第19話 話してみませんか
月魅様が姿を消したあと私と蓮華様は無言になっていた。言われてみれば私はまだ何も知らない。何が好きで何が嫌いか。私はそっと彼の腕から離れ正面に向き直した。
「蓮……いえ瑞華様。ちゃんとお話してみませんか。お互いの事。何が好きで…何が得意で…何が苦手なのか。そして貴方の本当の名前を呼ばせてください」
「紫苑……あぁそうだな。だから紫苑の事も教えてくれ。好きな事、得意なこと苦手なこと……全て。」
私はその言葉に小さく笑みを浮かべながら頷けばそのまま抱きかかえられ部屋へと移動した。
「……ここで話そう。白耀には来ないよう使いを出しておいた。……暫くは部屋には来ない。」
そう告げられながら私はゆっくりと床へと降ろされれば隣に座った瑞華様を見つめた。ほんの少し緊張しているような……そんな表情を浮かべていた。
「そんなに緊張なさらないでください……さぁ何からお話いたしましょうか」
「……紫苑の好きなものを。好きなものを教えてくれ」
その言葉に私は少し目を伏せ悩んだ表情を浮かべたあとすぐに笑みを浮かべた
「そうですね……花が好きです。あと……雨の匂いや音も。」
「雨の匂い……あぁあの香りは私も好きだ悪くない」
「家に居た時は目を隠されていたので……音や匂いで感じる事しかできなかったんです。でも…黎那…妹が雨に濡れた花を持ってきてくれたり…それから匂いも好きになったんです」
私は笑みを浮かべながらそう告げた。もう会えないけれど私はずっと貴方のお姉様だから……思い出はちゃんと忘れないから。そう考えているとそっと私の頬に手が触れてきた。
「……紫苑にとって妹はそんなに大事なのか?」
その言葉に私は軽く目を見開き小さく笑みを浮かべた。
「えぇ……妹は…黎那はとても大切な人です。私の大事な妹ですから」
「……そうか。」
瑞華様は少し悩んだかのような表情を浮かべ私の頬をそっと撫でた。私は小さく笑みを浮かべ軽く手に擦り寄ればゆっくりと口を開いた。
「……いつか瑞華様も分かります。私とゆっくり知っていきませんか。これから」
「……これから?」
「えぇ。沢山お話して沢山知っていきましょう。私は神様の事を。瑞華様は人の事を」
「……あぁそれは楽しそうだ。」
その言葉に私は笑みを浮かべ私はそっと瑞華様を抱きしめた。時間は沢山ある。だからこれから知っていけばいい。神様の事そして人の事を。
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