第3話 ここまで普通の物語
「さーて」
森への行き方を誰かに聞きたいんだけど、どうせ聞くならイケメンか美少女がいい
ということで辺りを見渡すと、1人、一瞬で目が引かれるほどのイケメンを見つけた。肉串を食べ歩きしているようだ
「ん?! これ、意外と美味しいな」
水色の髪の、高身長で胸板も厚い好青年。背中に少し機械っぽい大剣を背負い、腰には短剣を備えている...服装的には冒険者だろうか
背丈や体躯に対して、顔つきは純粋無垢な少年のように「悪意」の無い顔だった
イケメン認定。よし、さっそく突撃だ!
なんなら、このまま逆ナンしてやろう!
メンクイ? それの何が悪いのだ‼
それに、なんだかんだで重要人物は顔が良い。モブかどうかは顔で分かる、彼のビジュアルは間違いなく重要人物だ
「お兄さん、今暇ですか!?」
「うぉっ!? いきなりだね?」
お兄さんは驚いて、1歩後ずさった。しかし、驚きはあっても警戒は無い。慣れているのだろう
「こういうのは、勢いがないと恥ずかしくなるでしょ? だからもう、なるようになるしかないんだよ」
ということで「カクカクしかじか」と説明をして、森への行き方を教えてもらった
「ありがとう♪ ウチはラルフェル、旅人」
「俺は『英雄教』に所属のカルトだ。まあ、気にするな。困ったときはお互いさまだからね」
英雄教…それとカルト君ね。うん、覚えた
「それじゃ、ありがとねー!」
カルト君に手を振りながら、駆け足で教えてもらった森に続く門へと向かった
◇◇◇◇
カルトに話を聞いて、なんとか日が暮れるまでに薬草の採れる森林へとやってきた
「暗くなる前に見つけなきゃだね」
夜の森林で薬草を見つけるのは、多分えげつない難易度になる。他世界の力を使ってもいいのなら、なんとかなるかもしれないが…
「なんだかんだ、ロールプレイが楽しいんだよね」
とりあえず、依頼書に書かれている薬草の模写を見ながら、それっぽいのがないかを森林の中を歩き回る
しかし、ここでもお約束が発生し、探索は中断されることとなった
「グルゥー!!!」
現れたのは3殺意増し増しの3匹の狼。物語でよくある、最初の採取クエで現れる見た目だけ強そうな奴だ
「ああー、この世界は狼なんだ」
前のファンタジー世界ではコボルトで、その前はイノシシ(みたいな奴)だったけ?
意外かもしれないが、スライムやゴブリンと最初にエンカウントすることは少ない。なんなら、最近の世界にはスライムがいないこともあるのだ
ちなみに、ウチはゴブリンとコボルトの違いが、よく分かっていません。はい!
それと、もう1つ判明したことがある。この世界はゲームウィンドみたいなのが出るタイプの世界らしい
ウチが強く念じると、ウチのステータスらしきものが写し出されたウィンドが表示される
ラルフェル レベル1
スキル 無し
うん、まさに初心者だ。けど、他世界でのスキルやレベルは反映されていないらしい
けど、身体能力はそのままだから、スキルは覚えてもレベルが上がって身体能力が上がることはなさそうだ
これはレベル1のまま成長できずに、他の冒険者から下に見られるやつができるかも? 実は強いができるかも?
「グルゥー!!! ガォウ!!!」
殺意剥き出し、よだれダラダラの2匹の狼が、ウチに向かって飛び掛かってくる
しかし、所詮チュートリアルモンスター。ウチの身体能力と経験ならば余裕で対処できる。まとめて回し蹴りで蹴り飛ばして終わり
木に衝突した狼は、そのまま立ち上がってこなかった
余裕の勝利。だけど、あまり嬉しくはないかな。ウチが強すぎるからかな?
「『実は強い』ができなくなるけど、やっぱり身体能力も封印しといた方が良いかな?」
ウチは、胸に手を当て意識を集中する。身体をめぐるエネルギーのようなものを意識し、それを外に出して圧縮させる…
「…よし。これでオッケーかな」
ウチの本来の身体能力は、紫色の結晶へと姿を変えた。これで、今のウチは正真正銘のレベル1だ。けど、感覚的に違和感はない。身体能力を封印するは、初めてではなく、結構していて慣れているからだ
「ふぅ~む」
ウチの身体能力が集約された結晶。常人が取り込んだら、身体が「パッン!!!」と破裂して死んでしまう。そうでなくとも、悪の組織に見つかれば、量産されて危険な「シロモノ」として取引されたりもするのだろう
いつも通り「ウチの亜空間」にしまっておいてもいい。だけど、一応、すぐに元の身体能力に戻れるように持っていることにした。なんとなくだ
結晶はポケットにイン!
「さーて、探索を再開しよっと」
暗くなってしまったら、薬草が見えなくなる。だから、日が暮れるまでにはノルマを達成しておかなければ
ウチは探索を再開し、なんとか日が暮れるまでに薬草10束を集めることができた
ここまでは、至って普通のファンタジー。王道過ぎて面白くない物語
けどまさか、もうラスボス戦が始まることになるとは…
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