第4話 回想 別視点
俺は最強だった。
家は王家で、イケメン。さらには天才だ。
9歳の時には瞑想で2ヶ月で魔力を感じられたばかりか魔力操作も1週間でできるようになった。
周りは天才だ!とか、この家は安泰だ!とかなんだとか言う。そもそも俺は3男だから国は継げない。御家騒動になる前に継承権は破棄した。
10歳の時に属性魔法を覚えてからはさらには強くなり6年もすれば国で…いやこの大陸で勝てるものは居なくなった。
ここから楽しい人生が始まると思った。
しかし、人生はつまらなくなった。
ただ、強くなるのが楽しかった。ライバルとの競い合いが楽しかった。でも、すでに対等に戦える人間はいなかった。面白くない。
15歳の時からかよっている学園があった。最初は強くなるために、戦いを楽しむために最高の環境だった。楽しかった。尊敬し、尊敬されるそんな関係だった。
しかし、強くなり優秀だった故に妬まれた。
出る杭は打たれる、というやつだろう
今では裏で「化け物」などと陰口を叩かれ、やアリもしない噂を広げられた。友達は心配してくれた。「気にするな」「すぐに収まるさ」と励ましてくれた。
でもそいつらは退学になった。
どうやら俺を恨んでいた一人の中に兄がいたそうだ。そいつは圧力をかけ俺やその友人を退学にしようとしたらしい。しかし、俺は力及ばず友人は退学になってしまった。俺は一人ぼっちになった。
兄に直訴もした。しかし、だめだった。
学園卒業後、家を飛び出した。こんな家にいてられるかと思ったからだ。王家からの刺客を追い払い身分を隠して冒険者になった。このとき18歳だった。
魔物との戦いは楽しかった。人間とは違う戦闘法、ワクワクした。戦っているときは一人の寂しさを忘れられた。
1年後、学園を退学させられた友人と再開した。彼らは冒険者になっていた。謝りたかった。自分のせいでこうなってしまったのだから。
土下座をして謝った。彼らは困惑しながらも笑って許してくれた。そして、また遊ぼうぜ!と誘ってくれた。俺は喜んで頷いた。
また、危険度Sランクの森[ユーデッド]で暮らしている男とも友人になった。彼は俺ほどではないが強く、博識のあるひとだっだ。
5年後、俺は運命の出会いを果たした
依頼を受け、破壊しに違法研究所の人体改造をしている所に向かった。彼らはかつての神族を復活し、量産した後世界を滅ぼそうとしていた。
研究所を破壊し、被害者を助けようとした。その時だった、その女性と出会ったのは。名前はユイスといい、髪が白く長く、顔は10人に聞けば10人が美の結晶というほどだった。簡潔にいうと一目惚れした。彼女も同じ俺に一目惚れしていたらしい。あとから聞いたからね。
話を聞くと彼女は唯一無二成功体で純度100%の神族に変えられた人間らしい。まぁ、その後も色々あった。そして、俺たちは付き合った
ユイスとためと思えば冒険者としての仕事も楽しかった。そして男の子の子供もできた。
ランクアップを繰り返し、冒険者の最高峰Sランクに最年少24歳でなった。実力は問題ないなかったが人格に問題があったそうだ。いわく、絡んできた品のない連中をボコボコにしたのは良くなかったらしい。
まぁ、最初の頃は荒れていたから。そして受付嬢からユイスさんと出会ったから変わりましたね、なんて言われて嬉しくなっている自分がいた。
恐らく身分を隠したが冒険者ギルドにはバレていたと思う。それでも実力で判断してくれたことがうれしかった。俺、王家特有の金髪だし。
自分はイケメンで、ユイスは美人。そんな俺たちはおしどり夫婦や白金夫婦と呼ばれていた。白金夫婦はセンスが悪いね、なんて笑いながら夕食を摂り、まだ小さい息子を見ながら2人で寝る。何気ない日常だが一番幸せだった。
しかし幸せは続かなかった。
隣のランス帝国が俺たちが住むテイス王国に攻めてきたからだ。
憎き兄である王は殺され、首都サーバルまで攻められ、王国はピンチに陥った。その際、俺は戦った。しかし、帝国はユイスや息子を人質に取った。それが卑怯とは言わない。でも、妻や息子を人質に取られて憤慨しない父親はない。しかも、息子はまだ1歳にもなっていないというのに。
何十万という帝国軍を撃ち払い妻や息子を救った時には瀕死の重傷だった。俺は最強でも人間だ。限界はある。だからだろう、飛んでくる矢を防げなかったのは。
避けられない、でも家族は守りたい。そんな思いで家族を抱きしめ「ごめん」と謝った。そうして俺は人生を終えた
――――――――――――はずだった。
なんと妻ユイスが腕を払い除け、俺に向かって飛んできた矢を身体をはって止めた。
口から血を流し、崩れる。しかし、叫ぶ。
「行ってください、その子を助けてあげて」と。
躊躇う俺に妻は優しい笑みを浮かべ、
「あなたとの日々は楽しかっですよ。…あぁ、そうだ…ふたりで決めようって決めてた名前私が勝手に決めちゃいますね」
といい、泣きながら囁いた
「その子の名前は―――。かっこいいでしょ?」
俺は小さな息子を抱えて走った。しかし、後ろからは帝国軍が追ってくる。しかし重傷のケガを負っているので長くは走れない。
どうすれば逃げ切れる?
どうすればこの子を助けられる?
自分の命の灯火の限界が近いことが、ひしひしと伝わってくる。そうすると身体はなぜか、森の方へと吸い込まれていった。
何故かは分からない。
感がそう言っているから。
男がいた。不自然に広がる森の広場のような場所に。あぁ、彼は…
足が自然に動く。
彼はこちらをみると慌てている。
「あぁ、久しぶり。いきなりで悪いが…この子を育ててくれな―――」
口から血が出る。
身体の限界が近づいてきている。
もう死んでもおかしくない。
でも――あと少しで――
あと少しでいい、あと少しでいいから
――――動けよカラダァァァァァ
「おい!どうし―」
駆け寄ろうとする彼を止める
「聞け!この子は俺たちの子で名前は…」
自慢の息子
俺たちの愛の結晶
「――アルスだ。」
まだ困惑している友人に、笑う
「かっこいい名前だろ?自慢の妻がつけたんだ…」
そう言うと身体から力が抜けて、倒れる
頼んだぞ
言えたかは分からない。でも、彼なら大丈夫。
そう確信しながら視界が暗くなった。
こうして彼は最愛の妻と飛び立った
5年後
テイス王国は生き延びた。一人の英雄を代償に。
この二人の名はそうして歴史に刻まれた、
「英雄エイズ・ワードとその妻ユイス・ワード」
王都には2人の石像が建てられているらしい。
そして、二人には息子がいたらしいが消息はわかっていない。
噂ではあのSランクの森[ユーデッド]の中にいるとかいないとか…
そんな噂が囁かれていふのだった。
さらに4年後――――とある森の中
僕とじいちゃんは岩の前にいる。周りには花園が広がっている。風が花びらを巻き込み舞い上がる。
「じいちゃん、これっの墓って誰の?毎年誕生日に来てるけど?」
「そうじゃの〜、あと1年後…10歳になったら教えよう」
「気になるよ〜ヒントちょうだい?」
「うむ…」
老人は目をつぶり微笑む。それは悲しそうに見えた。英雄の友であり、託された者はこういった。
「英雄じゃよ、英雄。どんな理不尽にも立ち向かい、命を通して助けたかった人をすくった。そんな英雄たちじゃ」
「?」
金色の髪をした少年は首をかしげた。
―英雄の息子、現在9歳
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