第7章 過去と向き合う覚悟──そして、道は二つに分かれた

——静寂に包まれた闇夜


布団に潜り

目を閉じたまま俺は考えていた。


ゆうひを守るため

父と共闘する未来。


そのために、何ができるのか。


何を、どう動かすべきなのか。


——そのときだった。


「にいちゃん!」


ぱたぱたと小さな足音。


目を開けると

息を弾ませたゆうひが

両手に何かを持っていた。


「これ、みて!」


差し出されたのは

クレヨンで描かれた一枚の絵。


そこには、父、母、俺、そして——

にっこりと笑う

小さな“ゆうひ”の姿があった。


さらに

その隣には


見覚えのある“白猫”の姿まで。


——プリン……?


言葉にできないまま

俺はその絵を見つめた。


次の瞬間———

















世界が、軋んだ。



















視界がぐにゃりと歪み、

耳鳴りが頭を割くように響いた。


重力ごと、身体が引きずり込まれる。


「——う、わっ……!」


白く、深い霧の中を、落ちていく。


どこまでも、どこまでも——。



気がつくと、俺は

知らない天井を見上げていた。


いや、知っている。

この天井を、俺は知っている。


現代——

今の自分の、家だ。


「パパー!」


耳に飛び込んできたのは、あの声。


顔を向けると

レンが嬉しそうに抱きついてきた。


「昨日ね

新しいポケモンゲットしたんだよ!」


ああ——間違いない。

俺は、現代に戻ってきたんだ。


だけど。


心は全く安らがない。


「……ゆうひ」


小さく名前を呼ぶ。


守ると誓ったあいつが

まだあの(過去)場所にいる。



あいつのもとに行かなきゃ。



でも、どうやって——?





現代に戻った俺は

まずマキとの距離を縮ることを決意した。


「最近さ……俺、ボカロの曲作っててさ。TikTokでちょっとバズったんだ」


声にならない声で、必死に話しかける。


マキは最初こそ驚いた顔をしたが

やがて、ほんの少しだけ口角を上げた。


それだけで、救われる気がした。


——未来も、過去も、守るんだ。

そのために、今できることを。


俺は諦めない。


レンの笑顔を見ながら、決意を新たにする。



——だけど。


心のどこかに、ずっと引っかかっていた。


“どうやって過去に戻る?”


手がかりは、ある。


レンの絵——


過去に戻るときは

レンの絵が引き金になった。


現代に戻ってきたのも

ゆうひの絵がきっかけだった。


絵に何か関係があるのか…?


俺はふと

壁に飾られているレンの絵を見上げた。


そこには、家族の姿——


そして、

少し“ぼやけた”ゆうひの姿が。


「なあ、レン。

ここに描いてる男の人……ゆうひ

…なんだよな?」


そう問いかけた瞬間——

















世界が歪む——




















ズシン、と身体を突き上げる衝撃。


家の景色がぐにゃりと溶け出し——


何もかもが崩れ落ちた。



目を開けると、そこは——













子ども部屋だった。


「……戻ってきた」


俺は小さく呟いた。


そうか。


やっぱり——


絵が、トリガーだったんだ。


あの絵を見ると同時に扉が開く。


これで確信した。


俺は現代と過去を行き来し


"ゆうひ"と"レン"を守る——


タイムウィーバー(時を操る者)として


生きていくんだ…!




だが——


そんな決意も束の間


すぐに違和感を覚えた。


家に帰れば

母が前よりも少しだけ穏やかになっている。


教室に行くと

知らないクラスメイトが

笑顔で話しかけてくる。


「よっ、龍馬!」


おまえそんなキャラだったか?

まったく記憶にない。


それと同時に——


クラスでは

俺の周囲に“壁”ができ始めていた。


「なんかアイツ、最近つまんねーよな」

「一緒にいても楽しくねぇし」


——そうささやく声。


未来を変えた代償。


世界は、確かに動き始めていた。

でもそれは

同時に“俺の孤立”を意味していた。



眠りにつけず未来ノートを見つめていると


どこからか——


「ニャー」


窓辺に現れた、白い影。


「プリン……!」


駆け寄ると、彼女は静かに俺を見上げた。


『アンタ、よくやってるよ。

でも……

ここからは、アタイ、少し離れるよ』


「え……?」


『時の案内人は、干渉しすぎちゃいけない。

アンタが自分で道を選ばなきゃ

意味がないからね』


静かに告げると、プリンは

ふっと、その姿を消した。


まるで、夜の中に溶けるように。


「……プリン……」


孤独が、背中を打った。


でも——

それでも。


守りたいものがある。


過去も、未来も。


この手で、必ず——。



——今度こそ、自分の足で立ってみせる。

たとえ

誰も傍にいなくても。


第7章 了


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第7章をご覧いただき

誠にありがとうございます!

拙い文章で読みづらい点も

多々あるかと思いますが

応援ボタンや感想、

ここはこうした方がもっと良くなるよ!

といったアドバイスも

どしどしお待ちしております!

また次章も読んでいただけると

涙が枯れるほど嬉しいです!

よろしくお願いします!

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

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