青いドレスの女

彼方より

 Day1


「「「「いただきます」」」」

 

 私は、卵焼きから食べ始める。

 

 お父さんはご飯。

 

 弟はみそ汁。


 お母さんはウィンナーから。


 いつも、お母さんの卵焼きは出汁が利いてて美味しい。

 

 我が家の大きなテレビが、朝のニュースを伝えている。美味しいお店の特集をしている。


『どうでしょう、この卵焼き。まるで黄色い宝石のような……』


 リポーターの後ろに、青いドレスの女の人が佇んでいる。


 お父さんは、自分の背丈くらいあるテレビを観ながら呟いた。


「……呼んでる」


 Day2


「「いただきます」」


 私は、ウィンナーから食べ始める。


 弟はご飯。


 お母さんは、みそ汁から。


「お母さん、一膳多いよ?」


「あら、本当」


「お母さん、ゴミ出してきたよ。いただきます」


「ありがと。これでワケのわからない本も片付いたわ」


「お母さん、やめてよ……お願い」


「ほら、早く食べちゃって」


 弟は、ご飯から食べ始める。


 今朝も、テレビがニュースを伝える。ローカルニュースだ。


『K市で、住宅に侵入したとして会社員の、四十二歳の男が……』


 青いドレスの女が、近くの住民としてインタビューされていた。


 私は、箸を止めて口元を押さえる。


 カメラ目線で微笑む女を、お母さんは、うっとりと見つめていた。


 Day3


「「いただきます」」


 私は、ウィンナーから食べ始める。


 弟はみそ汁から。


「お姉ちゃん、なんで四人分も作ったの?」


 私は、涙目で答える。


「なんで……なんでそんなこと言うの」


『昨夜、K市内の川で四十代くらいの女性が流されているのを、通りかかった女性が通報し……』


 ──いやな話。


 ──二人とも、元気かな。


『……さんは、車で走行中に女性に気付き……』


 Day4


「いただきます」


 私は、コップ一杯の水を飲む。


 ──もう、朝ご飯なんて作らなくていいや。


 ──誰もいないもん。


『K市内で発生したひき逃げ事故で、逃走した車両は未だ発見されておらず……』


 朝のニュースなのに、キャスターの女性は青いドレスを着ている。


 私は、テレビを叩き壊した。

 

 画面が割れ、残った部分から、青いドレスの女が覗き込んでいる。


 ──どうして、皆連れて行っちゃったの?


 私は、学校へ行く。


 ──私も……連れて行って欲しかったなぁ。


 玄関を出る私を、女の笑い声が見送る。


 私は駆け出す。


 曲がり角で、出会い頭に人とぶつかった。


「いったぁ……すみませ……ひっ」


 青いドレスの女だった。


「え……はは……あはは……ああああああ」


「ツカマエタ」


 <了>

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