【PV55達成】『神様のバイト:願いごと、ひとつだけ。』

Algo Lighter アルゴライター

第1話 普通が一番

―願いをひとつだけ叶えられるとしたら、君は何を選ぶ?


「君、神様やってみない?」


ファミレスの帰り道、急に声をかけてきた白髪の男は、真顔だった。

冴えないフリーターの俺に向かって、「バイト感覚でいいから」と言いながら、契約書を差し出した。


書いてあるのは見たことのない文字ばかり。でも、時給が破格だったので、ろくに読まずにサインした。


次の瞬間、俺は雲の上に立っていた。


「君の仕事はね、人間の願いをひとつだけ叶えること。たったひとつだけね」


画面にリクエストが次々と届く。


「宝くじを当てたい」「若返りたい」「別れた恋人を取り戻したい」

中には、「あいつを不幸にしたい」なんて物騒なものまである。


最初はランダムに叶えていた。けど、だんだん嫌気がさしてきた。


人間の願いって、どれもキリがないんだ。

叶えれば喜ぶ。でも、次の日にはまた新しい不満を抱えてる。


だから俺は決めた。全員の願いをこれに統一する。


「今日も普通に過ごせますように」


特別じゃない。劇的でもない。

でも、それはとても静かで、あたたかい奇跡だった。


……翌日、契約は一方的に解除された。


「君、向いてないね」と白髪の男は笑った。

その顔には、少しだけ寂しそうな色があった気がする。


地上に戻った俺は、街を歩きながら気づいた。

誰もが、普通に働いて、笑って、怒って、眠っている。


たぶん、それこそが、

神様だって簡単には与えられない“最高の一日”なのかもしれない。

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