第47話 後方に障害物なし!!
調布市 多摩区民仮設避難所
ゴゴォォォォォォォォン……!!
「さ、さっきからなんなの、この音と揺れ!」
「見てあれ!多摩区の方じゃない?!」
調布市内から訪ねてきた元区民のひとりが、空を指差す。
土煙と濃紫のデブリ粉塵が火口のごとく噴き上がっている。
「清掃兵器は明日でしょ?じゃあなんなのあれ!」
「すみませぇん!」
「あら!ともちゃん!」
賢明な読者諸君なら記憶にあろう。
序盤の回想でのみ登場した、調布市に移住した郁実の幼なじみ、
アイドルオタクの「ともちゃん」その人である。
素朴な風貌の彼女は、区民たちの輪に駆け寄って言った。
「あの、郁実ちゃんと秋村のおじいちゃんは?どこにもいないんです!」
「え?秋村さん?」
「ちょっと前から見てないなぁ…そういや」
「梨園の軽トラもないわよ」
区民たち、元区民たち、そしてともちゃんは顔を見合わせる。
「まさか……」
***
東京都稲城市 通称:稲城砂漠
砂地に伸びるアスファルトの道路を、ガタガタと揺れながら走る軽トラ。
運転席の長十郎が忙しなくハンドルを切る。
「府中街道がこんなボロボロだとはよぅ……まっすぐ走れやしねえ!」
助手席の郁実が何気なくバックミラーに目を遣り、慌てて後方を振り返った。
その顔色がさっと青くなる。
「おじいちゃん!後ろ!デブルス獣が!!」
「くそったれ!!飛ばすぞ郁実!!」
秋村梨園軽トラの後方でボコボコと小さな砂柱がいくつも上がる。
やがてそれは軽トラを射程に捉えるや、砂中より姿を現した。
全長十五メートルのナマコめいたおぞましい姿。
稲城砂漠に何百と群れるデブルス獣の一個体だ。
八方に裂けた口を開け、デブルス獣が梨園の軽トラに襲い掛かる!!
ギュオアアアアアアアアアアアアア!!
吐いた毒液をすんでのところで躱す軽トラ。
長十郎の運転テクニックは見事だが、彼らに反撃の手段はなく、
軽トラの走行速度ではデブルス獣から逃げ切ることは難しい。
「ち、ちくしょう!」
郁実はすがるように心の中で名を呼んだ。
(ショーちん……浄さん!!)
「後方に障害物なし!!」
「打てぇ!!」
ドゴォォォンォォォ!!
デブルス獣は頭部らしき部分を吹き飛ばされ、大きくのけぞった。
続けて胴体の核を撃ち抜かれ、デブルス獣は爆発四散した!!
ビシャビシャッ!!
汚泥に似たデブルス獣の残骸が周囲に飛び散り、
白っぽい灰色の塵と化して不活性化する。
「どうだデブ公ぉ!強酸性洗浄弾入りロケランのお味はぁ!」
「お母さんやったよー!」
「破邪顕正ぃぃ!」
現れたのは陸上自衛隊高機動車。
初めてのデブルス獣駆除成功に隊員達は沸き立っている。
昨日の今日で見慣れた高機動車に、郁実と長十郎は心底安堵する。
「じ、自衛隊さん……!」
「あれ、あなた方は多摩区の?」
隊員達の顔ぶれは、昨日の護送に現れた面々と同じだった。
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