第2話 チュートリアル?
チュートリ
チュートリアル開
チュートリアル開始:汝のか
チュートリアル開始:汝の価値を示せ
《汝の価値を示せ》
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カタカタと画面に表示されてアップになる文字。
始めるときにこんな文があっただろうか…
……ハッ!
そして俺は真っ白な正方形の部屋に目覚めた。
ここは見覚えがある「チュートリアルルーム」だ。実際は高難易度コンテンツ無限ダンジョンのシステムを流用している。
その仕組みはこう。
プレイヤーは「ウェイティングルーム」から始まり、クリーチャーが待ち受ける「バーサスルーム」に入る。
勝利したクリーチャーによって経験値や各種の報酬を得て、次の「ウェイティングルーム」等に移動。再び「バーサスルーム」に行く。それを繰り返してプレイヤーを強化していくコンテンツ。名前の通り、その戦いはダンジョンを退出しない限り無限に続いていると考えられて、制覇という概念はおそらくない。
チュートリアルではその「バーサスルーム」を一つクリアしなければいけないというもので、これも鬼畜な要素の一つ。というのもこの「バーサスルーム」も非常にランダム性が強い。
今いる部屋の四方の壁の内、三つに扉が付いていてそれぞれが「バーサスルーム」につながっており、扉には待ち構えているクリーチャーの名前が浮かび上がっている。そのクリーチャーによっては勝てるわけもない敵しか存在しない場合もあるのだ。弱い敵ばかりの場合もあれば、強い敵のみの場合もある。それはチュートリアルに限らないため、「詰む」場合もあるのだ。なんでそんな仕様にしたのか?それは分からない。
俺は真っ先に今回の「バーサスルーム」のクリーチャーを確認した。ゲーム開始をしてから二度目の選択肢。
〇【人狼】―コモン
〇【ゴブリンライダー】―アンコモン
〇【
※クリーチャー等の強さを表すランク
(ロー(L)⇒コモン(C)⇒アンコモン(UC)⇒レア(R)⇒ハイレア(HR)⇒グランド(G)⇒ハイグランド(HG)⇒ユニーク(U)⇒レジェンダリー(LE)⇒ダーク(D))
「よかった。なんとかなりそうだ」
敵クリーチャーの中にコモンがいる。チュートリアルとしてはラッキーだ。初期プレイヤーだとアンコモンも正直厳しい。
そしてバーサスルームを選択する前に俺は自分のステータスを確認することにした。ステータスなどの自分の状態は、見ようと意識すれば目の前にウィンドウが出てくる。
プレイヤー:「慎波リン」
職業:デッドイーター
職業レベル:1
状態:ノーマル
装備:なし
所持スキル:なし
レーティング:1500
LODA特有の簡素なステータス。このゲームにははっきりとしたステータスの数値が存在しない。攻撃力や防御力に数字で優劣を表示せず、プレイヤーは自身の身体能力とそれに係るバフデバフに準拠して、スキルやアイテムを駆使して敵を倒していくのだ。だからプレイヤー同士の戦いは何が起こるか分からないワクワクする要素がある。
ただ、レートという概念がある。対人戦の結果や進行度、クリーチャー討伐によって相対的にレーティング数値が上がってプレイヤー間の優劣が決まる。レートが2000を超えればそこそこ、2500を超えれば熟練。3000を超えれば一流と呼ばれている(ちなみにそれなりにプレイしてたが2000も超えたことはなかった)。トップランカーは4000超えくらいだ。
レートは初期レートの1500。しかしそれ以上に
……「初期スキルもないのか。この職業」
ハズレ職業だったのかガッカリしかけたが、少し考えて。
「ま、まあチュートリアルだし、やっぱりコモンだよな」
気を取りなおしてみる。正直弱気になっていた。スキルもなしで不気味な職業。そしてまだ夢か現実かもわからないこの状況。
(誰かがいたずらで寝てる俺にVRMMO装置ギアをつけたとか)そんなことを考えたりしていた。
そして、最初に出たあの文面。《汝の価値を示せ》とは?
(考えても仕方がない、か)
人狼の扉を選ぶ直前。クリーチャー選択のない壁から、物音がした。
壁に扉が浮き上がり、開く。そしてその先から人が続々と現れたのだ。
〈自動的にパーティに追加されました→「堂前ソウジ」パーティ〉
「あー……しんどかったな、今回も」
「アナタが毎回敵に突っ込むからですよ、やれやれ」リーダー格らしい二人と、後ろに四人。
「あ?この部屋で一人追加か?また役立たずじゃねぇだろうな」
リーダー格の一人、戦士姿の男がこちらに気付いた。
(このシステムは、無限廻廊のランダム・パーティ・ダンジョンか!)俺はそのことに気付いた。これは突入時に決めたプレイヤーだけで淡々と無限ダンジョンを攻略していくのではなく、先に進むたびにランダムなプレイヤーとパーティを組んでいくシステムで、他プレイやーとの交流を盛んにするオンライン性をうまく利用したモードだ。
(チュートリアルで、誰かの無限ダンジョンに組み込まれたのか!?)
初めて聞くことだったが、そんなこともあるのかもしれない。むしろ仲間がいてくれたほうが有り難い。そう俺は思ったのだ。
「ちっ失せろ、ガキは戦力外なんだよ」
「デッドイーター?聞いたことないですね。なにかデバフを撒き散らす職業じゃないでしょうね?」
(なんだよこいつら!!)
なぜか近づいたところで取り付く島もない。俺は隅っこで彼らが扉を選択するのを待つことにした。どうやら今回の無限ダンジョンのパーティリーダーは戦士の男に設定されていたらしいから、俺が自分で扉を選択することができなかった。
(じゃあなんでランダムなんかやってんだよ…そりゃ俺もコミュ障かもしんないしいま始まったばっかで弱いけどさ…)
そんな愚痴を頭の中で吐き出していると、彼らは続々と立ち上がった。
「よし、全員休憩したか?えーっと今回の選択肢はコモンとアンコモン二つだよな…」
「まあ、コモンにしとくか」
彼らの後ろにそっとついていく。
(なんだ、全然自信ないじゃないか)
俺はそんな風に内心毒づいたが、ホッとした。なんとかチュートリアルはクリアできそうだ。
「お前ら、足を引っ張んじゃねぇぞ。新入りは、どっかテキトーに逃げとけ」
「……」
(くそっ感じ悪ぃ!)
戦士の男が人狼の扉に触れ、カタカタと扉が開き道が現れる。
「いくぜぇ」
誰もいなくなった待機部屋。扉に表示されていた内容がバチバチと音をたてて変わっていく。
【人狼】コモン⇒【人狼の偉丈夫】レア
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