G & G
@katuonotatakpe
第一章 赤い流星と球体ゴーレム
第1話 俺は弱い
始まりはいつだって突如だ。
100年くらい前の20××年、後に『迷宮事変』と呼ばれる全世界で建物や観光地がダンジョンに飲み込まれて黒い石材になり、ダンジョン化する異変が起きた。
世界中で同時に多発し、今もごく稀にダンジョンに飲み込まれてダンジョンになる異変はそれだけではなくそのダンジョン内ではではドローンやカメラなどの一部の機械を除く殆どの機械と銃や爆発物が使えなかった。
だが、迷宮事変は更に俺達人類にある変化をもたらした。
迷宮事変が起きてから生まれた全ての人間の赤ちゃんには必ず2枚のカードが引っ付いて生まれる様になったのだ。後にそれは人に特殊な能力を付与するカードであると分かり、『ジョブカード』と『スキルカード』という名がつけられた。そしてそのカードを持って生まれてきた人は唯一ダンジョン内で剣や刀、ハンマーや魔法みたいな力を使いモンスターを討伐できる事が分かり、ダンジョン攻略を開始した。
しかし、その意気込みもこの100年で変わってしまった。
ダンジョン内部は複雑怪奇、寧ろダンジョンで手に入るモンスターの素材や特殊な道具や武器、万治や重症でもすぐに治る薬などさまざまな物が手に入るので攻略するよりもそれらで稼ぐ人々が続出、更にドローン技術も発展してダンジョン内を配信して攻略する人も現れた。
つまりダンジョンは約100年で攻略するべき対象から金を出す鉱山みたいに一攫千金を手にできる場所であり最高のエンタメが配信できる場所と化したのだ。
それに弊害し今の日本社会はスキルやジョブで判断される能力主義が緩やかに浸透してきており、いくらジョブやスキルなどが完全にランダムで決まるとはいえ強い肉体の人と結婚して更に強い人を生み出すサラブレッドも真っ青な人の配合もよく聞く話になってきた。
そんな世界の日本の片隅、愛知県と三重県の県境にある田舎の高校にて今年3年生に進学した俺こと『桐生 吾郎』は筋肉ゴリラが青ジャージを無理やり着ているとしか思えない外国人とのハーフであり体育教師でもある『ララティーナ・遠藤』先生と生徒指導室にて2人っきりになっていた…いや、俺も遠藤先生もそっちの気はないからね。普通に呼び出されただけだからね?
「桐生、知っての通りだが…またお前の机にイタズラされていた。だから見つけた俺が机を新しい奴に交換したんだが…正直に言う、辛くないか?」
「…いつもの事ですので、気にしないでください」
遠藤先生がそう言って生徒指導室の片隅に置かれた机に指差しでそう言うが、俺は苦笑いをしながらその机を見つつそう答える。
『低脳』
『使えないゴミ』
『兄と弟に搾り取られた出涸らし』
『親に捨てられた廃棄品』
この文字が机の天板にワザと消せない様に彫刻刀なんかで掘って書かれている。
確かに俺は両親に能力が低過ぎて見限られて捨てられ、兄貴と弟には邪魔者扱いをして今では2人兄弟として家族と幸せに暮らしているらしいし、俺は俺で小学生の頃から両親に捨てられて特殊養子縁組をしてくれた親戚の家に引き取られて高校生から一人暮らしをしているが…事情を知る誰かが口を滑らせたせいで俺の家庭事情が露呈してイジメの標的にされている始末だ。
だが、こんな俺を引き取って育ててくれた叔父のためにも最低でも高卒で働いて恩を返すまでは泣き言は言ってられない。生きる為だ、イジメだって耐えられる。例えこの学校で味方が教師達以外に誰もいない現状であろうとも…だ。
「だが、これは流石にやり過ぎだ。いくらお前がダンジョンでは役に立たないスキルとジョブを持っているとはいえ1人の人間だ。していい事としてはいけない事の判断はきっちりとするべきだ」
だが、どうやら遠藤先生はかなりご立腹な様子だ。だからこそ俺は学生手帳とは別に持っているアルミ製のカードケースを取り出して自分のジョブカードとスキルカードを先生に見せる。
「遠藤先生、気にしないで下さい…ほら、俺が低脳で出涸らしなのは間違ってませんから。なんならジョブとスキルなんて一部文字化けして解読不能ですし…ね?」
「桐生、お前な…」
俺がそう言うと遠藤先生はため息を吐いてから「犯人を探してくるから授業に遅れない様に部屋を出ろよ?」と言って生徒指導室から出ていく。それを見てから俺は先生に見せていたジョブカードとスキルカードを俺に向けた。
「…俺は、ダンジョンでは戦えない。低脳で出涸らしなのは間違いないんだよな」
俺はそう言ってジョブカードとスキルカードを見終わり、カードを改めてケースにしまってから教室を出る。
別にダンジョンで稼ぐだけが人生ではない、俺は俺の方法で稼いで叔父さんに恩を返すだけだ。
〜〜
桐生 吾郎
『ジョブカード』
【球体ゴーレム使い『極小』】
手足の無い球体ゴーレムを生み出せる。一度に30体出せるが大きさは一定でBB弾と同じサイズしか出せない。
球体ゴーレムは自分では攻撃できず、移動もできない。
他のゴーレムとは違い視界を共有できず、軽い意思疎通も不可能。
『@mtapwmdpgydtvnvaymrawyepwo#(atvjxna@dajw.wjajt#axgptdt』
『スキルカード』
【収納ロッカー】
自分しか触れずに好きなタイミングで物の出し入れが己の意思でできる。ただし入れられる収納量は掃除用ロッカーと同じサイズで普通の物は入れられない、『@ckm@bb』のみ収納可能。
現在のロッカーの数は1個。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます