた。私は少し悩んだあとこくりと頷けばまたこの場所に賑やかな雰囲気が戻った。

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