第18話 繋がっていく
細々と生きていたファイ村には常にギリギリで生活をしていて産業的な物は存在していない。タクは周囲の山々にゴーレムによる坑道を整備し、外界における地下鉱物類の産出拠点を作ることにした。
すっかりタクに惚れ込んだ治療を終えたケッタとハッタに物資の管理をまかせることにして、タク達は長老からの情報で次の村への繋がりを作っていく。
魔物蔓延る外界ではほそぼそと人間の集落同士の繋がりが存在していた。
それらをつなぎ合わせて強固な繋がりとしていけば、人間の生存権が広がっていく。タク達の歩んだあとには網の目のように人間の血流が回復していく。
「とりあえず森などのでの採取する場合は魔物と戦えるように武器や防具も置いておきます。危なかったら街道のそばまで戻れば防衛設備が助けてくれますから」
「重ね重ね、本当にありがとうございます!!」
「タク様、エリシュ様、この村は私達がお守りします!」
「うん、頑張ってねー。何かあれば連絡してね」
「はい!!」
アナスタシアとも連絡を取り合い、国の方から新たな経済圏に組み込むようにお願いしておくことも忘れない。国家規模の発展させていくのもタクにとってはゲームのようなものだ。
そして、あの美しいファイ村は美しい景観によって観光地としての価値も見出されていくことになるのはもう少し先の話。
「まずは次の集落を見つけてそれから街道整備って流れかな」
「マスター、近くに魔素溜まりとダンジョンがあります」
「ああ、じゃあ先に潰していこうか」
「マスター、ある程度魔石を得たら少し手勢を増やしましょうか」
「OKそこらへんは任せるよ」
「ありがとうございます」
ダンジョン探索によって手に入った魔石、その一部を利用しエリシュは精霊を召喚し自らの部下を増やしていく。5人娘ほど上位の精霊ではなく能力はそこそこ、タクの作る武具によってそのあたりはカバーしていく方針だ。
タクやエリシュがダンジョンなどにいるときの情報の取次などをしてもらったり、単純な周囲の散策などを担当してもらう。政令としての格はそこまで高くないが、タクの用意する肉体、ゴーレムの力と身につける装備によってよほどの魔物でもなければ圧倒的な力を示すことが出来る。
こうしてタク達の散策能力は飛躍的に向上し、ダンジョンなどを発見しつつ隠し村を改変しながら人間の生存領域を拡張させていく。半島型の土地に押し込まれていた人間の領域が大陸に広がり始め、魔物の領域に深く入り込んできたことで、人間と異なる新たな人種との再会も果たすことになる。
「エルフですか……」
部下からの報告で、人間と同じように魔物に追いやられた種族の領土にまで隣接したことを知ったエリシュはタクに提案する。
「エルフたちは精霊との交信能力が高く我々のほうが話が通じると思います。
長い年月を経て人間たちへの感情が不明なので、マスターは安全を我々が確認してからいらしていただきたい」
「わかった。エリシュがそういうならそうしよう。ここらへんで防壁と砦でも作って待ってるよ」
「よろしくお願いします」
第二の壁の誕生である。
半島状の地形の根本を横断するその壁は人間生存権に入ろうとする魔物たちへの警告のように巨大な作りになった。
タクにその意図はないが、ただでかくてかっこいいの作ったろの精神しか無いが、積年の人間の魔物への反逆の決意を体現した壁と勝手に後世の歴史家から評価されることになる。海上第二ラインも構築されていくために、タクはウッキウキで作業を続け、すっかりエルフのことを忘れるくらい没頭する。
エリシュがエルフと話をつけてタクに連絡を下のは2週間後だった。
エリシュはエルフの信頼を得るために多くの頼み事やダンジョン制覇などをしてようやく人間と話してくれることになった。エルフは長寿であり過去人間がエルフを見捨てて逃げていった恨みをまだ持っている人が長老勢に多く残っていたために交渉が難航してしまった。
そして、その頃タクはエルフのことなんてすっかり忘れて海上要塞と海底素材採掘施設の建築に没頭しているところだった。
「ああ、そうだった……忘れてた」
「……というわけでエルフの里までおいでください」
「わかった、あとちょっとだけ仕上げて任せられるようになったら向かうよ」
「そう、ですか」
少し嫌な予感がしたがエリシュは承諾したが、タクがエルフの里に来たのは5日後だった。
「おお、自然の木を活かした作りだなぁ……」
里についた第一声はエルフの家の作りに対する感想だった。エリシュはめげたりしない。もう、理解しているからだ。
「タク様お疲れ様でした。私がいないあいだに問題はありませんでしたか?」
「海上で超巨大種? に遭遇して倒す設備を作るのに結構大変だったよ」
「それは、思ったより大問題ですね」
「おかげでとんでもない魔石が手に入ったから何作るかすっげー悩んでるんだよねぇ」
「なんにせよご無事で何よりでした。それでは、参りましょうか?」
「思ったんだけどさ、俺で良いのかな? アナのほうが良いんじゃない?」
「アナスタシア様は2日前に到着しております。人間との協力は取り付けているのですが、あとはエルフ領の開拓などのお話をマスターと話さないと行けないのです」
「ああ、なるほど! さすがエリシュ仕事が早いね」
「ありがとうございます」
エリシュの苦労、主知らず。しかしそれでいい、主は楽しそうにものづくりをしてくれていれば良い。エリシュはそう決めている。
「貴方が人間の国を豊かにした……」
「タクと言います」
エルフの最長老は女性だった。エルフの中でも高位なハイエルフで悠久の時を生きてきたがその姿は初老、いや、人間の基準に当てはめれば女盛りの魅力的な美しさが溢れている。エルフという種族は老若男女美形揃いだ。少し線は細いが、皆整った顔にスラリと伸びた手足と人間は嫉妬に狂ってしまうだろう。
「我々も長年魔物による攻撃に苦しみ続けています。
ありがたいことに森は我々を見捨てず、精霊様も味方してくれており。
その御蔭で今の今まで生きながらえてきました。
しかし、近年ダンジョンも増え、魔人までも前線に見えるようになり、戦いは悪化の一途を見せていました。
そんな中、エリシュ様がいらっしゃり、すでに多くの問題を解決してくださりました。そんなエリシュ様の主であるというタク様は何をなさるつもりか?」
優しい言葉とは裏腹に人間であるタクが高位の精霊であるエリシュを従えていることへの不満が言葉の節々に棘となって混じっている。
「お、私はものづくりしかできません。作るもので魔物を退けて、皆が楽しく生きられるようにできればいいなと思っています」
しかし、そういう細かな感情の機微をタクにぶつけても意味がない。そのままの言葉で受取り質問に普通に答えるだけだ。
「そう、ですか。
しかし、我々にとって森は信仰の対象で神のような存在、木々への干渉は最小限にしていただきたい。土壌も木々の大切な家のようなもの、それらに害することは許可できません」
「ああ、すごい素敵な建築ですよね、木々の隙間に上手に配置されて森と一体化してアレは良いものです。ああいうコンセプトであえて深い森を活かした状態を生かす形の街作り、いや、この場合は国造りかな? をしていけたらいいなぁ、それで魔物に対する施設も森と一体化させたような作りにするならむしろ木の形を取らせるのも良いと思うし、あー、道はどうするかなぁ、壁も木々をイメージして作れば一体感出せるだろうし、森にある新種の植物からもいろんな物作れるでしょうねぇ、それにエルフ独特の建築やものづくりもぜひ見学したいなぁ……ああ、それからやっぱりこの部屋もそうですが木造の細工が緻密で本当に造形も素晴らしく……」
その後エリシュが止めるまでタクは語り続け、結果として女王の許可を得ることが出来るのであった。
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