第5話 お隣のお兄さん(side:まなみ)
私は今日–––久しぶりに和兄ぃと会い、あかりお姉ちゃんとの事について相談を受けている。
「自分でも今後どうしていいか分からなくてな…忌憚ない感想と意見を聞かせて欲しいんだ」
一通りの話を聞き終わった後、私は注文したフルーツパフェを口に運ぶ。
『うーんっ…美味しい–––!』
「あの…パフェの感想じゃなくて…」
『もう、分かってるよ!話は聞いたけど脳が理解するのにちょっと時間かかっちゃって、つい甘いものを摂取したくなったんだよ?』
「そんなにかよ…」
『とりあえず、和兄ぃもお姉ちゃんも…バカじゃないの?』
「ぐっ…言い返せない」
『一旦お姉ちゃんと距離を取ろうとしたのは正しいと思うよ?和兄ぃが言ってた事も勿論だけど、2人の関係って共依存みたいなものじゃない?』
「周りから見ればそう見えるもんなのか…?」
『私が2人の近くに居たから分かるだけだと思うけどね。お姉ちゃんは完全に和兄ぃに甘えて依存しちゃってるし、和兄ぃは…依存ってほどじゃないだろうけど、お姉ちゃんに頼られたり甘えられたりして嬉しかったんでしょ?』
「よく分かるな…」
『だから突き放そうとしたのはいいけど–––お姉ちゃんにヤらせろ、って言ってお姉ちゃんは和兄ぃと距離を取るぐらいなら身体の関係を結んだ、と。全く…どこのエロ漫画の世界よ…』
「他に言葉が浮かばなかったんだよ…」
『セリフはともかく、そのまま流されちゃった和兄ぃも最悪だからね?』
「…面目ない」
『でも、さ?分かるよ。ずっと好きだったお姉ちゃんと、望んだ形じゃなかったろうけど夢にまで見た事が叶ったんでしょ?そんなの舞い上がっちゃっても仕方ないじゃない…』
「まなみ…」
『…私もそんな風に思われて見たかったよ』
「え?」
『う、ううん…なんでもない!ともかくまずは和兄ぃがお姉ちゃんとどうしたいかって事!今の関係のまま、幼馴染のセフレみたいな状態で続くのが1番最悪だけど…』
「それは俺も嫌だよ…確かに一時とはいえ、あかりと繋がる事が出来たのは嬉しかった。でもまなみが言うようにあかりがこのまま俺に甘えたままじゃダメなんだっていうのは分かってるんだ」
『そうだね。でも和兄ぃが勢いで口走った事をお姉ちゃんが受け入れてしまったから…すぐに反故にするわけにはいかないと』
「ああ、だから恥を忍んでまなみに相談したんだ」
『ふぅ–––実の姉がここまで恋愛関係について非常識だったなんてね…あれ、でも?』
「どうしたんだ?」
昨日夕飯を食べてる時のお姉ちゃんはどこか心ここに在らず、って感じだった。ショックな事があったというよりは、どこか嬉しそうな感じで。
もしかしてお姉ちゃん、和兄ぃとエッチした事で初めて異性として意識するようになった?
いや、でも憶測だしこれは和兄ぃには言わないでおこう…。
『ごめん、ちょっと考え事してただけ。具体的な対策はちょっとじっくり考えさせて?』
「ああ、勿論だ。悪いな、時間取らせちまって。お礼にここの代金ぐらいは払わせてくれ」
『えっ、いいの?ありがとう!もうちょっと何か頼んでおけば良かったな…』
そして私たちは同じ方向にある家に向かって歩き始める。
「そういやまなみは彼氏とか作らないのか?」
『和兄ぃ…こう見えて私結構モテるんだよ?』
「あかりから聞いてたけど、中学の頃結構告られてたみたいだな?」
『そうそう!でもなんか誰とも付き合おうとは思えなくてさ』
「ふーん、まなみのお眼鏡にかなわなかったって事か」
『あのね…私初恋の人が忘れられないみたいなの』
「へぇ…まなみにそんなやつが居たんだな」
『うん!その人はお隣の家のお兄さんで口は悪いけど凄く優しくって、アイスが食べたくて泣いてた私に買ってくれる優しいお兄ちゃんだったの』
「は…?それって…」
『今日久しぶりに話したけど、昔と全然変わってなかったよ!ね?私の初恋のお兄さん』
和兄ぃはいきなりの事にメチャクチャ驚いてるみたい。つい勢いに任せて言っちゃったけど、後悔はしてない。
小さい頃にお姉ちゃんにだったら…と思って和兄ぃから距離を取ったのに。こんな拗れた事になってるなんて、報われなさ過ぎるよ。
だから私はもう我慢しないって決めたんだ。和兄ぃの相談には乗るけど、あくまでも和兄ぃのため。今まで一緒に過ごせなかった時間をこれから取り戻していくんだから–––。
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