第2話 恋の願いは叶わない

―恋を叶えたつもりが、まさかのクレーム対応地獄。


「恋がしたいです。彼と両想いになれますように」

願いリストに、そんな王道ラブなリクエストが届いた。


俺は、今週から雲の上で“神様バイト”をしている。

仕事内容は、ひとりにつき願いをひとつだけ叶えること。

でも、前任者の話では、恋の願いはややこしいらしい。


「ま、簡単っしょ」

軽くタップして「願いを承認」。

彼は突然彼女を好きになり、告白、成功。ハッピーエンド。


……の、予定だった。


数日後、システム宛に怒涛のクレームが届いた。


送信者:願い主(♀)

件名:この恋、なんか違います。


本文:

彼が急に優しくなったのはいいんです。

でも、私がちょっとLINEを返さないだけで50件くらい着信がきたり、

仕事終わりに毎日家の前にいるの、正直怖いです。


これ、愛じゃなくて執着ですよね?

返金ってできますか?


恋の願いって、叶えて終わりじゃないんだよな……。

感情も、温度差も、生活習慣も、考え方も、何もかもが噛み合わなければ、

それはただの面倒ごとになる。


その後も、恋愛願いに関するトラブルが続いた。


「好きな人が彼女持ちだった」

「付き合えたけど束縛がきつい」

「飽きられました」

「恋より仕事が大事だと気づきました」

「そもそも好みじゃなかった」


結論:恋の願いは叶えてもクレームになる。


俺は勝手に恋愛願いを全スルーするようにした。

代わりに「おだやかな心で過ごせますように」をこっそりインストール。


もちろん、次の日バイト契約は解除された。


「君、やっぱり向いてないね」

例の白髪の男は、笑って言った。


だけど地上に戻った俺は、ふと空を見上げる。


まだ誰も知らないけど、

「恋が叶うこと」より、「恋に振り回されない心」こそが本当の願いかもしれない。

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