第8話 お昼休み会議

 翌日の昼休みの時間。俺は予めまなみにスマホでメッセージを送り、屋上前の踊り場で待ち合わせをした。


 この学校の屋上は生徒の出入りは禁止されているため、この場所に人が立ち寄る事は少ない。


『へぇ、こんな場所があったんだね。校内でコッソリ会うにはちょうどいいんじゃない?』


「あのな…あかりがいつも以上にベタベタとしてきたんだ。昼休みにも寄って来る所だったから、すぐに俺は教室を出て回り道をしながらなんとか撒いてきたんだよ…」


『それはお疲れ様。実は昨日お姉ちゃんが帰って来たのが夜遅かったから、お母さんに怒られてたの。それなのに反省してるっていうより、別な事を考えてるみたいで…なんだか嬉しそうにしてた。何かもしかして今日の相談と関係あるかな?』


「あ、ああ…実はな–––」


 昨日まなみと別れた後、あかりが家に来た事。あかりから迫られてなす術もなく、その場の空気に流されて再び身体を重ねてしまった事を伝える。


『え、えっと…なんでそんなに急展開なの?一昨日初めてシたばかりなのに、昨日もなんて…それもお姉ちゃんから?』


「俺だってよく分からないんだ…」


『和兄ぃからまた“相談がしたい”ってメッセージを受け取った時には何かあったのかな?って思ったけどさ…聞いたら思わず耳を疑っちゃったよ。お姉ちゃんはどういう心境の変化なんだろう…』


「昨日の事で一つ分かってるのは、俺に会いに来る前にあかりは先輩とデートって事で2人で会ってたんだ」


『その時に何かあったかもしれないって事?』


「状況的に考えるとその可能性が高そうだな。具体的に何があったかわからんが…」


『そうだね。でも和兄ぃ、今の状況が良くないって分かってても、昨日みたいにお姉ちゃんから誘われたら断らない…いや断れないないんでしょ?』


「うぐっ…否定したいが正直自信は無い…」


『はぁ…そしたら一度お姉ちゃんとしっかり向き合って話した方がいいよ?じゃないと距離を空けるどころか、このままなぁなぁで関係が続いて行っちゃう』


「そうだな…ただ話してる最中に、またあかりから手を出されたら…」


『全く、仕方ないなぁ…お姉ちゃんと話す時、私も一緒に居てあげる。流石に妹が居る前でも発情して和兄ぃに手を出そうとするなら、先に相澤家の家族会議にかけなきゃいけなくなっちゃうよ』


「すまん、恩に着るよ」


『いいよ。お姉ちゃんのためでもあるけど、私だって好きな人の–––和兄ぃの力になりたいし』


「まなみ…お前」


『あーあ、なんで和兄ぃとお姉ちゃんの生々しい話を連日聞かされてるんだか。こっちの身にもなって欲しいよね?』


「悪い…その内に埋め合わせはするからさ」


『うん、いっぱい言う事聞いてもらうから覚悟してて!それじゃあ、お姉ちゃんと話すなら早い方がいいよね?』


「ああ、あかりの都合がつけば今日の放課後にでも話がしたい」


『私はOKだよ。お姉ちゃんも大丈夫だとは思うけど…私から連絡しておくね』


「面倒かけるがよろしくな」


『分かったよ…場所は私の部屋でもいいかな?よし、お姉ちゃんに送信、と。和兄ぃも私と一緒に帰って、部屋でお姉ちゃんを待とっか』


 まなみの存在がとても頼もしく感じる。今回色々と迷惑を掛けた分、あかりとの一件が落ち着いたらちゃんと労ってやろう。


 それとぶつけられた想いにも、真剣に考えた上で答えを返してやらないとな–––。

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