第22話:数日が経って




※多楠ヘブン視点




「はあ」


 メゾンタクスの株価が大暴落して数日が経ちました。絶賛株価は暴落中。今時点で十パーセント減。ハッキリ言って破壊的な数字です。このまま倒産してもおかしくないレベル。ネットの批難も轟々で。メゾンタクスのレシートと偽物商品を一緒に撮るっていう動画をアップするのが今一番流行っているらしいです。私の家的にはふざけるなと言いたいところですが、ネット民に何を言ってもしょうがないのは私も心得ており。


 既にメゾンタクス商品の不買運動まで起こっており、にっちもさっちもいかなくなっているのが現状。


「大丈夫かい? 多楠……」


 で、お付き合いを始めている蛇蝎さんは毎日のように私の家に来ます。すでに使用人とも顔なじみで、お茶を注文したりと気さくに勝手知ったる感じになっています。


「そのぉ。メゾンタクスの信頼回復の方は?」


「今ステマ会社に依頼してネットの運動抑制を計画しているところ。このまま上手くいけば一気にメゾンタクスへの不満は払拭されるぜ?」


 そ、そうですか。それはよかった。はぁ、と安堵します。蛇蝎さんから付き合いたいって言われた時は何言ってんだって思っていましたが、存外彼は私のために動いてくれるみたいですね。


「だからさ。やらないか?」


「やるって……何をでしょう?」


「そりゃアレだろ。男女間のアレ」


「えーと。お断りします?」


「ちょちょちょ。そりゃないんじゃない? こっちは多楠のために動いているんだぜ? 俺たち恋人だろ? そういうことはして当然じゃね?」


「でも結婚しないとそういうことはしちゃいけないのでは?」


 わたくしも性欲を持て余すことはちょくちょくありますが。


「それって価値観古いよ。普通の高校生ってそういうことをして愛を確かめるのが常識っていうか」


「そうですか?」


「そうなんだよ。だから俺様とさ。しようぜ。顔も悪くないだろ?」


 まぁ乙女堕としフォールフォーマンの顔はドキッとするのですけど。ただネットに上がっている乙女堕としフォールフォーマンほどじゃないんですよね。表情の使い方とか、瞳の光の色とか。何かこう蛇蝎さんの顔の使い方は残念無念というか。超絶イケメンなんですけど。わたくしの食指は動きませんわ。


 わたくしが体調を崩して、ベッドに入っているのですが。そのベッドの縁に蛇蝎さんが座って、こっちに手を差し出してきます。


「いいだろ。俺様だって多楠のために走り回っているんだぜ?」


 それを言われると辛いですわ。たしかに蛇蝎さんはわたくしのために東奔西走しております。であれば、その恩義に報いるのもわたくしの務め、なのでしょうか?


 でもですけど。どうにも彼には心惹かれません。


 わたくしがおかしいのでしょうか?


「ほら。多楠」


 わたくしの頬に手を添える蛇蝎さん。その仕草に悪寒を覚えて。


「いやっ!」


 わたくしは彼の手を叩いていました。


「はあ。わかってないのか? 多楠。俺様を拒絶したら、つまりメゾンタクスは終わりだぜ?」


 そんな理屈であることは何となく説明されました。けれども女子としての根源の部分で私は彼を受け入れられない。




     ***




※蛇蝎マムシ視点




「いやっ!」


 俺様が頬に手を添えると、多楠はその手を振り払った。クソが。行けると思ったのに。俺様が多楠を抱いて、俺様のものにするという大望を実現する。これが世界の真理だ。


「はあ。わかってないのか? 多楠。俺様を拒絶したら、つまりメゾンタクスは終わりだぜ?」


 俺様がそういうと、ビクリ、と多楠は震えた。言っている意味を理解したのだろう。そうだぜ。お前の会社の行く末は俺様の舌先三寸だ。とは言っても別にステマ会社に依頼なんてしてないけどな。メゾンタクスを追い詰めるときにわかったが、依頼にも結構金がかかる。そりゃウチは金持ちだけど、そう何度も依頼できるほど継続性はない。だがこれでいい。このままメゾンタクスを破滅させるか。あるいは多楠が俺様のものになってメゾンタクスが俺様の手中に収まるか。どちらにせよ俺様には損がない展開だ。先の先を読めるって俺様天才すぎる。借金奴隷にしてもいいな。それこそ黒金と二人並べて俺様に奉仕させても面白いかもしれない。


「メゾンタクスの信頼回復をしたいんだろ? だったら俺様に任せろ。必ず救ってみせる」


 プギャー! 実際は何もしていないんだが。とりあえずコレで落ちれば後はどうとでも。おあつらえ向きにベッドもあることだし。このロリ巨乳を抱いて、俺様のものに。


「失礼します。お嬢様。蛇蝎様。お茶を淹れ直してきました」


 ちっ。そういえばお茶のお代わりを頼んで合法的に退室させたんだっけか。


「俺様たちは忙しい。後にしろ」


「いえ。入って構いませんよ。西田さん」


 余計なことを。俺様とイチャイチャする時間を奪われるんだぞ? わかってんのか?


「失礼します」


 そうして入ってきた使用人は、俺様と多楠の分の紅茶を淹れて、そのまま部屋に居座った。


「いかがでしょうお嬢様?」


「いい香りですわ。さすが西田さんですね」


「恐縮です」


 慇懃に使用人は一礼する。


「ほら。仕事終わったろ。出ていけ」


 俺様と多楠の蜜月の邪魔だ。


「いえ。いてください西田さん。ちょっとお話しませんか?」


「申し訳ありません蛇蝎様。お嬢様のご要望はわたくしどもめには最優先事項でして」


 これじゃやれないじゃねーか。そうとわかって多楠は使用人を引き留めたのか? そろそろメゾンタクスも調子を取り戻すだろう。出来るだけ速やかに多楠を堕とさねばならない。


「……(多楠。俺様としろ)」


 多楠にだけ聞こえるように、俺様はそう囁いた。


「……(このままだとお前も会社も終わるぞ? それは分かっているよな?)」


 そう囁くだけで多楠は青ざめる。バカ女が。自分の立場をよく思い出せ。俺様に抱かれるくらいしか能がないちっぽけな人間であることを思い出せ。


「……(マジでここでやってくれたら俺様がお前を救ってやる。約束だ。これが違えない)」


「本……当……に?」


 縋るような目で多楠は聞く。堕ちたな。


「ああ、本当だ」


 さて面白くなってきたぜ。このロリ巨乳を存分に味わって、俺様を初めての男にしてやる。使用人の前でやってしまうのもありだな。むしろ見せつけるように、使用人の主が俺様のオナホであることを知らしめてもいい。誰がこの場の支配者か。それをわからせてやるの面白いかもな。


「ほら。脱げ」


 今の多楠はパジャマ姿だ。ボタンで留めている。その第一ボタンを外す。鎖骨が見えた。くっくっく。俺様に逆らえずに自分から脱ぎだす女。俺様に身体を捧げないと生きていけない女を見るってのは最高だな。俺様に傅いて、征服されるだけの女ってのが一番興奮するんだよ。二番目のボタンを開ける。それで胸の谷間が見えた。デカい。くく。そのデカ乳を自分から俺様に差し出せ。そうすることで俺様への謝罪になるんだよ。


「何をしている?」


 そうして俺様がニヤニヤしていると、冷えた声が部屋に響き渡った。

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